ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

散華の如く~不器用なんです、私…~

2012-11-29 | 散華の如く~天下出世の蝶~
生駒「有り難き言葉に存じます。良かったわ、信長様の仰る通りの方で、」
にこりと微笑んだが、
殿と、何を話していたのか…。おそらくは、
きつい妻だの、恐妻だの、奇妻の鬼妻だの、
笑わぬ姫だと因縁つけておったのであろう。
それに、
生駒は「信長様」と呼ぶ事を許されている。
対する私は、
“…名で呼ぶのは止めよ”
殿の、その名を呼ぶ事さえ許されていない。
“こそばゆい”
「くすくす…くすくす…」
口元に、すらりとした手を当てて、
帰蝶「そんなに可笑しいか?」
生駒「えぇ。だって…、」
くすくす…笑って、
私をじ…っと見て、
「姫様、私に、お教え下さいませ」
水引を、私に、はい、と返して、
帰蝶「な、なななんと?」聞き間違いか?「水引を?」
生駒「えぇ…」首を傾げて、
その黒き瞳に私を映らせた。
美人にめっぽう弱いのは、何も殿方だけに限る事ではなく、
実は、私もこの手の美人に弱く、その申し出をそう容易く、
「お断り致します」
問答無用で、容赦なく断われない…。美人を傷付けるのが、
帰蝶「…うぅ」
気が引ける。しかし、
正妻と側室が同じ部屋に籠り、また、あらぬ噂が立っては…
生駒「この不器用にも、出来ましょうか?」