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『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY            第5章  クレタ島  110

2012-08-28 06:24:15 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアス心中の想いは、大事を為す、それにはいい結果に導く者を掌中に持つこれである。一見してクリテスをそれと認めた。
 『神官殿、ご配慮をありがたく頂戴いたします』
 『お喜びいただき、私もことのほかうれしく感にたえません。よろしくお願いいたします』
 話を終えた三人は酒器の酒を飲み干した。
 神官は、トロイ戦役後のクレタの情勢について断片的に話題にした。
 『神官殿、今日は神託について、お世話をいただき誠に有難うございました。私ども一行は、これにてこの場を辞します。いろいろと配慮を賜り有難うございました』
 神官は、礼に重きをおいてのアエネアスの挙措動作に感服していた。今、去り行こうとしている彼らを丁重に見送った。一同には、クリテスが加わって神殿を後にした。
 神殿を出て空を見上げる一行には、中天に輝く太陽がまぶしかった。
 アンキセスは、程遠くない右手に見える神殿を指差しながら口を開いた。
 『皆、聞いてくれ。思い出したぞ!後先になったが順番は気にせずだ。ポセイドン神の神殿だ、その隣がアルテミスの神殿のはずじゃが、よっていこう。ポセイドン神に航海の安全を、アルテミス女神に農作の豊穣を祈っていこう』
 クリテスが先頭にたって一同を案内した。

 クレタでは、トロイ戦役で敵対し、刃を交えたさきの領主イドメニウスは、今の領主レオコスに国外に追いやられていた。うかうかとクレタに船を着けるそれでいいのか。アエネアスの頭中に懸念が浮かんできていた。レオコスの勢力も限られているだろう、クノッソスを遠く離れたキドニアあたりまでは力が及んではいないであろうと考えられた。そのように神官との話のやり取りで感じ取っていた。