『トロイからの落人』 FUGITIVES FROM TROY 第７章 築砦 1099

　イリオネスの話が続く。
　『パリヌルスよろしく頼むぞ！オキテス、オロンテス、集散所へはこの件を改めて伝える必要はない。修理、改造の事業部門を開設したことを伝えて、マリアの集散所からの引き合いを確かな受注とすること。また、集散所の担当とは繋がりをより緊密なものとすることに努めてほしい』
　『解りました』
　三人は声をそろえて答える。
　イリオネスの心中では、昨日の間に、このようにネクストが決まるであろうと予測していたのではなかろうかと考えられた。
　オキテスが姿勢を改める。
　『一同！聞いてほしい。今日の会議において決めねばならない我々のネクストがここに決定した。矢は弦を放れた、我々は未来に向けて一歩を踏み出した。これからの日々を安心して努めていけるように力を尽くしていこう』
　オキテスが話しを締める。
　『おうっ！』と返事が返る。
　『このほかに会議にかける議題があったら提案してくれ。ないようであれば、これで会議を終了する。あ～あ、軍団長、何かありますか？』
　『ない、しかし、伝えておきたいことがある』
　『軍団長、どうぞ』
　『先ほど話したマリアの集散所行きについては、日程と用向きが決まり次第、一同に伝える。以上だ』
　『解りました。ほかに案件はあるかな？パリヌルス、オロンテス、どうかな？』
　『おう、、オキテス、案件はない』
　『おう、そうか、よしっ！了解』
　オキテスが立ちあがる。
　『一同、今日はご苦労でした。本日の会議はこれにて終了とする』
　一同が拍手する。会議は終わった。
　イリオネスがパリヌルスら三人に声をかけてくる。
　『おう、昼が近いな。一緒に昼めしにしないか？』
　『いいですね！そうしましょう』
　『しかし、何にもないぞ！パンとぶどう酒ぐらいだぞ』
　『それで結構です』
　『統領は、どうされますかな？』
　『おう、君らと一緒に昼を食べる。場所はここでいい』
　一同が一緒に昼めしということになった。パリヌルスとオキテスはオロンテスに手を貸して昼めしの場をつくる。
　パンとぶどう酒のみの昼めしである。素朴である。花を咲かせる話を肴としての昼めしの風景である。
　パンに噛みつく、咀嚼する、ぶどう酒で胃に流し込む、一同は、微笑みながら話に花を咲かせて声高に話す、新鮮な話題が語られる、その食事風景は原始の時代の風景であった。
　そうでありながら時代の進化を感じさせるのは、彼らの語る話題であった。
　イリオネスが改まって話し始める。