『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱  68

2019-07-17 07:20:25 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスは、6日までの日程を話し終える、一拍の間をとる、二人と顔を合わせる、両人の気持ちを探る、口を開く。
 『そして、7日8日の2日間をイラクリオンで展示試乗会を開催して、今回の展示試乗会を終えます。出来れば9日中に帰ってきたい心づもりでいます』
 『解った!展示試乗会の催行予定を了解した。お前の考えている事案について話せ。オキテス』
 『はい、この事案は営業活動の根幹にかかわる問題です。また、この問題は、今後の見通しにも関する重要な事案と考えています。関係する双方が勇気を必要とする決断でもあると考えています。相手方に我々に対する忠誠心の惹起を促すものであると考えています。そのような考えでもって、統領と軍団長の決断をいただきたいと考えています』
 『そのように言うところをみると、かなり難しい問題なのか、いかなる方策か察しかねている、話してみろ!軍団長も俺も、それがいい方策であれば、即、決断して実行を認める!』
 『ありがとうございます』
 『礼を言うのが早すぎる』
 『事案の内容を言います。イラクリオンのエドモン浜頭のもとに、現在使っている試作した戦闘艇を預けて、エドモン浜頭方の営業に使用させればと考えています。私が考えるところエドモン浜頭方には、あなどれない営業力があります。市場の支配力もあります。私らの営業活動に関するエドモン浜頭方の業務に対する忠誠心を掌握して、今後これからの営業を進めていけばと考えました』
 オキテスの言うところを聞いてイリオネスが口を開く。
 『なるほどな、エドモン浜頭、イラクリオン、クノッソス集散所、レテムノンのテムノス浜頭、そして、マリア集散所か、オキテス、この着眼はなかなかいい。しかしだ、このことの損得勘定を考えるわけではないが、この件を一考するするのに考えることだが、エドモン浜頭方と取引を開始して、これまでの受注艇数の実績はどれだけか、また、エドモン浜頭方の営業形態のカタチはどうかを、解っているところを説明してほしい。私としては、これまでエドモン浜頭と接触してエドモン浜頭の人となりについては理解している』
 『はい、解りました』と応えて、オキテスは、これまでに受注した艇種と艇数、販売実績及びクノッソス集散所との関係、営業の組織形態のカタチ、営業の責任担当している者について説明する、加えて、レテムノンのテムノス浜頭、マリア集散所との関わり合いについて述べる。
 アエネアスは、オキテスの説明するところを聴きとる、イリオネスに声をかける。
 『なあ~、イリオネス軍団長、今、オキテス隊長の言ったことについてはお前も俺も全く考えてはいなかったな。俺rが描いた構図の中にはなかった考えだ。軍団長、お前この件どのように考える?』
 アエネアスは、イリオネスのこの件に関する考えを質した。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱  67

