『私らは、トロイの領主であったプリアモスとは血筋を異にしており、アヱネアスの元祖はトロイの地に来て、トロイの礎を築いた。今は亡きプリアモスは、アヱネアスの縁戚に連なる者と聞いています』
『ほっほう、そうするとアヱネアス統領は、その元祖の血筋ですかな』
『そうです』
『判りました。いずれにしても民を統べていく、それはそれは大変なことです』
話は一段落した。二人は休んだ。アドーネ夫人の仕立ててくれる茶を喫して和んだ。
『では、聞きたいといわれたイラクリオンの世情について話しましょう。私らは昔のクレタの治政にかかわったクレタの王の事は話として語られることを聞いて『ほう、そうであったのか』と聞き流すだけで全くわかりません』
浜頭はここで話をきった。彼は喉が渇いたらしい、冷めた茶を一気に飲みくだしてイリオネスの目を見た。
『ここ数年という時期ですが、今の統治者がクレタの治政をするようになって、落ち着きを失っていますな。イドメネスがトロイ戦役に参戦して10年に及ぶ留守中にいろんなことがありました。この留守を預かったのが現在の統治者のアウニウスですが評判がよくありません。アウニウスはイドメネスの妻を籠絡して自分のものとする、その様な事情もあってかトロイから帰ってきたイドメネスをこのクレタに一歩も上陸させずに国外へ追っ払た。イドメネスはクレタ海を西に向かったと聞いています。その統治者は横暴で浅慮、このクレタをうまく統治していくのかと、私らが気に掛けているいった状態です。今の状態では貴方らのいる西地区へ力が及ぶのか気になるところです。そんなこんなで今のイクラリオンはというと平穏であるとは言えない状態になるのではないか、その様な予感がしますな。降ってわいたような奴らとアウニウスの手の者らとのトラブルが三日に一度は起きています。私らは、当たらず障らずでいます。西アジアの北の方ですが、ここ数年来、不作が続いているようですな、その地方の奴らが、徒党を組み、群れをつくり『海の民』となって、多島の海域を海賊となって荒しまくり、このクレタに流れてきていると話題にしています。もし、話題で収まらない事態になったとき、どのようにしようかと心配なことです。アウニウスがその奴らを始末できるのかと気に掛けている次第です』
『ほっほう、そうするとアヱネアス統領は、その元祖の血筋ですかな』
『そうです』
『判りました。いずれにしても民を統べていく、それはそれは大変なことです』
話は一段落した。二人は休んだ。アドーネ夫人の仕立ててくれる茶を喫して和んだ。
『では、聞きたいといわれたイラクリオンの世情について話しましょう。私らは昔のクレタの治政にかかわったクレタの王の事は話として語られることを聞いて『ほう、そうであったのか』と聞き流すだけで全くわかりません』
浜頭はここで話をきった。彼は喉が渇いたらしい、冷めた茶を一気に飲みくだしてイリオネスの目を見た。
『ここ数年という時期ですが、今の統治者がクレタの治政をするようになって、落ち着きを失っていますな。イドメネスがトロイ戦役に参戦して10年に及ぶ留守中にいろんなことがありました。この留守を預かったのが現在の統治者のアウニウスですが評判がよくありません。アウニウスはイドメネスの妻を籠絡して自分のものとする、その様な事情もあってかトロイから帰ってきたイドメネスをこのクレタに一歩も上陸させずに国外へ追っ払た。イドメネスはクレタ海を西に向かったと聞いています。その統治者は横暴で浅慮、このクレタをうまく統治していくのかと、私らが気に掛けているいった状態です。今の状態では貴方らのいる西地区へ力が及ぶのか気になるところです。そんなこんなで今のイクラリオンはというと平穏であるとは言えない状態になるのではないか、その様な予感がしますな。降ってわいたような奴らとアウニウスの手の者らとのトラブルが三日に一度は起きています。私らは、当たらず障らずでいます。西アジアの北の方ですが、ここ数年来、不作が続いているようですな、その地方の奴らが、徒党を組み、群れをつくり『海の民』となって、多島の海域を海賊となって荒しまくり、このクレタに流れてきていると話題にしています。もし、話題で収まらない事態になったとき、どのようにしようかと心配なことです。アウニウスがその奴らを始末できるのかと気に掛けている次第です』