hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

永井荷風『問はずがたり』を読む

2022年08月17日 | 読書2

 

永井荷風著『問はずがたり(初版)』(昭和21(1946)年扶桑書房発行)を読んだ。

 

断捨離というか、終活の一貫で棚の整理をして、この本が出て来た。

「表紙 川端龍子」とある。あの川端龍子が!

 

 

「扉 永井荷風」とある。

 

「口繪寫眞」には「昭和21年3月27日菅野にて」とある。私の覚えている永井荷風はもっともっとおじいさんなのだが。 

 

 

永井荷風(ながい・かふう)

1879(明治12)年東京市生。1959(昭和34)年79歳で没。小説家・翻訳家。1952年文化勲章受章。

代表作:『あめりか物語』『ふらんす物語』『墨東奇譚』

ウィキペディアには、主題として反骨、フランス文学、江戸情緒、遊蕩が挙げられている。

 

私が中学生の頃、新聞での知識だと思うが、永井荷風は有名な文学者で、フランス帰りのお洒落な人だが、浅草の踊子たちに囲まれ、女癖が悪く、偏屈で、全財産をカバンに入れて持ち歩く変人のえらく年寄との記憶がある。医者にかかるのを断固拒否して孤独死したのだが、亡くなったときは79歳だという。「えっ、俺、今、79歳だけど!」

 

 

奥付には、(初版)とあり、「定價 拾參圓、書留送費 貳圓」とある。多分、母が買ったものだろう。

 

中はシミが目立ち、旧字が出てくるが、読めないことはない。ところどころにフランス帰りのひけらかしが見える。長椅子に「デワン」のルビがふってあるが、フランス語 “divan” のことだろう。

 

 

最初に、「「小説不問語」(とはずがたり)は、昭和19年秋に書き始め、年の暮れに終わったが、後半を改訂、増補した」とある。

 

 

米国と戦争になって2,3年。主人公の画家・太田はほとんど仕事できないでいる。20年近く一緒にくらした辰子と、20歳になるその娘・雪江と東京・駒場で暮らしている。

 

太田が美術学校の学生だった頃、田嶋と佐藤と小石川で暮らしていた。隣りの、何人かの男の世話なっている30歳の姉・滿枝と18歳の妹・辰子と知り合った。佐藤は辰子と恋仲になり、太田は滿枝に誘われ普通ではなくなった。

5年後、太田は偶然消息を知った辰子を訪ね、強引に関係し、やがて同棲することになった。彼女が人に預けていた娘が雪江で、その後手元に引取った。

 

太田が40を超し、辰子は34歳、雪江は13歳で女学校。太田は雪江の姿、動作に刺激される一方で、女中の松子の肖像を描いてやろうと誘って……。

 

 

私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読むの?  最大は五つ星)

 

身近な女性に次々手を出す放縦さを誇るような話しぶりにはうんざり。それも戦争による絶望のせいではなくその前から変わっていないのだと言う。戦争中の生活にも節を曲げなかったという文化人の生きざまのつもりなのだろうか。

 

「(絶望、哀傷、倦怠は)二十年前日本に帰ってから此の方、世の変遷につれ、年と共に取除かれぬものとなったのだ。ぼくは其の時々の慰安を、追憶と諦念との二ッに求める道を覚え、ひたすらこれを命のかぎりと頼んだ。」

とか、何と言おうと、結局

「僕が醜悪な人頭獣軆の怪物に化する日は忽ちにして到来したのである。」

となったのだから、単に「すけべ親父」ということでしょう。

 

登場する女性はなぜか皆、放縦なのだ。この小説は私小説ではないだろうけど、田山花袋の『蒲団』とあまり変わらない。谷崎潤一郎の『痴人の愛』の方には美しさがあるのに。

 

コメント
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