hiyamizu's blog

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砂原浩太朗『黛家の兄弟』を読む

2022年07月25日 | 読書2

 

砂原浩太朗著『黛家(まゆずみけ)の兄弟』(2022年1月11日講談社発行)を読んだ。

 

講談社BOOK倶楽部の内容紹介

第35回山本周五郎賞受賞作!

第165回直木賞、第34回山本周五郎賞候補『高瀬庄左衛門御留書』の砂原浩太朗が描く、陥穽あり、乱刃あり、青春ありの躍動感溢れる時代小説。

道は違えど、思いはひとつ。
政争の嵐の中、三兄弟の絆が試される。

『高瀬庄左衛門御留書』の泰然たる感動から一転、今度は17歳の武士が主人公。
神山藩で代々筆頭家老の黛家。三男の新三郎は、兄たちとは付かず離れず、道場仲間の圭蔵と穏やかな青春の日々を過ごしている。しかし人生の転機を迎え、大目付を務める黒沢家に婿入りし、政務を学び始めていた。そんな中、黛家の未来を揺るがす大事件が起こる。その理不尽な顛末に、三兄弟は翻弄されていく。

令和の時代小説の新潮流「神山藩シリーズ」第二弾!

~「神山藩シリーズ」とは~
架空の藩「神山藩」を舞台とした砂原浩太朗の時代小説シリーズ。それぞれ主人公も年代も違うので続き物ではないが、統一された世界観で物語が紡がれる。

 

前作と同じ架空の藩・神山藩(10万石)で、代々筆頭家老で3千石の家の清左衛門が50歳を迎え、代替わりを考え始めた頃、強力で手段を選ばぬ次席家老・漆原内記が策略を次々と打ってくる。対する黛家の3人の息子、頭脳明晰・眉目秀麗の長兄・栄之丞、体力自慢の次兄・壮十郎、主人公で17歳の新三郎は、時の流れに流されながらも兄弟の結束を軸に対抗していく。

 

 

物語は、鹿ノ子堤の花見客で賑わう中に3兄弟と新三郎、さらに新三郎の道場仲間の由利圭蔵がいた。由利家は20石で家格は違うが、肩身の狭い三男同士で、親友だった。同じ場所に大目付・黒沢織部正(おりべのしょう)のひとり娘・美人で名高い・りくがいた。

りくに絡む酔客と兄弟の喧嘩が始まろうとしたとき、「やめい」と一喝で制したのが次席家老・漆原内記だった。

 

その後、黛家の三男・新三郎は、黒沢家に婿入りが決まり、大目付の仕事を学び、織部正の名を継ごうとする。しかし、栄之丞に思いを寄せるりくは、新三郎には心も体も開こうとしない。栄之丞は藩主の次女・靖姫との婚儀が決まる。壮十郎は無頼仲間を集め、色町で飲み遊んでいる。

 

 

漆原内記は、娘のおりうが藩主・山城守の側室となり、又次郎産んだ。世継ぎは正室の子・右京正就と決まっていたが、藩主のおりゅう・又次郎への寵愛をいいことに、不正の臭い、不穏な動きがある。

 

いきなり、第二部は13年後に飛び、31歳になった新三郎は大目付に就任し、黒沢織部正となっている。彼が、2人の兄弟と連携していかに逆境に立ち向かっていくのか?

 

 

第一章「花の堤」は小説現代2021年2月号初出。その他の章は書き下ろし。

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

第一部で、主な人物が登場し、あらかたの状況が解り、第二部ではいきなり13年後に飛んで始まる。いったいあの人は、あの件はどうなったのか、疑問一杯で読み進めてしまう。なかなかな構成だ。

 

ともかく面白く読んでしまった。以下、あえて、不満な点を挙げる。

 

漆原内記がしたたかではあるが、単なる悪役となっていて、深みが無く、したがって、ほとんど単純な善と悪の戦いに思えてしまう。

 

とくにキャラが立っていない新三郎が主人公で、長兄の頭脳明晰・眉目秀麗の栄之丞の活躍の場が少ない。

 

藤沢周平の作品に比べると、時代の雰囲気が十二分に漂ってこない。活劇シーンも現実的なのかもしれないが、印象が強くない。

 

 

砂原浩太朗(すなはら・こうたろう)

1969年生まれ。兵庫県神戸市出身。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社勤務を経て、フリーのライター・編集・校正者。

2016年「いのちがけ」で第2回「決戦!小説大賞」を受賞しデビュー。
2018年『いのちがけ 加賀百万石の礎』を刊行。

2021年2作目『高瀬庄左衛門御留書』が第34回山本周五郎賞・第165回直木賞候補。第9回野村胡堂文学賞・第15回舟橋聖一文学賞・第11回本屋が選ぶ時代小説大賞を受賞。

 

本作に関する著者インタビュー

 

 

 

 

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