ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

まるで、入道様のようでした

2011-06-21 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
能楽師「ちょ…」呼び止め手を伸ばしたが、呼び止めてどうする?周りの目を見て、止めた。
その後…春日神社を離れて、
能子「私、ここにいるから…」と木陰に身を潜めた。
池田「はい…」
彼の背が小さくなって行くのを確認して、独り…泣いた。
能子「う…うぇ…うっ…うぅう」涙が溢れて…止まらない。
鋭い視線の束が氷柱となって、背中から心臓目掛けて突き刺さっていた。涙で溶かすように、泣いた。割れた心のガラスを踏み締めて、ここまで歩いたから、足が痛い。立ってられない。
ずる…と崩れるようにしゃがんで、ひとり、嗚咽と共に、泣いていたら、
池田「やはり、胸…貸しましょうか?」と馬場から太ちゃんを連れて戻ってきた。
能子「ッるさいッ!!」
池田「キャンセル、して来ました」と、手綱を木の枝に繋いだ。
能子「も…う」何も言わなくても通じてしまう池田さんが…こういう時、疎ましい。
池田「野宿ですよ」
能子「ムヒがあるでしょッ!」強がって、池田さんに八つ当たりする…自分が、とても惨め。
池田「虫刺されの心配ですか…」
能子「蚊なんて、大嫌いッ」蚊にまで、当たっている。
池田「…御方様」
能子「もう…御方様じゃない!父も、兄も、いない…。もう、御方様って呼ばないでッ!」
池田「そう言われても…おッ」と、言いかけ、
能子「黙れッ!!」と、怒鳴られた。
池田「啖呵切って泣かれるくらいなら、こちらが切って」
能子「バカッ!!」
池田「…。先ほどは、ありがとうございました。まるで、(清盛)入道様のようでした」
能子「もう…」余計な事ばかり言う池田さんが、大ッ嫌い「うぇ…えっ…」嗚咽で、呼吸し辛くなって…苦し…し。ヒック、ヒック…肩を上下させ、呼吸が荒くなって、
息が、入らなく…なった。
その様子を見て、
池田「“代わりに”死なせろ…か」と、わざと、言ってやったら、
能子「え?」急に息が入って来て、涙が止まった。顔を上げて「ど、どうして…それを?」