凪良ゆう著『流浪の月』(2019年8月30日東京創元社発行)を読んだ。
表紙裏にはこうある。
あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。それでも文、わたしはあなたのそばにいたいあなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。それでも文、わたしはあなたのそばにいたい――。再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人を巻き込みながら疾走を始める。新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。
2020年本屋大賞受賞
家内更紗(かないさらさ)は、「やばいぐらいにマイペース」な母・灯理(あかり)と、母親を愛する父・湊の自由な家庭で育った。父が亡くなり、母に捨てられ、厳格な伯母の家に預けられる。
自由はなく、世間一般のルールを守ることを強制する伯母の家で更紗は息が詰まりそうになる。その上、一人息子・中二の孝弘が夜に部屋へ忍んで来ることを更紗は伯母に言えなかった。
小4の更紗は公園でロリコンと噂されている大学生・佐伯文(ふみ)19歳と出会い、独り暮らしの家に付いて行き、そのまま住み着いてしまう。育児書に縛られた母親に育てられ、「正しい生き方」から一歩も踏み出せなかった彼は、奔放な更紗に影響されていく。やがて、TVで少女誘拐事件と報道され、動物園へ行ったときに警察に捕まり、文は逮捕され、更紗は施設に送られる。
成人しファミレスで働くようになった更紗は亮(りょう)と同棲するが、「少女誘拐事件の被害者」として息を潜めて暮らす。亮は一方的に実家に帰り、婚約者として紹介しようとする。更紗はある日カフェ「calico」で偶然文と再会する。
恋人の谷さんが言った。「‥‥南くん(文)のことは、結局、最後までわからないままだった」‥「あなたは、それでいいの?」……わたしの答えは昔からひとつしかない。「いけないと思ったことが、ないんです」
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)
単なる友達ではなく、恋人でもない二人、しかもかけがえのない二人の間の関係が新しいものと感じる。身近な人々や世間一般から理解されず、ロリコンとストックホルム症候群と決めつけられ、文は犯罪者、更紗は助け出さりるべき人として扱われる。そんな環境がよりつよく二人を結びつける。
驚愕の派手な事件が起こるわけでもなく、エグイ場面が続くわけでもない。強烈な個性や、気の利いたセリフが飛び交うわけでもない。それでも最後まで読者を離さないのは著者の筆力だろう。
しかし、更紗にはイライラする。文がロリコンとして捕まっても、事実の説明が出来ず、いたずらされた孝弘を訴えることもしない。結果として、文に大迷惑をかけてしまう。
筋立ても、何か、少女漫画を読んでいるかのような気分になる。
三角座り:体育座りの関西での(?)呼称