hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

千早茜『正しい女たち』を読む

2020年05月08日 | 読書2

千早茜著『正しい女たち』(2018年6月10日文藝春秋発行)を読んだ。

 

6編の連作短編集。ただし、連作といってもさまざまな媒体へ掲載された短編を集めたものなので、いくつかの短編でごく一部の登場人物が共通しているだけで、話の背景などの共通性は少ない。

 

「温室の友情」
大学までエスカレーター式の私立中学で出会って以来の4人、遼子、環(たまき)、麻美、恵奈。

遼子はママが過保護で秘密を守れないと知っていた。可愛くませていた環は高校で大学生を付き合い、経験済となり、大学ではタレント活動を始めた。おとなしかった麻美も彼氏と同棲した。31歳となった遼子は化粧品会社に勤め、親の建設会社で働く博之と付き合っている。恵奈は西村と不倫しの泥沼に沈んでゆく。遼子は彼の前では我慢ばかりしている恵奈を心配し、いらだつ。麻美だけが結婚して子どもができ、付き合いが悪くなった。

母が自分のことはなんでも分かっていると思い込んでいると憤慨していた遼子は、親友恵奈の気持ちは誰よりも知っていると確信していた。そして、自分たちの友情を壊しかねないものは「正しくない」と行動に出る。

 

「海辺の先生」

海沿いの田舎町の地元の母が経営するスナックの2階が高校生の向田美優の住まいだった。夜寝られず高校では保健室で寝てばかりいて、成績は悲惨だった。友人は駅前の文房具屋の娘のさよちゃんだけだった。スナックの客で先生と呼ばれる男に美優は「母がなんでも勝手に決める」とぼやくと、男は「決められるのがいやだったら」「自分で決めないと何も変わらないですよ」と答えた。美優は「東京の大学に行く。だから、勉強を教えて」と頼む。先生と呼ぶ佐倉と美優は噂になるが、教え続けた。変わると決心して進む美優が、先生と母親をも変えていった。

 

「偽物のセックス」

会社の飲み会でのエロ話でもりあがり、麻美の夫は、マンションの同じ階で帰って来た男に絡みつく女を見た。麻美は夫婦で妻の方は「まあ、いろいろ」という。夫は気になってしかたなっく、女の後をつけるようになり、さらに……。女は言った。「でもね、わたし、正しくないセックスには興味がないの。……」「夫とセックスするのは正しいことでしょう。……なのに、なぜ、それを口にしたからって、ふしだら、と噂されるのかしら。…」

 

「幸福な離婚」

3年前、イツキはミヤ(宮原)に言った。「ミヤってさ、可能な限り自由でいたいっておもっているでしょう」と。彼らはあと150日足らずで離婚する。二人はそれまでの日々をいがみあうこともなく静かに豊かに過ごす。

 

「桃のプライド」

かっての勢いはどこえやら、二流タレントとして活動する環。チョイ役のドラマを見たと騒ぐ恵奈と遼子。恵奈は大手化粧品会社、遼子も大手アパレル会社で活躍している(遼子は「温室の友情」では化粧品会社だったのに)。環は堅実な人生の見本を前に喉が詰まり、よけいに「おしゃれで美人でセンスがいい私」を自己演出し、中毒のようにインスタを盛りつづける。女子会は華やかに盛り上がるが、互いを値踏みし、裏を覗き見ようとする。

 

「描かれた若さ」

紗耶香は清水に言った。「婚約指輪の代わりに肖像画が欲しい」 清水が画家の津野春を訪ねると……。かって付き合って捨てた29歳の舞には眼鏡の女子高生の従妹がいた。

 

 

初出:「オール読物」、「小説BOC3」、「週刊文春」、書き下ろし(描かれた若さ)

 

 

千早茜の略歴と既読本リスト

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

女性の嫌味、執念深さなどがよく書けてはいる。短編ではあるが、頭だけで考えているような無理なストーリーが多く、わざとらしさが目立つ。文章は上手く、才能は感じる。

今後に乞うご期待といったところか。

 

「海辺の先生」だけがハッピイエンドで気持ちよく読める。

 

 

木下闇:このしたやみ。季語。 鬱蒼と茂る木立の下の暗がり。昼でも暗く涼しい。

 

「人生で若い時分なんてのは一瞬だよ。老いてからがさ、長いんだ」

充分実感しています。若い時は「今だ。今だけだ。40歳になったらもうおしまいだな」と思っていました。

 

コメント
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