2019-07-16 05:28:51 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスとドックスと軍船改造の件の打ち合わせを終えたオキテスは、ダックスのいる戦闘艇の浜へ歩を運ぶ、明日から東行しての展示試乗会の件について打ち合わせる。
 オキテスには胸三寸に抱いている案件がある。
 その件を想いはかってダッカスに出航の準備を整えるように整備の指示をする。
 『ダックス、解ったな!今、言ったことを念頭において整備をしておいてほしい』
 『解りました』
 ダックスがオキテスから受けた指示は、通常の整備に比して特別とはいえない整備である。配慮が主なる整備である。
 ダックスは、オキテスの指示を充分に思いはかって整備をして準備を整える。
 オキテスは昼食をドックスのいる船台の場でする。
 ドックスと船台を担当している者らと新暦第一の月の建造計画をそれとなく話しておく必要がある。
 オキテスの建造の場で作業する者らに対する心的な配慮を含んでの昼食時を過ごす。
 彼が昼食を終える、会所へ向かう、会所にいるアエネアスとイリオネスも昼食を終えたところである。
 『統領、軍団長。明日から展示試乗会の催行に東行します、そのことについて打ち合わせに来ました』
 イリオネスがオキテスの言葉を受ける。
 『おう、オキテス、ごくろう。そう形式ばって固くならずともいい。昼を終えたのか?まあ~、腰をおろせ。お前の留守が10日にも及ぶ、明日からの件を打ち合わせておこう』
 『はい、ありがとうございます』
 アエネアスがオキテスに声をかけてくる。
 『おう、オキテス、よせよせ、そんなに固くなるな、話がしにくい、気楽にいこう』
 『解りました』
 腰を下ろすオキテス、声をかけるイリオネス。
 『まず、展示試乗会の日程について話してくれ』
 『まだ、この日程で行くと決めていません。できるだけ日程を要領よくこなして、早く帰りたいが本音です。それでですが』
 『おう、なんだ?何か思惑でもあるのか?』
 『はい、展示試乗会の期間中は、出来るだけいい天気に恵まれるように祈っています。航海日は、いい天気、いい風が希望です』
 オキテスは懸念にしている話をするのに逡巡している、イリオネスはその気配を感じとる。
 『おう、オキテス、何をとまどっているのだ、話さなければならない話があるのなら話せ!この期に及んでだな、ためらっている場合ではないだろうが』
 イリオネスがとまどっているオキテスの心を蹴りあげる、オキテスは、気がせくが話をどのように進めようかと話の段取りをする、話し始める。
 『まず日程を話します。第1日目は航海日としています。2日3日はレテムノンにおいて展示試乗会を開催します。4日目は航海日として、5日6日はマリア集散所で展示試乗会を催行します』
 オキテスは、日程を話しながら、懸案の話を思案しながら話していった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱  66 

2019-07-15 04:33:04 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 会所では、アエネアスとイリオネスの地図談義、オキテスの席場においては、パリヌルスとオキテス、そして、ドックスが加わって軍船の改造が話し合われている。
 軍船の改造については、造作工作作業の影響が及ぶ範囲が狭くはない、それだけに話し合いは慎重に進められている。
 まず、準備する軍船の改造に関する用材の件が話し合われる、続いて造作工作の件を話し合う、造作工作に必要とする金具類の調達の件を話し合う、次は、新暦第一の月の建造計画を話し合う。
 オキテスが姿勢を改める、口を開く。
 『ここまで話し合った、新暦の第一の月の建造艇数は、戦闘艇2艇、新々艇2艇の合計4艇としている。営業の戦略上、建造しなければならない艇数なのである。建造船台1艇分に係わる人員が軍船の造作工作にあたることになる。ドックスには、軍船の改造、造作工作の監督業務を担当してもらいたい。ドックス!いいな!』
 『了解しました』
 『パリヌルス、造作工作に必要とする金具類、これの調達には、キドニアの集散所に出向かねばならない。ドックスが業者と昵懇の間柄である、安心できる。パリヌルス、同道して手配してくれ』
 『解った』
 『ところでドックス、ガリダ方には、話し合いの手配をしてあるな?』
 『はい、暦が変わって2日目にガリダ頭領と建造用材について打ち合わせをすることになっています』
 『おう、了解!ドックス、この前に話した製材技術者の派遣の件をガリダ頭領に話しておいてほしい。それの決着についての話し合いは、俺が展示試乗会から帰って、直ちにできるように話し合っておいてほしい』
 『解りました。ガリダ頭領との打ち合わせ、遺漏なくやっておきます』
 オキテスの席場においての三人の話し合いが終わる。
 パリヌルスがオキテスとドックスに話しかける。
 『おう、オキテス隊長にドックス棟梁、今話し合った要領で業務を進めてくれ。ドックス、軍船の改造に関する設計は今日中に完了する。明日、午前中に打ち合わせる。よろしく頼む』
 『はい、解りました。それでもって軍船の改造用材の手配をします。用材が到着次第、直ちに作業にとり掛かります。パリヌルス隊長、軍船のほうの作業準備をよろしく願います』
 『おう、心得た!任せておいてくれ』
 三人は、打ち合わせを終える、話し合いの場を解く、頃合いは昼食時を迎えている。
 パリヌルスは、せっぱつまっての軍船の改造についての日程と工程を思案した。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱  65

