『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1102

2017-08-22 09:01:17 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 朝行事を終えたアエネアスは、ユールスの手をとって、朝の浜風景を眺めている。
 通り過ぎていく者たちと朝の挨拶を交わす。
 『おはようございます。いい朝です!』
 『おう、いい朝だ。おはよう』
 彼らの挨拶言葉に『いい朝です』がついて挨拶を交わすようになっている。
 アエネアスが微笑んでいる、ユールスの表情も明るく笑みをたたえている。
 彼らは、朝の浜の風景の中に溶け込んでいる。アエネアスは、そのような朝が好きであり、こよなく愛していた。
 オキテスが近づいてくる。
 『統領、おはようございます。いい朝です』
 『いい朝だ、おはよう』
 『今日ですが、建造用材の手配にガリダの製材所に行ってきます』
 『そうか、解った。頭領によろしく伝えてくれ』
 朝の挨拶を終えたオキテスは、オロンテスの出航の浜へと走る。
 『おう、オロンテス、待たせた。許せ!』
 『おう、ギアス、乗船者を確かめてくれ』
 『全員乗船済みです!』
 『出航だ!ギアス』
 ギアスが出航の指示を声高に告げる。ヘルメスが波を割り始める、そよっとほほを撫でて過ぎる朝風の海をキドニアに向けて出港していく。さわやかな朝の浜風景であった。
 イリオネスがアエネアスの傍らに立つ。
 『頭領、おはようございます。いい朝です』
 『おはよう、いい朝だ。仕事に携わる者らの息吹を感じる』
 『そうですね!日々危なげない一歩を踏み出していきたい。その一念です』
 『俺も常々そのように考えている』
 『胸に抱く思いは、同じですね。ところで今日の予定は?』と話し合いながら宿舎のほうへと歩を運んでいく。
 浜の今日が動き始めている。二人の語らいが一族の統率を誤らせない主題で話し合われている。

 この時代は、今日のように複雑な国際関係を呈していない時代である。自分らが志向する秩序で対抗関係を制御するか、力で抹殺して地域を制圧する時代である。周辺の状態をを眺めまわすとギリシア本土、西アジアの諸地域に比してクレタ島は平和な地域、いや、島であったらしい。
 そのクレタ島においてアエネアスの率いる一族は、平和な時を過ごしていたといえる。
 アエネアスの心の奥はというと、そのような平和と使命である建国について、どのように計ればいいかを思考して、使命の実現に強くジレンマしていたのである。