ドラマ「半沢直樹」の原作で大ブレークした池井戸 潤さんの佳作。ほぼ同世代の人間がこうした素晴らしい作品を生み出していることを誇りに感じたりするが、同時にその才能(作品をまとめあげる努力も含めて)に嫉妬してしまう。
この作品は題名から想像できる通り、一介の町工場がロケットエンジンの重要部品となる高精度のバルブシステムを開発し特許を取得したことから、大手メーカーの策略に追い込まれながらも、痛快に逆転して、自分たちの部品でロケットを飛ばす、という夢に挑戦していくといったストーリーになっている。
半沢直樹シリーズ同様に資金調達が苦しくなるエピソードでは相変わらず、金融機関の描写が超リアルで、業界人にはあるあるネタがいっぱいである。この作品は非常にテンポが良く、初めて読んだときにはたぶん2時間もかからなかったように思う。かといってそんなに軽くなく、涙する場面もいっぱいある。この作風は池井戸さん独自のものだろう。
ジャンルは全く違うが、以前紹介したSF小説「星をつぐもの」と同じく何度リピートしても、作品世界に入る込める大好きな作品だ。