2019-07-13 07:24:06 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスとイリオネス、二人は地図についての話を続ける。
 『統領の言われること、充分に理解できます。さもあろうと察しられます。あの日あの時、イデーの山の頂上から見た風景と言いますか、あの様子、状態から見て、高所から眺めたクレタ島の情景がありありと目に浮かびます』
 (この物語を書いていて『地図』と言う言葉を使って書いていますが、果たしてこの時代に『地図』なる言葉が存在したかどうかについては定かではありません)
 『しかしだなイリオネス、これを見てみろ!草木の皮をはいで重ね合わせてつくったペラペラのものだが、こんなものがあるのだな。年月が経っている、書かれた海岸線が所々消えかかているしぼけてもいる』
 『私は、このペラペラのものを目にするのは初めてではありません。トロイで目にしたことがあります。エジプトあたりのものと耳にしています』
 『ほっほう、そうか』と言って、アエネアスはしげしげと2枚のクレタ島の地図を見つめる。
 アエネアスは、地図を見て思案する、図上模擬実験航海が地図があることでやれる、ペロポンネソスの西海岸線が途絶えたことで、その先の海岸線と陸地の状態が全くつかめないでいる。
 『なあ~、イリオネス、その地図を何とかして手に入れたいと考えている。何かいい方途がないか?考えてみてくれ』
 『解りました。そのような地図を手に入れる!考えてみます。オロンテスにもはかってみます』
 二人は話し終える。
 イリオネスは、アエネアスの告げた案件について考える。
 『統領、やってはみますが、いい結果を期待できないかもですな』
 イリオネスは、出来なかったときはと、その案件の対処を課題として頭の隅に残すことにする。
 地図に関しての話し合いが終わる。

 文明的な発想で人類初めての世界地図なるものが描くというよりつくられたという方が言葉が当てはまる。アエネアスがクレタ島にいる時代を下って、約300年後、紀元前600年代になって、古代バビロニアで作成された粘土板に描かれたいや、彫り込まれた世界地図なるものである。現代に生きる我々が見ても理解に苦しむシロモノである。その時代に生きた彼らの想像した世界が偲ばれる世界地図なのである。
 クレタ島の古代地図は、先駆的文明のエジプト文明か、クレタ文明か、その時代のクレタ島の領主か、国王か、それを必要とした者であるかは全く不明である。
 ただ言えることは、それがつくられた時代の文明の所産であるということである。現存はしていない、言い伝えられているだけである。

 正確性のあやふやな地図、地図ののあるなしが、アエネアスがクレタ島から長途の建国の地の探索に5年有余の年月にわたって、地中海をさまよわせる。
 また、男と女の絡みが為すべきことを迷わせる。たけだけしい自然の力にも身をすくませる、それらに事変、争い事が絡む、多難であった。
 航海の先を見通す地図がない、それが目標遂行の手順、段取りをも狂わせるとは、アエネアスは、この時、まだ気がついてはいなかった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱 *64の文言の差し替え*

2019-07-12 08:26:39 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 昨日の投稿で小説の構成に不適当である文章の箇所があります。
 このことについて、読んでいただいている読者のの皆さまに深くお詫び申し上げます。

                            山田秀雄  山田萌愛
  
 最終の2行を削除して、次の文章に差し替えします。

 アエネアスが民族を率いてクレタ島に居座っている、この時代、世界地図はまだない。見て、理解に苦しむであろう世界地図がつくられたのは、こののちを下ること約300年後のことである。
 だが、世界地図ならぬ小さな自分の住んでいる地域の小地図は存在していた。だが、クレタ島スケールの大きな広域にわたって描かれた地図は存在していない。
 だがである、世界の地図の歴史には記録されていない、大きなクレタ島一島を描いたクレタ島の古代地図が存在していたのである。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱   64

