hiyamizu's blog

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一穂ミチ『光のとこにいてね』を読む

2023年08月05日 | 読書2

 

一穂ミチ著『光のとこにいてね』(2022年11月文藝春秋第一刷発行)を読んだ。

 

文藝春秋BOOKS

一穂ミチ、最新長篇にして文句なしの最高傑作

第168回直木賞候補作&2023年本屋大賞第3位

(略:誇大宣伝)

……

――ほんの数回会った彼女が、人生の全部だった――

古びた団地の片隅で、彼女と出会った。彼女と私は、なにもかもが違った。着るものも食べるものも住む世界も。でもなぜか、彼女が笑うと、私も笑顔になれた。彼女が泣くと、私も悲しくなった。
彼女に惹かれたその日から、残酷な現実も平気だと思えた。ずっと一緒にはいられないと分かっていながら、一瞬の幸せが、永遠となることを祈った。
どうして彼女しかダメなんだろう。どうして彼女とじゃないと、私は幸せじゃないんだろう……。

――二人が出会った、たった一つの運命
  切なくも美しい、四半世紀の物語――

 

「本の話」の「直木賞候補インタビュー「女性同士の運命的な愛の物語」」より引用

……二人の女性の四半世紀にわたる愛の物語である。BL(ボーイズラブ)小説でも熱い支持を受けてきた一穂さんだが、女性がメインの話を書きたいという思いがあった。

「今作は、シスターフッド小説ではありません。彼女たちは、同じ方向を向いているわけではなくて、お互いだけを見ている。非常に閉じた関係の二人なんです。ともに乗り越える壁も、手を取り合う戦いもないんですね」

 母親にこっそり連れ出された先の団地で、果遠(かのん)という少女に出会った小学二年生の結珠(ゆず)。同じ年の二人は、結珠の母親が「ボランティア」と称して秘密の行動を取るのを待つ間に、団地で遊ぶ仲となる。

 裕福な家庭だが、家族に顧みられることのない結珠と、母子家庭で、隣人女性の飼うインコだけが慰めの果遠。

……

 互いを必要とし合っていたのに、自らの意思と反して、突然の別れを迎えた二人は、進学先の高校で再会を果たす。お互いの成長と感情の変化に戸惑いつつも、新しい関係を築こうとするが、ふたたび引き離されてしまう。

 やがて、小学校教師になった結珠は、体調を崩して休職してしまう。夫と移住した先で、またしても運命的に出会ったのは、結婚し、夫と、娘と三人で暮らす果遠だった。

 運命に翻弄されてきた結珠と果遠の関係。ふたりは、真に望む人生をつかみ取ることができるのか。

 

第一章
5歳の小瀧結珠(ゆず)と校倉果遠(あぜくら・かのん)の7歳で出会った。果遠が「そこの、光のとこにいてね」と言ったのに、結珠は母親に引っ張られてその場を離れ、二人は離れ離れになる。

 

第二章
結珠が通うお嬢様学校の高校に、外部からの新入生・果遠がいた。美人だった。結珠は忘れていたことにしていた記憶が、突然、栓を抜かれたように勢いよく噴き出して、めまいがする。果遠は結珠が着ていた制服から学校を割り出していたのだ。

 

第三章
29歳の二人は本州最南端近くで、互いにパートナーを持った状態で再会する。

 

「すべてが光の中にいた」と終わる。

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

子供、高校生、結婚後と時を経て再会を繰り返す、奥深い絆で結ばれた二人の女性の物語。

 

二人の女性の成長譚としては面白かったが、二人の女性の間の複雑な心理描写には、おじいさんは立ち入りたくない。

著者は「シスターフッド小説ではありません」と言うが、ガサツな私にはそうとしか思えない。

 

 

 

一穂ミチの略歴と既読本リスト

 

「本の話」に川上弘美との対談があり、執筆の背景が語られる。写真の一穂ミチは斜め後ろからの顔だけ。いまだに会社員と兼業で、職場には小説を書いていることは知られていないためなのだろう。

 

 

弁(わきま)えて

 

 

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