hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

筧裕介『認知症の歩き方』を読む

2022年08月07日 | 読書2

 

筧裕介著『認知症の歩き方』(2021年9月21日ライツ社発行)を読んだ。

 

ライツ社による内容紹介

なかなか理解してもらえずに困っていた「認知症のある方が実際に見ている世界」が
スケッチと旅行記の形式で、すごーくわかる!

 

まるで「ご本人の頭の中を覗いているような感覚」で、認知症のことを楽しみながら学べる一冊です。

ーーー

ここは、認知症世界。
認知症とともに生きる世界では、だれもがいろいろなハプニングを体験することになります。

・乗るとだんだん記憶をなくす「ミステリーバス」
→自分のしたことを忘れてしまうのは、なぜ?

・だれもがタイムスリップしてしまう住宅街「アルキタイヒルズ」
→あてもなく街を歩き回ってしまうのは、なぜ?

・イケメンも美女も、見た目が関係ない社会「顔無し族の村」
→人の顔がわからなくなるのは、なぜ?

・熱湯、ヌルッ、冷水、ビリリ。入浴するたび変わるお湯「七変化温泉」
→大好きだったお風呂を嫌がるのは、なぜ?

・時計の針が一定のリズムでは刻まれない「トキシラズ宮殿」
→コンロの火を消し忘れてしまうのは、なぜ?

・一本道なのになかなか出口にたどり着かない「服ノ袖トンネル」
→同じ服ばかり着たがるのは、なぜ?

・ヒソヒソ話が全部聞こえて疲れてしまう「カクテルバーDANBO」
人の話を集中して聞けないのは、なぜ? etc...

あなたは認知症世界を旅する旅人。
この物語に登場するのは、架空の主人公でも、知らないだれかでもなく、
「少し先の未来のあなた」や「あなたの大切な家族」です。

認知症世界の旅、はじまり、はじまり。

 

認知症のある約100人へのインタビューし、生活の中での困り事を洗い出し、本人から見た世界がどのようにみえるのかを描いた「認知症の世界を旅行するガイドブック」だ。

 

当事者視点の欠落が認知症に関する知識やイメージの偏りを生み、本人と周囲の生きづらさにつながっている。「困っていることがあるのにうまく説明できない」という認知症当事者と、「本人に何が起きているのかわからないから、どうすればいいのかわからない」という周囲の人とのすれ違いを少しでもなくし、「認知症との付き合い方」、「周りの環境」を変えることが、本書の目的である。

 

いくつか例を列挙する。

トイレットペーパーを何度も買ってしまう理由

  • 自分で買ったことを忘れてしまう。
  • 買うことが昔からの習慣になっている。
  • 目の前に見えない物は存在しないものになってしまう。棚に入れて扉を閉めて見えなくなると、瞬時に記憶から消えて、見えない物は存在しない物になってしまう

 

「冷蔵庫の扉を閉めた途端に中身がわからなくなる」←「目に見えないものを頭の中で想像できない」

 

「トイレの便器、床のどこに座ってよいのかわからない」←「両方白いと細かい色の差異を識別できない」

 

認知症人は入浴を嫌がることが多い。原因は人それぞれで、その背景にある理由によって対応の仕方は異なる。

・温度感覚が狂っていてお湯が極度に熱く感じる

・空間認識が悪くて服の着脱が困難。

・時間認識のトラブルで入浴したばかりだと思いこむ。

 

服の脱ぎ着が難しくなる理由

・自分の身体地図がわからなくなり、手足の位置や動かし方がわからない。

・自分の手の位置、服の袖、襟などの位置といった空間を認識する能力が落ちる。

・動作の順番がわからなくなる。服を掴む。形を把握する。裾を持ち、頭を入れる……など。

 

人の話を集中して聞けなくなる理由

脳は、五感から入ってくる大量の情報の中から、注意するもの、注意しないものを選択・切替えている。例えば、かなり高度の処理だが、大きな音への注意を抑制してでも、注目すべき小さな音に注意できる(カクテルパーティー効果)。

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

認知症の人が困っている事が多く列挙してあって、なるほどとは思う。しかし、認知症の種類、病状の程度などによって実際には異なるさまざまな問題が起こるのだろう。

 

参考にはなるが、この本を読んだからと言って、認知症の人が理解できるわけではない。本人はいろいろ苦労していて、不安だろうと思いやるようになるだけだ。具体的問題に対処法がわかるわけではない。

 

認知症の人はなんでこんな当たり前で簡単なことが分からないで、できないのだろうと、つい不思議に思ってしまう。しかし、もともと人間はかなり高度なことをなにげなくあっさり処理しているのだ。

例えば、ロボットに服を自分で着るようにプログラムすることを考えると、気が遠くなる。

まず、服全体の形を把握し、袖を見つけ、手を通す穴と自分の手の距離と方向をはかり、手を袖の先まで動かすなど、ロボットにかなり高度な認識力、微細な運動能力が必要となる。

人間だって、これらの機能の何か一つでもおかしくなると、自分自身で混乱し、誤魔化して辻褄を合わせようとする。介護する息子、娘も、まさかあのしっかり者の親がと思い、なんでもない事と思い込みたい気持ちもあって、曖昧のままにしてしまう。

 

 

筧裕介(かけい・ゆうすけ)

1975年生。一橋大学社会学部卒業。東京大学大学院工学系研究科修了(工学博士)。慶應義塾大学大学院特任教授。特定非営利活動法人イシュープラスデザイン 代表

2008年ソーシャルデザインプロジェクトissue+design を設立。以降、社会課題解決のためのデザイン領域の研究、実践に取り組む。

2017年より認知症未来共創ハブの設立メンバーとして、認知症のある方が暮らしやすい社会づくりの活動に取り組む。

日本計画行政学会、学会奨励賞、グッドデザイン賞、D&AD(英)他受賞多数。

著書に『地域を変えるデザイン』、『ソーシャルデザイン実践ガイド』、『人口減少×デザイン』、『持続可能な地域のつくりかた』『認知症世界の歩き方』など。

 

 

以下、メモ

 

体内時計(24時間周期のリズム)がずれる理由

人間の脳、臓器、皮膚など細胞一つ一つにそれぞれ時計があり、互いに作用しながらリズムを刻んでいて、それを以下、(1)、(2)などにより調整される。

(1)脳の視交叉上核で、太陽の光を検知して外界との時間のずれ調整し、すべての体内時計を一斉に整える。朝の一斉リセット。

(2)身体のさまざまな感覚器官から入ってくる知覚情報で調整する。例えば、朝ごはんで「朝」と認識する。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする