『トロイからの落人』 FUGITIVES FROM TROY 第７章 築砦 384

　イリオネスは、一同を前にして口を開く。
　『諸君！長途の航海、苦労をかけた。隊長として心から礼を言う、ありがとう』
　『ワオッ！』
　一同からの歓声である、彼は一同を見渡す。
　『諸君は、無事帰着を果たした。これをもって一同の調査隊の任を解く、ご苦労であった』
　再び、一同が歓声をあげた。この様子を見ている周りの者たちからも、ど～っと歓声があがった。
　イリオネスがアレテスを手で招きよせた。
　『アレテス、このあと、無事帰着歓迎の宴が予定されている。全員、身体を洗って、サッパリして宴の場に連れていくのだ、いいな。先ほど統領から『お前潮っぱいぞ』言われた。見たところお前も潮っぱい顔をしているな、身体を洗いに行こう』
　アレテスは、一同にその旨を伝えて、イリオネスともども海に身を浸した。彼らは、旅の疲れをも洗い流した。
　海からあがる、浜に居並ぶ者たちの顔がかわっている。前にいた者たちにかわって、小島から来たアレテス配下の者たちが顔を連ねていた。アレテスが海からあがってくるのを待ちかねていた。一同がアレテスを囲む、アレテスをもみくちゃにする、一同から歓声があがって騒動が終わった。
　広場から木板の打つ音が耳に届いてくる。イリオネスは、贈り物を脇に抱えて立っていた。
　『おう、アレテス、一同に声をかけてくれ。広場へ行こう』
　彼らは、隊列を組んで歩き始める、小島の者たちが、それに続いた。
　広場には３０余りの焚き火のシマがつくられ、盛大に炎をあげ、彼らを待っていた。彼らが姿を見せる、総員が立ちあがる、突如、沸きあがる拍手と歓声、セレストスがここと決めていたシマに彼らをみちびいた。
　改めて、彼らと総員が顔を合わせる、先にも増しての拍手と歓声が轟く。彼らがニケを駆使して行った航海が、彼ら全ての者たちの共有する壮挙であり、快挙であった。
　アヱネアスがユールス従えて立っている、イリオネスがアヱネアスの正面に歩み出て、改めて、無事の帰着を報告した。
　『統領、この品は、イラクリオンのエドモン浜頭からの贈り物です。受領のほど願います』と述べて、贈り物をアヱネアスに手渡した。
　『イリオネス軍団長、このたびの快挙、そして一同の無事帰着、何よりであった。ご苦労であった。この贈り物は喜んで頂戴する。パリヌルス、開いてくれ。皆に披露しよう』
　パリヌルスは、アヱネアスから贈り物を受け取った。