ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

散華の如く~阿修羅道~

2012-11-03 | 散華の如く~天下出世の蝶~
彼のそれが時に、悲劇を生む、そんな気がして成らなかった。
ギュッと目を瞑り、真紅に染まった悲劇を掻き消そうとした。
だけど、脳裏に浮かんだ、アラベスクの悲劇は、
“蝶…、帰蝶様”
再び、坊主によって、呼び起こされてしまった。
帰蝶「は、はい…」
沢彦「説法中、瞑想にございますか?」
帰蝶「いえ、その…申し訳ございません」
なぜ、仏様の、教えを…?
“神に近くとも、神のそれより遥か遠く…”
なぜ、御坊様にそんな…、
二つの問いが、蜘蛛の巣のように私に引っ掛かっていた。
解こう解こう、必死にもがいていたら余計に絡め捕られ、
糸が解けず、意図が読めず。つい、難問を前に、くっと、
眉間にしわを寄せた。すると、また、さらり、さらりと、
沢彦様は、妙音観音菩薩の横にお顔の輪郭を描き始めた。
少し影のある横顔は、
帰蝶「また、私…で、ございますか?」
沢彦「人は、自相と共相(ぐうそう)…裏表を一体にして、持ち合わせております」
横顔を対称に、また、横顔。
口角の上がった顔は、笑顔。
そして、横の顔と顔の間に、眉間にしわを寄せ、歯を食いしばる、正面の、
帰蝶「私の顔…」
こんな…切なそうな顔をしていたか?
と、自分の顔を思い浮かべた。だが、
沢彦様の描いた顔に脳が支配され、沢彦様のそれしか浮かばなかった。
沢彦「三面六臂、天平の美男子…阿修羅は、ご存じにございますか?」
帰蝶「…天界でイタズラばかり。手を焼いた神々が天から追放、地上に堕ちて…」
“よう似ておられますな”
「堕ちた先でお釈迦様と出会い、帰仏(帰依)して…神と成った」