hiyamizu's blog

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小山登美夫『現代アートビジネス』を読む

2023年08月15日 | 読書2

 

小山登美夫著『現代アートビジネス』(アスキー新書061、2008年4月10日アスキー・メディアワークス発行)を読んだ。

 

表紙裏にはこうある。

アンディ・ウォーホルの作品に80億円もの高値が付くのはなぜか?世界の富が現代アートに集まる今、「作品の価値」に基づいた健全なマーケットこそが、芸術文化の底力となる―。種も仕掛けもあるアートビジネスの世界を、奈良美智、村上隆を世に出したギャラリストがすべて教えます。

 

同じ著者の『“お金”から見る現代アート』と重なる部分が多い後半は除き、前半のみご紹介。

 

第1章 誰も見たことのないものに価値を見出す ギャラリストの仕事

著者の小山さんは中学3年生のとき、ジャスパー・ジョーンズの絵にショックを受けた。「何がなんだか、まったくわけがわからない」ものだったから。「わからないもの」に夢中になった。自転車でただで作品が見られる画廊巡りをする変な中学生は、東京藝大卒業後、銀座のクラブでバーテンのアルバイトをしながら、昼は現代アートの画廊で働くようになる。そして、やがて日本にも現代アートの市場を創ろうと自ら画廊を始めた。

 

しかし、若手アーティストの作品はさっぱり売れず、経営は逼迫する。小山さんは日本を離れ、作品をトランクに詰め、たった一人でアメリカに渡った。宿泊したホテルの部屋を朝になると整えて、ベッドの上や壁に作品を掛けてお客さんを迎えるという若いギャラリストが集まるアート・フェアーだった。
そこでは、ほとんどの客には見慣れないはずの、奈良美智、杉戸洋、村上隆の作品が次々と売れていったのだ。村上さんのアシスタントだったMr.がレシートの裏に書いたポップな女の子の絵を一点50ドルの値を付けて冷蔵庫に貼っておいたら、次々に売れた。ふつうの人たちが、見知らぬアジアのアーティストの作品をどんどん買っていく。

 

第2章 村上さんと奈良さん アーティストはどこにいる?

村上隆は芸大の日本画科の博士課程で10年以上在学し、一歳下の著者は芸術学科に6年在学した。当時から村上さんは作った作品をどのようにプレゼンするか、どのようにブランディングするかを考えていた。今の時代や社会構造のコミットし、まさに「自分たちの時代のアート」だった。
村上さんは、当時から自分が手を動かしてつくることより、コンセプトを第一に考え、多くの人の頭脳や技術を集結させた結果を作品にしていく作風だった。

 

2003年、村上さんのフィギュア作品≪Miss ko2≫が6800万円で落札された。

この作品はオタクをテーマとして扱っていますが、オタク彫刻ではありません。オタクという日本固有の文化風土で生まれて広がりを見せている「欲望現象」を、徹底的に調査・分析して作品のかたちで表現した、きわめてコンセプチュアルな試みなのです。

 

アニメやオタク、マンガといった、自分たちが日常の生活空間で親しんでいた新しい文化が芸術にまで昇華されて、なんらかの人間の普遍的な部分に到達できる、そして世界で通用するものになる……。

 

以下、略

第3章 アートの価値はどう決まる 投資を考えている人へ

第4章 マーケットを動かすのはコレクター アートを買ってみる

第5章 日本をアート大国へ アートビジネスの展望

あとがき

 

 

小山登美夫(こやま・とみお)

小山登美夫ギャラリー株式会社代表取締役。1963年、東京生まれ。東京藝術大学芸術学科卒業。西村画廊、白石コンテンポラリーアート勤務を経て、1996年に小山登美夫ギャラリーを開廊。2005年11月に江東区清澄白河にギャラリーを移転。2012年、シンガポールに支店をオープン。2008年より明治大学国際日本学部特任准教授

著書、本書『現代アートビジネス』(アスキー新書)、『見た、訊いた、買った古美術』(新潮社)、『小山登美夫の何もしないプロデュース術』(東洋経済新報社)、『“お金”から見る現代アート』(講談社+α文庫)。

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

お金の余っている人が好きなものに自分の金を何億円出そうが、カラスの勝手だ。しかし、村上さんの下品なフィギャーが16億円、奈良さんの漫画っぽい絵が2億円と言われても、そのお金で買えるものと等価とは、とても納得できない。金持ちだけが盛り上がっている、一種のバブルとしか思えない。

個人的趣味で言えば、具象画でなくとも、例えば抽象表現主義のマーク・ロスコは大好きなのだが、村上さんのフィギュアは趣味でない。

 

したがって、いくら現代アートビジネスの構造を説明されても、その結果としての金額に納得できない。現実ではあるのだが。

 

まあ、裸一貫で現代アート市場を日本に作ろうという小山さんの心意気には感心する。しかし、日本人アーティストの海外への売込みには成功したが、良いことか、悪いことなのかわからないが、日本での市場は形成されているとは思えない。

 

コメント
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