hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

『直木賞受賞エッセイ集成』を読む

2014年06月11日 | 読書2


文藝春秋編『直木賞受賞エッセイ集成』(2014年4月文藝春秋発行)を読んだ。

第124回の直木賞受賞者・重松清氏、山本文緒氏から第150回朝井まかて氏、姫野カオルコ氏までの36名の受賞エッセイをまとめた一冊。
多くのエッセイは、幼少期の思い出、読書体験、キャリアの結節点、創作にかける情熱を記している。

山本文緒「愛憎のイナズマ
どうして私は小説を書く「変な人」になってしまったのだろうと今でも不思議に思う。・・・私は人間の心の動きを愛している。それを文字で表現し続けたい。

山本一力「もうひとつの『あかね空』」(しみじみとなる。人情家には他人の人情が集まる。)

朱川湊人「あのカバンの意味を探して
H美さんは、何日かの欠席をはさみながら、とびとびに登校していた。来れば必ず、パンパンに膨れた学生カバンを持っていた。何でも、いつでも先生や同級生に教えてもらえるように、すべての教科書やノートを持ってきているらしかった。・・・彼女が亡くなったのは中学二年の秋・・・パンパンに膨らんだカバン――それはムダなことだったのだろうか。・・・
力の限り、がんばるしかないだろう。書き続けていれば、いつかH美さんのカバンの意味が、わかる時が来るかもしれない。

姫野カオルコ「原稿用紙に書く前
高校生の頃、ぽうっとなる対象は柴田錬三郎と野坂昭如だった。カオルコさんは、野坂昭如について吉行淳之介に直接電話をかけて相談した。吉行淳之介は、ふむふみなるほど、と聞いてくれ、そのうち、定期的に電話で雑談するようになった。(そんなことあるの? あったのだ。)

初出:『オール讀物』の直木賞掲載号のエッセイ(加筆訂正あり)、あるいはロングインタビュー。奥田英朗氏は書き下ろし。


私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

四つ星を付けたいのエッセイも多いが、なにしろ36もあれば、中には・・・。

子供の頃からガンガン読書していた人が多いが、本にはまったく縁がなかったが、青年期に読書家の友達に啓発されて遅れた分だけやたら読書するようになった人もいる。小学生の頃からお話を作って友達に話していた人も多い。

デビュー前に大変苦労した人、デビューはあっけなかったが、その後長い間絶望的状態だった人がほとんどだ。それでも、しぶとく書きつづけていた人が受賞している。数百(?)の新人賞があり、それぞれに千を超える応募があると聞いたような気がする。現代では、小説を読む人より、書きたい人が多いようだ。いや違う、書きたいのだはなく、作家と呼ばれたい人が多いのだ。

登場人物のキャラクターをきっちり決めておく作家、あらかじめプロットを何枚も用意する作家など書き方は様々だ。
奥田英朗は、ほぼ白紙でパソコンに向かいとりあえず出だしを書き出す。途中で整合性がなくなり前に戻って書き直したり、伏線を加えたりする。陶酔型でなく覚醒型で、容易に物語には入っていけない。


コメント
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