矢野(五味)晴美の感染症ワールド・ブログ

五味晴美の感染症ワールドのブログ版
医学生、研修医、医療従事者を中心に感染症診療と教育に関する情報還元をしています。

Southern Illinois Universityの訪問記 (3)

2011-09-23 19:39:53 | Southern Illinois Un
Southern Illinois University 訪問も最終日になりました。


最終日は、以前に一緒に働いてとてもお世話になったナースの方を訪問しました。
暖かい人で、Big motherのような方です。彼女は一緒に働いた学生、レジデント、ファカルティをずっと暖かく見守ってくれています。

Facebookでいろいろ近況を送ってくれていましたが、来年3月に二人目のお孫さんが生まれるそうです。

その後、微生物検査室での教育セッションがありました。ずっとこれは続けられているもので、今回見学させていただいたら、それがさらに進化して、よりきっちりしたフォーマットにのっとってなされていました。

微生物検査のベテランテクニシャンの方が、簡単なhistoryを読み上げ、この状況で、
これこれの検体をとり、グラム染色をしたら、これが見えました、と顕微鏡をみんなで見る方式です。Historyに基づいて、学生、レジデントは、どんな微生物かを考えるセッションです。

1例目は、右股関節からの膿の培養で、これが培養されました、とのことでした。
微生物は、Nocardia. いろいろなspecies があるという話、どのspeciesかはreference center (ほかのより大きい検査センター、Mayo Clinic, 州の保健局など)に送る、という話。

2例目は、Peritonitisの患者の血液培養でグラム陰性菌が検出されました。
Levofloxacin の静脈注射が投与されている状況。
これはなにだと考えられますか。

答えは、Bacteroides でした。太くて短めのグラム陰性桿菌。

午前中、少しラウンドして、ランチは以前の同僚で膠原病科の友人とナースと一緒に。。

午後は、ジャーナルクラブ。記念写真を撮りました。

最後は、ラウンドで、非常に興味深い症例がありました。

バンコマイシンによると考えられるTENの患者

中年女性で、左目のがんけんが腫大と発赤と結膜炎、periauticular lymphonodes (耳前リンパ節腫脹)がある患者のコンサルトでした。

この症状は、Parinaud's ocularglandular syndromeといい、人の名前がついている症候群です。

もっともコモンな原因は、Bartonella, Tularemiaなどですが、地域的にLyme diseaseなども考えられます。TB, Syphilisなども鑑別対象。HIVの検査はします。

一般細菌のStaphylococcus aureus, Streptococcus pneumoniae, Pseudomonas aeruginosaなども考慮。

眼科と共同で診察していましたが、結膜のbiopsy, 耳前リンパ節のbiopsyをする予定です。診断がついたら教えてね、と指導医の方に頼みました。

初期治療として、Vancomycin, Piperacillin/tazobactam, Clindamycinを開始して、血液培養や結膜、リンパ節のbiopsyの結果を待つ方針となりました。Clindamycinの併用の理由は、連鎖球菌によるTSS, necrotizing fasciitisを考慮してのことだったようですが、臨床的には違う印象です。結膜などの検体のグラム染色や培養結果が出てから変更予定とのことです。

楽しくて、感染症診療の一番おもしろいところを見せていただいた3日間でした。
内容が濃く、かつての教え子であった方が、すばらしい指導医として活躍している姿も見れて感無量でした。

下記に記念写真をシェアしたいと思います。。