ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

月の神

2011-06-03 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
そこには、月の神さんが祀られている。古来より、月の神は日の神の鏡の存在で、日の世界と“反対”の世界を司るといわれている。つまり、夜(黄泉)の国だ。その国にはヒトの天命が記されており、宿星(生まれて背負う宿命や寿命)を読み解くこと出来るらしい。そのことから、月の神さんを卜占の神と称し、月読見命(月黄泉命・つくよみのみこと)と讃えられる。
義経「ふぅ」と月を眺める淋しそうな彼女らの横顔を思い出し、懐から[山吹柄の手鏡]を出した。しかし、そこに映し出されたのは、自分の…「くたびれた顔…」だった。
悔しい事に、今でも、あいつら双子の見分けがつかない。
“…義隆と、妹を、お願いね…”と言ったのは、山吹だった。
じゃ、葵は…?と月の神に無言で尋ねてみたが、
相変わらず、涼しい顔で、黙っていた。
その頃、富士を眺め、それぞれに柄違いの手鏡を胸に抱く、
葵「やがて、羽衣をまとった天女は月に帰るのでした」と、富士に架かる雲を見つめていた。
静「…」その高嶺の白い雲は…時間とともに、流れて消えた。
呉葉「片割れの天女が月に帰った、かしら?」と葵を見た。
葵「彼女は、天女じゃないわ。山の息吹よ」
呉葉「フン」と鼻で笑って「同じよ。体がなければ…」すぅっと目を細め、
静「あ…」
呉葉「産声を上げなければ、意味がないでしょう。ねぇ」と静を見た。
葵「…」4年前に子供を亡くした静、娘と孫を同時に亡くした呉葉さん…気持ちは、分かる。
私も…。
呉葉「双子って…残酷ね」
葵「…」直感的に片割れの存在が分かってしまう…だから、分かってしまった。
姉 山吹が…もう、この世にいないことを…。
そうとは知らず、すでにこの世に居ない者を求め、消えかけた月を眺める義隆がいた。
パッカ パッカ パッカ…
赤川沿いに、義経の名馬 太ちゃんを強奪、能子を後ろに乗せて拉致、赤川上流に向かって逃走中の池田がいた。
能子「無用心な料亭ねッ!」簡単に忍び込めたわ!
池田「そう…」ちょっと考えて「ですね…」と答えた。
能子「で、どこに向かってるの?