hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

凪良ゆう『わたしの美しい庭』を読む

2022年08月21日 | 読書2

 

凪良ゆう著『わたしの美しい庭』(ポプラ文庫な-16-1、2021年12月5日ポプラ社発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

小学生の百音と統理はふたり暮らし。朝になると同じマンションに住む路有が遊びにきて、三人でご飯を食べる。百音と統理は血がつながっていない。その生活を“変わっている”という人もいるけれど、日々楽しく過ごしている。三人が住むマンションの屋上。そこには小さな神社があり、統理が管理をしている。地元の人からは『屋上神社』とか『縁切りさん』と気安く呼ばれていて、断ち物の神さまが祀られている。悪癖、気鬱となる悪いご縁、すべてを断ち切ってくれるといい、“いろんなもの”が心に絡んでしまった人がやってくるが――

 

6編の連作短編集。

父・統理と血が繋がっていない小学生・百音の二人暮らししているマンションの屋上の良く手入れされた庭園の奥に「縁切り神社」がある。不器用で心の重たいものを抱え、もがきながら生きている人たちが救いを求めて訪れる。統理:屋上庭園の奥に「縁切り神社」のあるマンションの大家兼宮司。

統理と百音と統理の親友・路有を軸に展開する「個」と「繋がり」を問う。

 

 

屋上神社・縁切り神社ご神体が刀で、病気、酒・煙草・賭け事などの悪癖、気鬱となる悪い縁、すべてを断ち切る神さまで、夫婦や恋人たちはお参りしてはいけないと言われている。

形代(かたしろ):人形(ひとがた)ともいう。人の形に切り抜いた紙に、氏名・年齢を書いて宮に納めると、神職が祓(はらい)をして流し、災いを避ける。子供の頃、よく名前、歳を書いて息を吹きかけさせられた。

 

登場人物

国見統理(とうり):屋上庭園の奥に「縁切り神社」のあるマンションの大家で、宮司で、翻訳家。

百音(もね):亡くなった統理の元妻・茉莉と再婚相手の娘。5歳の時両親を事故で亡くした。おしゃれな10歳。

井上路有(ろう):統理の親友。第2話の語り手。バンの屋台バーで商売。元カレ・藤森忠志は女性と結婚した。

高田桃子:総合病院で医療事務として10年の39歳独身。母と暮らす。高校で付き合っていた人気者の坂口(はじめ)は交通事故で突然亡くなった。22年前だが……。

坂口(もとい):創の6歳下の弟。全国ベストエイトのラグビー部主将を経て、ゼネコンでパワハラの中、猛烈に働き10年で壊れて33歳で実家に戻った。東京に突き合って3年、30歳の真由がいる。

 

 

茨木のり子の詩集から(p109)

けれど歳月だけではないでしょう
たった一日っきりの
稲妻のような真実を
抱きしめて生き抜いている人もいますもの

 

路有が思わずゲイであることを友人たちに知られてしまう。これからも「心の中では友達だと思ってる」と言う彼らに、統理が淡々と話す。「理解できないならできないでしかたがない。だったら黙って通りすぎればいいんだ。なのにわざわざ声かけて、言い訳して、路有に許されることで自分たちが安心したいんだろう。けど良心の呵責はおまえらの荷物だよ。人を傷つけるなら、それくらいは自分で持て」。(p137)

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

生きづらさを抱えた人たちの話だが、苦しみよりも爽やかさを感じる。葛藤はあるのだが、善き人ばかりが登場するせいだろうか? 何かと言うと訪れるマンション屋上の縁切り神社の前の手入れされた花園も爽やかさの演出に一役かっている。

 

辛さを抱えた人に対して、なんとか思いやりを示せないかと思うのだが、何かできることはないかと思い、何を言っても逆効果のような気がしてしまう。同じ地平に居ない限り無理なのだろう。複雑なことは解らない小学生の百音のありていな言葉が正解になっている。

 

もともと漫画家志望であった凪良ゆうは10年ほどBL小説を書いている。それにしてもBL(ボーイズラブ)って何なの? ようするにゲイ小説、ゲイ漫画でしょ? なんで女性が書き、女性が読むの? 三浦しをんや、有川浩はBL好きを公言しているが何故?

 

 

凪良(なぎら)ゆうの略歴と既読本リスト

 

「全国のマイナー神社の多くは祈願料やお賽銭だけでは生計を立てていくことはできず、宮司さんは他に仕事を持っていたり、退職後は年金で生活を支えている人が多いそうだ。『神主は食わんぬし』なんていう悲しい言葉がある……(p15)」

 

「みんな桃子さんのことを心配してるんじゃないですか?」
「そうなのよ。わたしのことを寂しいと死ぬうさぎみたいに思ってるみたい」(p226)

 

 

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