2019-07-11 09:13:54 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスは、6尺の身と心に持している己の果たすべき想いに熱を込めて、イリオネスに吐露している。
 二人は会所に着く、向かい合って座す。
 『おう、軍団長、今日の予定は?』
 『はい、午後になってですが、オキテスと完成する艇種と艇数、引き渡し納入予定等の打ち合わせをやります。それからですが展示試乗会の開催予定を打ち合わせておきます』
 『その2件か、ほかにないな。オロンテスと引き継ぎの件の話をしたかな?』
 『はいそれは、昨夕に終えています』
 『解った。朝めしにしよう、腹が減った、熱を込めて話をしたからかな』
 うなずく、朝食の支度を整えるイリオネス。
 『統領、朝食の支度が出来ました。焼いた干し魚が冷たくならないうちに食べましょう』
 『おうっ!』
 『この話題は食事をとりながら話した方がいいように思う。真剣につきつめて考えると胃に悪い』
 アエネアスは、まじまじとイリオネスの顔を見る、目を合わせるイリオネス。
 『実はだな、クレタを出航してみた、模擬実験航海だ。最も、クレタの地図とギリシアのペロポンネソスの地図が手元にあったからだが、ペロポンネソスの海岸に沿って北上した。どうにかオデッセウスの領地であるイタケ島についたまではよかった。問題はその先だ。俺は迷ったな、恥ずかしい話だがそういうことだ』
 『そうなんですか』
 『海岸に沿って、もっと北へ行くべきか、西に向けて島影ひとつ見えない、陸地があるのかないのか全く判らない海洋を目指そうかと迷った』
 『へえ~、それからどうされたんですかな?』
 『それから、俺はじっくりと考えたな。おう、イリオネス、めしを終わってから、また、それからの話しする』
 二人は朝めしを終える、少々の間くつろぐ。
 『航海をするには地図なるものが大事なものだなと感じたな。俺が持っている地図なるものはだな、クレタ島の地図2枚とぺリポンネソス半島の南端から北に向けて伸びている西海岸の状態を書いた簡単なものだが、それでも何となくわかるような気がする』
 自分のありようを思い起こして話し続ける。
 『地図の先が全く見えない。如何なる暗闇でも目の先は見えるように思うが、目の先々が見えない。地図の線が途絶えるとその先が全く解らない。途方に暮れるとはこういうことかと認識した』
 『統領が迷われる状態が、何となくわかるような気がしますな』
 『そこでまた、俺は別のことを考えた。なにを考えたと思う?』
 『それは私には想像がつきません』
 『クレタの地図が俺の手元に2枚もある、2枚が同じかと言うと、どことなく違っている。よく見比べて見た。島の海岸線が少し違っていrることに気が付いた。島は一つなのに2種類の地図とは、これ如何にである。俺は考えたね!イリオネス、お前はどう思う?』
 『統領、それは、その地図を描いた奴が違う。そういうことです』
 『俺は、それもあるが、地図を書いた奴の視点が違うと思ったね。一方の地図は、イデーの山頂から島全体を俯瞰して作った地図であり、もう一枚の地図は、3つある山の頂上に立って目の前に見える海岸線を3枚に書いて、海岸線を繋ぎ合わせて1枚の地図にしたのだと思う。クレタ島は文明が進んでいた。地図も確かなものを造れたのではないかと考えられる。また島全体を考えると地図なるものをつくりやすかったのだろうと考えたね』
 この時代には、初期に作られた粘土板に描かれた地図、以来、地図が造られた記録がないのである。だがクレタ島には、記録されていないクレタ島の古代地図が存在していたのである。
 

