月はない、星だけの夜である。昼であれば、船から見える筈の陸地が見えない。陸からは、この船団が海路を進む情景も見えない筈である。
船上の者たちには、舳先の波を割る音、櫂の水きり音、船を押す風の唄を耳にすることができた。
パリヌルスの決断は正しかった。帆を上げたときより、風は、強さを増していた。パリヌルスは、この状態が薄明の頃までは持続するという思いである。櫂漕ぎは中止した。帆走のみで船を進めた。船上の者たちにとっては、しばしの休息の間であった。後続の船も、先頭の船にならって航走した。
迫り来る薄明の頃には、レムノスの南の東沖に到達の予定である。その辺りがテネドスの西沖であり、予想の危険海域である。
アエネアスは、思考の琴線を緩めず、軽く目を閉じていた。
船上の者たちには、舳先の波を割る音、櫂の水きり音、船を押す風の唄を耳にすることができた。
パリヌルスの決断は正しかった。帆を上げたときより、風は、強さを増していた。パリヌルスは、この状態が薄明の頃までは持続するという思いである。櫂漕ぎは中止した。帆走のみで船を進めた。船上の者たちにとっては、しばしの休息の間であった。後続の船も、先頭の船にならって航走した。
迫り来る薄明の頃には、レムノスの南の東沖に到達の予定である。その辺りがテネドスの西沖であり、予想の危険海域である。
アエネアスは、思考の琴線を緩めず、軽く目を閉じていた。