矢野(五味)晴美の感染症ワールド・ブログ

五味晴美の感染症ワールドのブログ版
医学生、研修医、医療従事者を中心に感染症診療と教育に関する情報還元をしています。

米国の内科系生涯教育プログラムと教材

2008-09-28 09:51:39 | Weblog
ご存知の方もおおいと思いますが、米国の専門医資格は、数年ごとに生涯教育教材をこなし、かつ、更新試験に合格することが義務付けられています。

この専門医試験の受験資格には、州の医師免許を維持していることも含まれます。
当然ですが、医師免許のない人に、専門医資格があってもどうしようもないからです。

私も更新試験を受験するため、いま、必死で勉強していますが、その教材が良質であることをあらためて感じます。ほとんど忘れている循環器、呼吸器、など自分のサブスペシャリティ以外の領域は、数年ぶりに、その診療を思い出しながら、かつ最新の診療を学習していくことになるのですが、とても楽しくて、米国での診療をなつかしく思い出しています。

ケースを主体とする問題は、「判断」を問う問題がほとんど。「記憶力をためす」
形式はあまりないですね。ただし、「まれな疾患、新しい疾患概念を知っているかどうか」を試す問題はあります。臨床現場で重要なものに限って、何度も出題されています。

勉強を通して、内科のおもしろさを再発見・再確認するような楽しい時間です。
(もちろん、試験のストレスはありますが)

組織横断的な感染症診療コンサルテーション制度

2008-09-27 11:57:21 | Weblog
日本で明治維新以来、継続されている縦割り医局講座制の弊害のひとつは、臓器横断的な専門領域が、育たなかったことです。私の専門の感染症診療は、臓器別での対応は、ほとんど無意味な領域です。臓器によらず全身を診れること、一般内科力の基本のうえに、さらに広く深い専門的な知識と判断が求められる領域です。

日本の現在の臨床感染症教育の問題点は、世界の多くの国で「医学部学生時代」に学ぶことになっている実践的な感染症領域の教育がほとんど浸透していないことです。

帰国してから私が必死になって職場も含め、全国の研究会、講演会などでお伝えしていることは、決して「特別な専門性を必要としている」ことではなく、「きわめて常識的で、ルーティンとなっているべき事項」に尽きます。

たとえば、入院中の患者に対して、血液培養を2セット採取する、という「常識的ルーティン」、入院中の患者の発熱で、医療関連感染を想定し、Anti-pseudomonalな抗菌薬を使用する、という「常識的ルーティン」を、実行していただくよう奔走しています。


さらに、「感染症科」のあり方では、組織全体の利益を考慮すれば、病院全体を俯瞰するような診療体制が理想的です。このような診療体制に、保険診療が適用になることが、「臓器によらない横断的な感染症診療体制」を実現するためには必須である、と感じてます。

栄養管理料など、臓器別専門科によらず、全病院的な組織による保険診療もありますので、なんとか、このような制度を感染症診療体制にも取り入れたいと願っています。

患者さんに励まされました。

2008-09-25 12:25:38 | Weblog
昼ごはんを久しぶりに食堂で食べようと歩いていましたら、
8-9歳ぐらいのこどもさんに呼び止められました。「五味先生!」と声がかかりました。私は「???」と、思い出せないお顔のお子さんに、首をかしげていると、その横にいたご夫婦で、ご主人のほうが私の担当した患者さんでした。

かなり長期にご入院されていましたが、すっかり別人のようにお元気なお姿で、本当にうれしく思いました。

最近、結構行き詰まりを感じており、なんだかいろいろなことの方向転換をしようかと思っているところでした。そんなときに、元気な声で声をかけれ、そして元気な姿にもどった患者さんのご家族をお会いできたことで、すごく癒されました。

