『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1107

2017-08-29 09:59:57 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
次いで、オロンテスはイリオネスに今日のパン売り場の状況の報告をする。
 『おう、オロンテス、今日はご苦労』
 『これが今日の売り上げ実績です』
 オロンテスが今日のパン売り上げの木札を入れた袋をイリオネスに手渡した。
 『おう、けっこうあるじゃないか。オロンテス、パン売り場、忙しい日が続いているようだな。売り上げが伸びている、いい傾向にあるようだな』
 『パンの味を新味にしてから、少しづつですが売り上げが多くなってきています。スタッフ一同、喜んでいます。また、堅パンのほうも改良をしてから徐々にですが売り上げが伸びてきています』
 『ほう、それは重畳だ!よし、身体を休めてくれ』
 建造の場で顔を合わせた一同が、宵のとばりのおり始めた浜をそれぞれの宿舎を目指してあとにしていく。

 ギリシア連合軍の焼き討ちで消滅、滅びかかった民族であるが、アエネアスを統領として、おちのび、彼らは考えつくまま、事業を興し、自給自足で生計を営み、民族としての未来を描き、クレタの地において『ネクスト』を決定した。
 夏の日は駆け足で過ぎ去っていく。
 オキテスが手配した建造用材が届き、造船事業が手掛けている受注の戦闘艇2艇の完成が40日後に控えている。戦闘艇の建造が完成予定日を目指して、着々と出来あがっていく。
 彼らは意思を統一して決めた『ネクスト』。 一歩を踏み出そうとしている。
 この『ネクスト』が思いもよらないところで動き始めている。クレタ島の東地区のマリアの集散所からの引き合いがキドニアの集散所に届いたのである。
 彼らは、これを機に『ネクスト』への布石を打ち、弾みをつけて事業を進展させたい。この布石を打ちにイリオネスがマリアへと赴くことにした。
 イリオネスは、その先棒行動での秘策をパリヌルスら一同とは共有せずに一案を実行することにしている。その実行をよき結果としたときに公表するとして、その作戦要領を胸の一隅に秘匿している。
 パリヌルスが取り組んでいる戦闘艇の図面組作成が出来あがる。彼が作業を手伝わせている一同に声をかける。
 『おう、一同!ご苦労。出来あがりが少々遅れたが、どうにか出来あがった。とにかく出来不出来は別にして、出来あがった図面の組数が作成予定数を超えて、25組もできた。ごくろうであった。それにしてもだな、オシャカ図面がこんなにあるとはな』
 パリヌルスの声がかりで作業に従事した者らが顔を見合わせる。
 『まあ~、しょうがないか』
 パリヌルスが落胆とは思われない語調でつぶやいた。
 『一同、ご苦労であった。休んでくれ』