ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

『小鍛冶』の相槌役

2011-06-06 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
ゴロゴロ、ゴロゴロ…
少ない水量にも関わらず、大きな力で豪快に回る水車に興味が湧いたのか、
義隆「ふぅ…ん」と歯車に触ろうとしたから、ガシッと腕を掴んで、
義経「危ねぇぞ」と注意した。
志津「気をつけな。人生の歯車、狂っちゃうよ」と義隆の頭をポンと叩いた。
義隆「う…、うん」慌てて、俺の手を振りほどき、パッと、手を引っ込めた。
義経「…」
志津「さてっと、じゃ…出しな」
義経「あん?」
志津「なんだい、聞いてないのかい?」
弁慶「繭紡ぐ代わりに、それ、渡せって、さ」
義経「これ?」と懐剣 薄縁を見て「ま、いいけど…。はい」と渡そうとしたから、
弁慶「おい!」と止められ「源氏代々の兄弟刀を、容易くヒトの手に渡すな」と注意された。
志津「…。ただ、元の形に戻す、だけよ」
義経「元の形?」
志津「そう。元々、二本で一本の剣(つるぎ)だった。だろ?」と蕎麦の実を挽く先客を見た。
「あぁ。その兄弟刀は、それぞれ片刃作りの刀だった」と答えた先客は、
義経「ガッチャン…」だった。
ガッチャン「よう、のぞき魔ッ」
義経「こっちが先客だろッ!それより、片刃ってどういう事だ?」
ガッチャン「二本で、一本の諸刃(もろは)の剣…と言えば分かるか?」
義経「二本で…」一本の諸刃作りの薄縁を見て「両刃だった…」
ガッチャン「兄弟背中合わせて戦う姿。それが、兄弟刀といわれる由縁だ。誰だか知らねぇが、作り変えやがって。それじゃ、兄貴の方を傷付けちまう」
義経「兄貴を…?」
ガッチャン「そっちは弟刀 吼(コン)丸で、兄刀は袷(コウ)丸。二本袷(あわせ)で吼(ほ)える」
義経「…確か、これって…」弟刀をじっと見て「刀匠の三条宗近(むねちか)の作品じゃ…」
ガッチャン「俺と三(さん)ちゃんの合作だ」
弁慶「へ!?じゃ、あの刀匠 三条宗近が稲荷神に祈って、狐が出て来て、コンにちわ」
義経「宗近と相槌打って刀売った伝説…能の演目『小鍛冶』の名コンビの片割れ!?これが?」