hiyamizu's blog

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伊坂幸太郎『PK』を読む

2023年05月17日 | 読書2

 

伊坂幸太郎著『PK』(講談社文庫い111-5、2014年11月14日講談社発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

人は時折、勇気を試される。落下する子供を、間一髪で抱きとめた男。その姿に鼓舞された少年は、年月を経て、今度は自分が試される場面に立つ。勇気と臆病が連鎖し、絡み合って歴史は作られ、小さな決断がドミノを倒すきっかけをつくる。三つの物語を繋ぐものは何か。読み解いた先に、ある世界が浮かび上がる。

 

「PK」「超人」「密使」の三つの中編から成るが、最後まで読むと、現代においてヒーローは果たして可能かというテーマを持つ一つの長編になっている。

 

PKは、サッカーのペナルティー・キックという意味であるが、手を触れずに精神の力でものを動かす超能力psychokinesis(サイコキネシス、念力)との意味もある。

 

 

「PK」

ワールドカップのアジア予選リーグ最終戦。不調だった小津は、予選敗退をはねのけるように奇跡的なドリブルをしてゴール前へ突進したが、倒された。PK(ペナルティー・キック)だ。(2001年)

 

父親(作家)はゲームを止めない幼稚園児、TVを見続ける兄に対し、次郎君の恐怖体験話でっちあげて、しつけをした。

 

57歳で大臣になった男は、幹事長から嘘をつくように強要、脅された。その後、彼は「子供の頃、父は次郎君の恐怖話をしてしつけをした」と秘書官に語った。さらに10年前、小津がなぜPKを決めることができたのか調査を命じた結果について尋ねる。(2011年)

 

作家(三島+)が出版社へ呼び出された。知らない男がいて、膨大な書き込みがなされた原稿を見せて、直すことを強く求められた。作家は迷う。(1984年?)

 

女が男に語る。「最近、噂の超能力者の話、知ってる?」「どこかで誰かを殺す人。でね、その犯人が殺人を犯すのを、事前に予知しちゃう人がいるんだって」「そして、殺人が起きる前に、その殺人者を殺しちゃうの」。

試合前、小津選手は、一人息子が誘拐されて、点を取れと命じられていた。その結果、空回りしていたとの説もある。

 

こんな風に、A,B,C,Dと時間を飛び越えて切れ切れに話は進む。しかも、最後の「密使」で過去の出来事を変えるプロジェクトが行われるので、話は複雑になる。読み返しが必要な小説なのだ。

 

 

本書は2012年3月講談社より単行本として刊行。

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

話は切れ目なく面白いし、登場人物は興味深く、会話もひねりが効いているし、伊坂節が冴えているのだが、話が複雑すぎる。

 

時間を飛び越えた話が切れ切れに進み、最後の「密使」になると、過去の出来事を変えるプロジェクトが行われるので、話は複雑怪奇。読み返しながら、時代を確認しながら再読する人はどのくらいいるのだろうか。

 

 

伊坂幸太郎の履歴&既読本リスト

 

 

 

コメント
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