ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

森の鬼退治・白鷺と愛筆と、物語

2012-01-16 | 森の鬼退治
泉「中村様、いろいろと、ありがとうございます」夫を弔うことが出来た。しばらくして、私は男(おのこ)を出産し、この中村 一氏(かずうじ)様と再婚した。
時は流れ、弟たちも大きくなり、関ヶ原開戦。その時、池田方は徳川方に付き、勝利した。
その後、海上貿易の拠点 姫路に移った池田は姫路城主となっていた。
輝政「姉上、いかがです?」城の改築工事が終わったので見に来いと私を姫路に呼び寄せた。
泉「見事な…まるで、父上様を見ているようです」白く大きな翼を広げ、立ち舞う姿…、

輝政「白鷺城です」
泉「雄々しいお姿…」白鷺と、脳裏に浮かぶ父上様が重なって見えた。
輝政「どんな事があっても、決して落城致しません」(彼が断言した通り大戦中、砲弾を受けず無傷だった。その事からも難攻 不落城と讃えられ、昭和26年世界文化遺産に指定された)
「きっと、義兄上様も、天から眺めておいでしょう」
輝政は父や兄たちの意志を継いで立派な城主に成長していた。城下町や運河の整備、また、芸能文化、教育にも熱心だった。しかし、五十歳で急遽。長男 新之助が家督を継いだ。しかし、貿易拠点を任すには年若く、国替えとなった。白鷺城には本多 忠勝様の嫡男 忠刻(ただとき)様が城主となられ、大坂夏の陣で助け出された家康様の孫娘 千(せん)姫様と婚儀を交わし、ここで暮らすことになったという。
本多「心苦しく思います、安養院様」その後、本多殿と話す機会が設けられた。池田と私を配慮しての事である。その頃、私は剃髪し尼となり、泉から名を安養院と改めていた。
安養院「いいえ。長久手の、お礼のつもりでしょう」
小牧 長久手の戦いでは、世話に成ったと、そう父が言っているように思えた。
あの戦は、私から多くのものを奪った。代わりに彼らの意志と、忘れ形見の子を授かった。

戦以来、鉄砲を持つ事が出来なくなり、代わりに夫の形見の、愛筆を持つようになっていた。長可の筆を見つめ、湧き上がる思いとは…我が子たち、教え子たちに男の生き様と死に際を伝えたい、という事で…、池田の父と弟たち、森の鬼と恐れられた夫と、それを見届けた男たちを後世に遺したい。この乱世、刃突き合わせる事止むを得なく、しかし、戦においての弔い(敬意)を決して忘れない。それを教えて下さった信長様の思い『敦盛』と共に、私は男たちの物語を描いていた。
コト…、長可の愛筆を置き、安養院「父上様、もう…よろしいでしょうか」
天を仰ぎ、私は目を閉じた。夫、長可の元へ「逝かせて頂きます」
物語を完結させ、私は来世へと続く永い眠りについた。(番外編・森の鬼退治-完-)


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