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱   63

2019-07-10 04:02:03 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 明日は新暦第一の月の第一日である、浜は暦が切り替わる最終日の朝を迎えている。
 オキテスは、明朝、展示試乗会の開催に出航する、気ぜわしい朝を迎えている。
 パリヌルスが朝行事の浜に姿を見せる、オキテスと顔が合う、朝の挨拶を交わす、パリヌルスが打ち合わせる用件について話しかける。
 『ところでオキテス、先日、話した打ち合わせをしたいのだが、時間をとってくれているか?』
 『おう、その件か、朝めしを終えたらすぐにとりかかれるようにしている。ドックスも呼んで話し合うように段取りしている。改造用材の件、造作工作の件、造作工作に使う金具類のこともある。それに加えて人員の件もある。明日から準備する建造計画のこともある。あれこれ広範囲にわたって検討しなければならない。午前中いっぱいの時間を当てている』
 『おう、そうか、それはありがたい。場所はどこが都合がいい?』
 『俺の席場でどうだ?話し合いに必要な木板類が準備できている』
 『了解した。朝めしを終えたらすぐに行く!』
 『おう、待っている』
 二人は、朝行事の浜でアエネアス、イリオネスと顔を合わせる。
 『おはようございます。いい朝です』
 『おう、おはよう、いい朝だ!昨日は、ごくろうであった。明日から東行だな』
 『はい、そうです』
 『キドニアでの展示試乗会だが上首尾であったな!今日まで何かと気遣い、誠意を尽くして来た成果と考えられる。そのあたりのことも後継者にうまく伝える。大事なことだと考えている』
 『解りました。統領はうまく言われる。それは大事なことだと考えています』
 『そういうことだ、オキテス。朝行事の場で言うのもなんだが、次なる者を教え育てる。事の成就の効果性を高める。時代が連なるだ。計り知れない大いなる未来がそこにある!俺はそのように考えている』
 『統領の想いが充分に理解できます。言われる通りだと思います』
 『おう、オキテス、お前、俺の想いに同調しくれる。ありがとう』
 『統領がそのように言われずとも、それが当然と心得てしっかりと努めます』
 オキテスは、アエネアスと目を合わせる、うなずいて話し合った場を去っていく。
 傍らにいるイリオネスがアエネアスに話しかける。
 『さすが統領、いいことを言われますな。言われる通りです。教えありてこそ、時代が連なる、そして、未来が構築されるですね』
 『それにしてもだな、イリオネス、今、俺は民族を背負って立っている、いろんなことを経験する、その経験則を持って育っていく、ところが今だ、その育ちを待つことのできない現場に立っている、出立を決めてしまっている。彼らの未来の責任をヒシット感じている』
 『言われる通りです』
 『教え育てる、知は力を拓く、国を建てる、国を興すことの要諦である。次なる者を教え育む。そうでなければ時代が連ならない!未来をつくることができない』
 イリオネスは、アエネアスの言う未来構想に心が震えるのを感じる。
 『未来の構築!自分がつくる未来に生きるか、他人のつくる未来に生きるかの分かれ目だ。未来が見えるのはどちらだと思う?イリオネス!』
 『統領の言われることにうなずけます。私では、統領の起ち位置に到底立てません。統領の想い、考えは、高遠にして大いなるものです。感じ入りました』
 イリオネスは、アエネアスと話し合って、建国に対するアエネアスの宿命感、民族の未来と希望の大きさを感じとった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱   62

2019-07-09 03:59:33 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 会所をあとにしたパリヌルスは、自分の管理管轄下にある浜へと向かう、歩を進めながら思考する。
 アエネアスとイリオネスの態度風情を見る限り建国の地の探索の途に就く大事に対する進捗状態がとどこってはいないと察する。
 パリヌルスは、壮途に就く軍船の整備の構想を真剣に考える、途に就く船は4船を予定している。
 軍船の帆柱2本4枚帆構造、舵構造、走行安定性向上構造について考える。
 『オキテスが浜に不在となる2日間がある、この間に造作、工作を考える』
 思考作業が次に移る、この造作、工作でもって軍船の整備をする、果たして定める期限内に完成させることができるであろうかの懸念が湧きあがってくる。
 パリヌルスは、期限までの造作完了に自信の喪失感を覚える、この自信の喪失をクリアしなければならない、自信があってこその造作作業である。
 彼は想を練る、一連の作業工程を考える、用材の調達、造作、工作に用いる工作金具類の調達を考える、造作、工作の技術について考える、動員について考える。
 思考項目を木板に書きつける、項目別に思考を凝らす、定めた工期内にこれらの造作、工作ができるとほのかに感じる、造作、工作の完了した軍船の姿が瞼の裏に描き出されてくる。
 描き出された船が大海の波を割って進む姿がくっきりとイメージすることができた。
 軍船の改造可能の自信が体中に出来る、身が震える、身を襲った喪失感の消滅を感じる。
 課された大事の遂行に自信の喪失感をクリアしたパリヌルスがそこにいる、彼は、心のうちで叫ぶ!『いける!』『やれる』と連呼する。
 彼は、改造箇所のカタチを頭中に描く、デザイン性を無視する、頑丈構造と機能性を第一義とする、そして、定めた期限内完成である。
 彼は木板を手に取る、構想を図面にする、工程表をつくる、段取り、手順を決めた。
 これらは計画のための構想であって、実行計画ではない、彼は実行計画策定にオキテス不在の2日を脳漿を絞り、没頭する、そして、計画完遂の工程計画を仕あげるとした。
 彼は、これを持って航海の安全性の向上と操船性の効果向上することに自信を持つに到った。

