『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第1章  トロイからの脱出  73

2009-06-18 07:19:01 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 月はない、星だけの夜である。昼であれば、船から見える筈の陸地が見えない。陸からは、この船団が海路を進む情景も見えない筈である。
 船上の者たちには、舳先の波を割る音、櫂の水きり音、船を押す風の唄を耳にすることができた。
 パリヌルスの決断は正しかった。帆を上げたときより、風は、強さを増していた。パリヌルスは、この状態が薄明の頃までは持続するという思いである。櫂漕ぎは中止した。帆走のみで船を進めた。船上の者たちにとっては、しばしの休息の間であった。後続の船も、先頭の船にならって航走した。
 迫り来る薄明の頃には、レムノスの南の東沖に到達の予定である。その辺りがテネドスの西沖であり、予想の危険海域である。
 アエネアスは、思考の琴線を緩めず、軽く目を閉じていた。