会議前夜の打ち合わせを終えた彼らは、広間を引き揚げた。
昨日の雨もあがり、素晴らしい快晴の朝が訪れた。太陽が東の空に昇り始めた。早朝会議の西門前の広場は、まだ、砦の影の中にあった。各船の船長及び副長連が姿を見せ始めた。
『おう、おはよう』 気軽に朝の挨拶が交わされている。
『おう、皆、集まったな。パリヌルス、全員集まったようだな。会議を始めるか』
『おい、皆、座れ』
彼らは、円く座をとり座った。円の中心にはイリオネスが立ち、一同を見下ろしていた。
『諸君っ!おはよう。只今より打ち合わせ会議を始める。我々は、船出の準備を何があろうとも、今日、明日、明後日、この三日で船出の準備を完了させねばならない。そして、風待ちをする。では、航海日程を伝える。我々がこの地を船出して、三日ののちには、停泊を予定しているミコノス島に着く。このミコノス島では、統領の所用のため、6日間停泊する。ミコノス島を出航して、順調に航海を続けたとしたら、早ければ5日後には、クレタ島の西部の地に着く、以上が航海日程の概略である』
これだけ言って、イリオネスは一同を見回した。
『今日は、この会議を終えて、態勢を整え、即時に作業を開始する。いいな。これから、作業と人員の割り振りを伝える。先ず、各船舶の点検と整備に当たってもらう。第一船、第二船、第三船に乗る者たち全員がこの作業に当たる。作業の総責任者ははパリヌルスとオキテスである。次は、積荷を整えることとその荷役である。また、航海中の食事のことである。この作業の総責任者はオロンテスである。これには第四船、第五船、第六船に乗る者全員が当たる。船長、副長は、総責任者の指示を受け、全員を統率して、手落ちなく事に当たってくれ。以上である。船出までの時間がない、会議はこれが最後だ。各員奮励せよ』
イリオネスの檄であった。