 2日間が瞬く間に過ぎる。
 オキテスが2日間の展示試乗会を終えて帰ってくる。
 オキテス、テカリオン、キドニア集散所、三者の話し合いも順調に終わる、取引のカタチが決まる、テカリオン方に三か月後に引き渡す戦闘艇1艇、新々艇1艇の受注もする。
 展示試乗会においては、新々艇2艇を受注する。
 展示試乗会施行の結果に関係者一同が歓喜する、オキテスがこれまでに築いたキドニス、スダヌスの協力体制が効を奏した結果でもある。
 オキテスが帰る、アエネアスとイリオネスに成果報告をする、パリヌルス、オロンテスがその成果を知る、一同がその結果に歓声をあげる。
 彼ら一同は、展示試乗会を遂行した一同の成果を褒めたたえた。
 

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱   61

2019-07-08 03:35:00 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスとイリオネスら三人は、船舶建造に関する新暦第一の月の状況についての話し合いを終える。
 彼らにはこの話し合いをもって、気になる新暦第一の月の状況が見えてきている。
 アエネアスが声をかける。
 『なあ~、軍団長、いいか、考えてみろ!今月の月初めの頃と比べると状況が大いに変わってきている。来たる月の第一日からの展示試乗会に関して考えているのだが、お前の同行の必要がないのではと考えが変わってきている。お前はどのように考えている?』
 『そうですね。そのように言われると、私の考えもそのように考えが変わってきています。同行すれば相手と話し合う、相手が何事かと詮索する、やぶ蛇状態になるのではないかと考えられます。同行はしないとします』
 アエネアスと話し終えたイリオネスがパリヌルスに声をかける。
 『パリヌルス、状況がわかるかな?初めに考えたのは、客に対する我々の誠意のカタチは、どうあるべきかである。それが考えの原点であったのだ』
 『私は、展示試乗会に関して同行の必要性がどこにあったのか?と考えました。このたびの実行計画に照らしてみて、展示試乗会の施行はこれまでやってきた延長線上での営業展開を続けることで当方の意図が勘付かれないのではーーー』
 『そうだな、お前いいとこを突いてくるな』
 次いで、イリオネスはオキテスと顔を合わせる。
 『おう、オキテス!今度の展示試乗会に俺が同行することにしていた件だが、同行を取りやめる!いいな、そういうことだ』
 『軍団長は、今回の展示試乗会には同行されないということですね。解りました。了解しました』
 『それでだが、ダックスに展示試乗会の施行のやり方等を教える。その件をしっかりやってくれ』
 『了解しました』
 アエネアスがパリヌルスとオキテスの二人に声をかける。
 『オキテス、今、イリオネスが言ったことの確実実行だ。パリヌルス、アレテスの漁業部についてだが、引き継ぎについて、漁業部がこれまでに築いた運営のやり方を後継者に引き継ぐように運営の要を教えることをやってくれ』
 『了解しました』
 イリオネスが三人と顔を合わせる。
 『本日の打ち合わせをこれで終わる。統領と俺は建造の場の巡回に行く。君らは今日の業務を終えてくれ。以上だ』
 パリヌルスがオキテスに声をかける。
 『あ~あ、オキテス、明日のキドニアの展示試乗会、成功を祈っている。ところでだが、軍船の件についてだが、詳細の打ち合わせをお前が東行する前にやっておきたい、時間の都合を頼む』
 『おう、解った。軍船整備の件だな』
 『おう、そうだ』
 四人が腰をあげる、アエネアスとイリオネスは、建造の場に向かう。
 パリヌルスとオキテスは自分の持ち場へ向かう。
 彼らは、大事の決行に向けて、日々の業務を落ち度なく遂行していた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章   クレタ離脱  60  

