ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

散華の如く~そなた、このままか?~

2012-11-16 | 散華の如く~天下出世の蝶~
「ご自分で変えるのです。自身の力で道を開き…」
バサッ、
立派な大番傘を沢に投げ捨て、天の恵みを受けた手を、
グッと拳を握り、ビシッと細い人差し指で私を差した。
“ならば、そなたは?”
偉そうに説法し、立派を言うて回る坊主の未来が、托鉢(乞食)か?
そう、吉法師様の目が、私の空っぽの心を貫きましてございます。
“天の恵みを受けるだけ、経を読むだけで、そなた、何が変わる?”
「…」
坊主が、子供に説教されましてございます。
あれほどの惨めはござません。この坊主…、
“このまま、托鉢か?”
私の嘘は、吉法師様に見抜かれていたのです。
変えられぬ出生、変わらぬ因果をどんなに恨んでも、
仕方無き事と甘んじる托鉢行。これは苦行ではなく、
ただの、生臭のなまくら行に過ぎぬ、吉法師様の目には映ったのでございましょう。
“このままでは、腐る。何とかせよ”
「腐るは…困りますな」
しかし、この無名坊主に何が出来よう。
ぽちゃ、ぽちゃと、
鉢の中に天の恵みだけが無駄に溜まり、冷たく空しい時間だけが過ぎていった。
“そなた、名は?”
「宗恩、と申します」
“そうおん…うるさい名だ。説教の名か?”
「はい。生まれ以て、寺に捨てられ、両親より賜った名はありませぬ」
“なら、名を与える。そなた、沢彦(たくげん・沢に立つ男)だ”
「たくげん…?」
“吉法師の礼だ”
ニコリと笑うは、少年らしい。どうやら、吉法師という名が、お気に召したよう…で、
「あッ!?」