hiyamizu's blog

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堂場瞬一『鷹の系譜』を読む

2022年08月23日 | 読書2

 

堂場瞬一著『鷹の系譜』(2022年6月10日講談社発行)を読んだ。

 

講談社による内容紹介

警察小説の旗手による大河シリーズ「日本の警察」平成編。

「公安は常に同じ相手の仕事だ。だが捜査一課の仕事は毎回、違う相手なんだ」
「捜査一課は目先の事件を追う。公安は、未来を見据えて仕事をしている」

捜査一課と公安一課。同じ警察でありながら相容れない二つの組織に身を置き、昭和を駆け抜けた二人の刑事。
その息子たちは、父と同じ道を歩んでいる。
昭和天皇が崩御し、60年余にわたる昭和の時代が終わりを告げた日に起きた殺人事件。高級マンションに住みポルシェを乗り回す被害者に見え隠れする、極左の過去。
バブル景気の拝金主義に浮かれる世で、思想活動は衰退の一途をたどる。その交錯点で起きた事件を、二人の刑事が追う。

刑事は地べたを這いずる仕事だ。だが、空から全体を見る鷹の目を持て。
父の道を継ぎ鷹となった息子たちの物語が、いま幕を開ける!

 

1989年、バブルのはしりであると同時に、内ゲバと共に過激派の活動がしぼみつつあった時代。昭和天皇が崩御し、昭和から平成へと移るその日、都内で30代の男の遺体が発見された。鉄パイプでめった打ちという一見、内ゲバと見られたが、公安、そして所轄は路上強盗と判断。特捜本部が立ち、捜査一課の刑事・高峰は所轄から上がってきたばかりの村田とともに捜査を開始する。一方、公安では、天皇崩御を機にしたゲリラ事件を警戒し、一課の刑事・海老沢利光は泊まり込んでいた。

 

1970年までの昭和の警察を舞台に描いた『焦土の刑事』からの3部作の主人公が捜査一課の高峰靖夫と、公安一課の海老沢六郎。今作の高峰と海老沢の父親だ。息子の高峰は海老沢に語る。(p239)

親父は、僕が警察官になる時に言ってたよ。刑事は地べたを歩き回る仕事だけれど、実際は空から全体を見る視点を持たなければいけない。鷹になれってさ。そういうノウハウを、系譜として引き継ぐべきだ……。

 

本作は「日刊ゲンダイ」2021年4月6日~10月1日号連載を加筆修正したもの。

 

 

高峰拓男:警視庁捜査一課刑事。35歳。部下は村田。管理官は小田。隣席の刑事は嶋田祥子。72歳の父・靖夫は元捜査一課刑事。妻は淑惠、妹は弁護士の佳恵

海老沢利光:公安一課の刑事。高峰と大学・警察学校の同期。

 

三澤隆司:海老沢の大学の同級生。過激派を多く弁護する弁護士。海老沢の極秘の情報源「S」。

新藤和己:3人に鉄パイプで殺害された。東総不動産開発社員。35歳。革連協の前身の革学同の元メンバー。千代田タウン開発でも働き、ポルシェを乗り回す。

前田拓也:革連協政治局のエリート。新藤と大学同期。公安一課・西村の「S」。

市村晴雄:NSソフト社員。父は市村書店の店主だったが、心筋梗塞と地上げ圧力で自殺。

神田の西野:長年革連協のトップだった謎の人物。宮永とも。最後の目撃は20年前。最近動きが見えない。

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

時代は70年代。バブルが始まり、冷酷な地上げが頻発し、過激派は追い込まれて平成への変わり目で一斉蜂起の噂が流れる。そんな時代の中で、殺人などを扱く捜査一課とは、不干渉な過激派対策などの公安一課の二人の刑事が恐る恐る協力して、鉄パイプ殺人事件に迫る。

時代と警察内部の事情は良く描けていて、興味をそそられる。

 

犯人捜査、犯行理由の追及は右往左往し、被疑者もあれやこれやでなかなか絞られず、じれったくなる。最後に至っても爽快さがないのがマイナス。

 

 

堂場瞬一の略歴と既読本リスト

 

コメント
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