2019-07-05 04:41:58 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 テカリオンがアエネアスらに帰途に就く挨拶を終える、会所をあとにする。
 アエネアス、イリオネス、パリヌルスの三人も腰をあげる、テカリオンの交易船が停泊している浜へと向かう。
 浜に立った彼らが海上に目を移す、沖合にいい西風が来ている、白ウサギが跳ねている。
 テカリオンの姿が船上にある、手を振っている。
 アエネアスら、そして、オキテス、ダックスの姿も浜にある、テカリオンらの手振りにこたえる。
 パリヌルスは、二度と会うことのない辛さを手ぶりにこめる。
 テカリオンの交易船、そして、曳かれいく2艇の新々艇が遠ざかる、浜に立つ者らが見送った。
 
 オキテスは、ダックスに明日、明後日の二日間にわたって、キドニアにて施行する展示試乗会の準備をするように指示して会所に歩を向ける。
 テカリオンの見送りを終えたアエネアスとイリオネスの姿が会所にある、オキテス、パリヌルスが姿を見せる、四人が会所にそろう。
 イリオネスが三人に声をかける。
 『おう、ひと仕事を終えたな、ごくろう。オキテス、受注している船の引き渡しのことだが、状況を説明してくれるか。そして、新暦第一の月の建造計画を含めてだ』
 『はい、解りました。今日、テカリオン方に新々艇2艇を引き渡しました。船の在庫ですが、戦闘艇1艇となりました。当月の建造のあがりが少々遅れて5日後となります。当月の建造のあがり艇数が戦闘艇が1艇、新々艇が4艇です。建造のあがり艇数に在庫の戦闘艇1艇を加えて、保有艇数が戦闘艇が2艇、新々艇4艇となります。合計艇数が6艇です』
 『総艇数が6艇だな。今日現在の受注艇数は何艇かな?』
 『はい、受注艇数は、戦闘艇が3艇、新々艇が4艇で合計艇数が7艇です。そのような状況です。そのようなわけで新暦第一の月の引き渡し予定が戦闘艇2艇、新々艇4艇、これらを新暦第一の月の16日ころまでに発注先に引き渡す予定としています』
 『おう、そうか、来月は船の引き渡しに多忙を極めるということになるな。了解した。引き渡しに懸命に勤めてくれ。それについて、要望があれば言ってくれ、協力体制をもって対応する』
 『ありがとうございます』
 『ところで、第一の月の建造計画艇数等について聞かせておいてくれ。建造作業に従事する人員のこともある。また、軍船の整備計画もある』
 『第一の月の建造予定艇数は、戦闘艇2艇、新々艇2艇の計4艇です』
 『建造艇数が4艇か、オキテス、いけるか?きついぞ!』
 『ドックスと充分に話し合っています。いけると目算を立てています。今後、これからの人事計画、建造用材の調達計画等、ガリダ方との話し合いを展示試乗会から帰って行う計画を立てています』
 『解った。建造部及び営業に関しての一連の事情を理解した。用件があれば言ってくれ。総力をあげて手伝う。軍船の整備のことだが、パリヌルスに話してある。彼と打ち合わせてくれればいい』
 『解りました』
 『パリヌルス、そういうことだ、いいな!』
 船の事に関する計画の大要について話し合いを終えた。