『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1498

2019-03-20 09:23:10 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスがクレタ島離脱の工程表の作成作業を終える、太陽の位置を確かめ頃合いを測る。
 『これで、いいな!』と、もう一度為し終えた作業を振り返る。
 書き記した木板を他人に見られぬ配慮をして自部屋の棚に置く、意思表明までに構想の醸成に努めるとして保存する。
 彼が宿舎をあとにする、会所へと向かう。
 歩を進める、木板に書き記したクレタ島離脱の工程表の一項一項が想い浮かぶ、その実行の光景がまぶたのうらに浮かぶ、その光景を見て結果を想定する。
 うまく事がおさまる、うまく事がおさまらない、懸念が彷彿と浮上する。
 事が考える手順通りに進まない、また、手順通りに決着する事態もある。
 事態収拾の不思議を考える、何となく事の運びの要領について考えている。
 『そうか、事の運びの傾向と対策を充分に考えねばならんな。まとめることに難儀する案件を抽出してよく考える』
 事態の処理要領を慎重に考えることを意に決めた。
 アエネアスは根を詰めて考え続ける、ふと気が付く、事がまとまる不思議もある、思考がその不思議にたどり着く。
 立ち止まる、会所の前に立っている、彼を迎えるイリオネスの声が耳に届く。
 『統領、待っていました。こちらへ!何か考え事をしていられましたな、まとまりましたか?』
 『おう、まとまるではなく、まとめたといった感覚だな。イリオネス、俺が今、考えていたのは、勝つことの不思議を考えていた。また、話がまとまることの不思議を考えていた。俺の心の中のどこかでこの不思議をのぞんでいる』
 『ほう、不思議ですか、不思議だから不思議なのです。昼となっています。昼食としましょう』
 『おう、そうするか。腹を満たせば何とかなるかだな』と声をかけて腰を下ろす。
 二人は雑談を交わしながら昼食を終える。
 『しかし、統領、少しやせられた感じですな』
 『ほう、そうか。少し細めのほうがダンデイだろうが。腹の出たブヨブヨの領主と身の引き締まった精悍さあふれる領主を比べてみろ!』
 『いま、目の前にいる統領はそれに加えて叡智あふれる統率者といったイメージですな。いいことです。ついていきますどこまでもですな』
 『おう、そうかそうか。誉めてくれているのか、人を喜ばせるな、その気になるじゃないか』
 二人がたわいのない話を交わしている、アエネアスは、自分がなすべき案件をまとめ終えた安ど感の中にいた。
 パリヌルスとオキテスが姿を見せた。


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