hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

一穂ミチ『うたかたモザイク』を読む

2023年05月15日 | 読書2

 

一穂ミチ著『うたかたモザイク』(2023年3月27日講談社発行)を読んだ。

 

講談社の内容紹介

『スモールワールズ』『光のとこにいてね』で話題の著者、一穂ミチのきらめきの欠片を集めた作品集。病める時も健やかなる時もーー。あなたの気持ちにぴったり寄り添ってくれる13の物語。甘くてスパイシーで苦くてしょっぱい、味わい深いあなただけの人生がここにある。書き下ろしショートストーリー「透子」も収録。

 

253頁で13編だから、平均19頁の短編というよりショートショートに近い。

 

「人魚」

――あのさ、今まで黙ってたけど、人魚なんだよね。
僕の恋人は、人魚らしい。少なくとも本人はそう主張する。……

と始まる。

(熱海の「秘宝館」が出てくる。私は新婚の時、両親と4人で熱海に行き、時間が余って、わけもわからずに秘宝館に入ってしまった。「あっ、これか。まずい」と思い、足早に通り抜けるのに、親父はじっと足を止めていて、困った。誰もが無言だった。)

 

「Melting Point」

人気のショコラティエ・千里の作るチョコレートをアレルギーで食べてあげられない恋人の実苑。二人の濃厚なベッドシーン。

 

「Droppin‘ Drops」

バイト的に雑誌モデルをしている高校性の飴村杏は、同級生で4人組で芸能活動しているそれほど冴えない藤井糸保になぜか夢中になった。糸保のブログに熱心に「キャンディ」の名でこっそりコメントを続けていた。

 

「永遠のアイ」

“なりすます”新種のウィルスが出回っていて、婚約者からのメッセージが届いた。「ごめん、残業して即寝だったから返信できなかった、おはよう‼」文章の感じ、無意味なエクスクラメーションマーク二つなど彼の癖そのままだった。しかし、本人ではない。昨年死んでしまったから。Web上の本人のデータ、あらゆる痕跡を収集して本人らしさを習得して、勝手にSNSを更新したり、メッセージを送ったりするのだそうだ。私はしばらく亡くなった彼とやりとりし、架空のデートもした。

 

「レモンの目」

ときどき現れる黒猫を可愛がっていた。彼氏はセキュリティ的に問題だと大反対し、結局彼とは別れることになった。その後、耳に結んだ紙に幼い字で「こんばんは、ミミに……」とメッセージがあった。そして、変な手紙になった。

 

「ごしょうばん」 ごしょうばん(ご相伴)という妖怪の話。

「ツーバイツー」 双子の兄弟と夫婦になった似た女性二人の、夫婦交換のエロ話。

「Still love me?」「BL」 BL(ボーイズラブ、男同士の恋愛)

「玉ねぎちゃん」「sofa&」 略

「神さまはそない優しない」 死んで猫になり、偶然のことに嫁に拾われた男のおもろく、びっくりし、泣ける話。

「透子」 ちょっととろい女の子のせつない話。

 

 

初出:『光のとこにいてね』のヒットで、2011年から2022年に各種メディアに掲載されたショートストーリーに書下ろしの一篇(透子)を加え、あわてて1冊として出版したと邪推した。

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

10年間の間に書いた(書き捨てた)超短編を集めたものだから、当然テーマはバラバラ。しかし、多数のBL小説執筆で鍛えた技巧が光る。

 

多彩なテーマなので読者の好みによって面白くないものも混じるだろうが、著者のストーリーテイラーぶり、描写力には感心するだろう。

 

「永遠のアイ」、「レモンの目」は話の仕組みが新鮮で面白い。「神さまはそない優しない」、「透子」はしみじみとして良い話。

 

 

一穂ミチ(いちほ・みち)の略歴と既読本リスト

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする