ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

散華の如く~戦が、兎にも角にも…好かん~

2012-11-08 | 散華の如く~天下出世の蝶~
帰蝶「命…」
沢彦「このままでは、若が朽ちる、そう思われませんでしたか?」
帰蝶「…私は、何も、思いませんでした」
沢彦「そう…ですかな?」
帰蝶「は…」だから、
このお坊主様は嫌い。
私の心を読んでいる。
沢彦「元より若は、命にも、天にも無欲で困っておりました」
ずず…ず、沢彦様は、御抹茶を飲み干した。
「もう一服、差し上げましょうか?」
帰蝶「え?」
さ…と、冷めてしまった茶を下げて、
殿が御愛用されている黒樂の茶碗に、
シャカシャカ…
沢彦様は新しく御抹茶を点て始めた。
シャカシャカ…
茶せんで御抹茶の攪拌するその音が、
逆に、私の心を逆撫で、掻き乱した。
「天に、無欲…?」
沢彦「神事芸事を興じ、御霊癒すは得手。軍記兵法の類がお好きでも戦地獄の沙汰がお嫌い」
茶を点て終え、
コト…、私の手前に置いた、茶のそれは、
淡い緑の粒子が、ふふふ…と細かく笑い、
雑念の全く感じられない気泡が無数立ち、
殿の漆黒の樂茶碗で、一層緑濃く美しく、映えていた。
「帰蝶様…貴女のお輿しで、我ら、幸と運が同時舞い込んだと、そう確信致しました」
沢彦様は茶碗を少し上げ、私に礼して、
ずず…、
己の点てた茶を「格別成り」と啜った。
その時、殿の御言葉が、再び、過った。