ジェームズ・P・ホーガンが1977年に発表したSF小説。同一設定で続編として「ガニメデの優しい巨人」「巨人たちの星」「内なる宇宙」が翻訳されている。
2028年、月面で5万年前の赤い宇宙服を着た人間が発見される。その謎をヴィクター・ハントとクリスチャン・ダンチェッカー、二人の科学者がいろいろな推論、調査、解析結果から解き明かしていく、いわゆるハードSFの部類だ。ネタばれになるので(ストーリーを説明するのが面倒くさいので)詳細は記さないが、性格も違えば分野も違う二人がぶつかり合いながら、真実を追求するという命題の前に次第に協力して、謎を解明していく、その行程はまるでアクションもののようなカタルシスがあり、専門用語に疎い私でも大変楽しめる。何回も読みなおしている小説だ。
作品世界はもうあと15年後に迫っている。小説の中の技術水準に到達するのは厳しそうだが、何が起こるか分からない。地球外生命体の発見はいつかあると思わせてくれる。
しかし、主人公のヴィクターハントは作品中では40歳前後。登場人物の年齢をいつのまにか追い越してしまっている自分がちょっと悲しくなる。「何にも成し得ていないなあ」と泣けてくる。
3作目の巨人たちの星以降はだんだんハードSFから、アクションエンターテイメントに趣きが変わってきてしまうので、理論を積み重ねていく「ガニメデの優しい巨人」までが面白い。是非ご一読を。