宇宙の法則で、「与えるものを受け取る」といろいろな方から学びましたが、まさにそうだ、と実感した日でした。

自分自身、自分の人生、キャリアを見直す時期に来たと感じています。

講演をひとまず休もうと思っています。

2008-09-23 13:45:17 | Weblog
仕事と家庭、ワーク・ライフバランスということが、いま日本でさかんに取り上げられています。在米中は、意識することさえも必要なく、自然にそれが実現されている環境にいましたので、帰国後はとても不思議な気持ちでいました。シングルのときは100%のエネルギー、お金、時間など自分のすべてを自分のために投資できる環境にいました。今年はじめに結婚してから、理解のある主人と共同生活を始めましたが、共有できる空間、時間、ビジョン、ともにつくりあげる家庭、にもっと時間を持ちたいと思うようになりました。

2008年度いっぱい予定されている講演、2009年度以降もすでに決まっている研究会、講演は責任をもって果たす予定です。しかし、これ以上は、少し休みたい、と思います。

いまの自分にとって、「なにがもっとも優先すべきことか」を常に考え、自分の体と心に正直に耳を傾けると、そのような気持ちになります。

いまの勤務先での診療体制も変化を余儀なくされており、今後、みんながハッピーにキャリアと個人の生活を充実できる方法を模索したいと思っています。

「自分を超えて」、これまでの生活パターン・枠をを大きく変化させ、常に自分らしく、自分がワクワクすることをやっていきたいと思います。

自分を超える

2008-09-23 13:36:40 | Weblog
2005年にビジネスセミナーを通して一度だけ名刺交換をした方が、政治家に転身されました。彼女の出版記念パーティに先日出席しましたが私より少し先に人生のいろいろなことを経験されている点や、人生のいろいろな場面での選択の仕方がとても参考になりました。介護保険制度に関して、自身が介護を通して感じた不条理、制度疲労が政治家に転身したきっかけとなった、といわれていました。


彼女の著書「あきらめない心が明日の自分をつくる」 
ファーストインプレス社 えばたたかこ著 1200円
は、簡潔にいろいろな人生の示唆に富んでいる、と思います。
ぜひ、読んでみて下さい。


本書で、いただいたメッセージは、「自分を超える」ということでした。
私自身、キャリア、パーソナルライフにおいて、「自分を超える」「これまでの枠をはずす」ことが必要な時期になっています。みんながハッピーに、そして組織としても前進できるような方法をみつけたい、と思っています。

最後に、私は、特定の政治家や政党をこのブログで宣伝するつもりはありません。
ひとりの人間として、魅力的な方や、自分が影響を受けた、または、参考にしている生き方をご紹介したいだけです。

政治家では、消費者の大臣になった野田聖子議員、社民党の福島瑞穂議員などは個人的に応援したいと思っている方々です。政党などは超えて、やる気があり、見識の高い政治家の方に、ぜひ日本の政治をよくしていただきたい、と切に願っています。


米国の生活習慣病の実態

2008-09-21 14:13:18 | Weblog
いま、米国の内科専門医の更新試験の勉強をしています。
その試験問題(すべてケース)で、診断、治療方法、予防方法など、ふだんの現場での「判断」を問われる良質の問題を各領域(循環器、呼吸器などなど11分野)につき130問程度ずつやっています。

そのなかで、40代、50代の患者が、高血圧、糖尿病、などの慢性疾患を多数もち、
虚血性心臓疾患で入院してくるケースが多数で、本当に、その状況の深刻さをあらためて驚きます。

米国も、治療を改善、開発する前に、あの「脂にまみれた食事」「人間の食べる量をはるかに越えている」と思われるレストランの料理のポーション(一皿あたりの量)を、減らすことが先決だ、と強く思います。

日本の食事の健康さを、あらためて、実感します。

日米欧、そのほかの世界中の食を考慮すると(世界40ヶ国以上訪問経験あり)、和食は、バランス、多様性、健康度、美的感覚度において、圧倒的に優れている、と思います。

日本は、予防医学の発展途上国です。

2008-09-21 14:05:22 | Weblog
ここ数日診察した患者さんから垣間見る日本の医療の深刻な問題点が浮き彫りにされています。いまはじまったことではないですが、ここ数年間、ずっと同じような状況に遭遇し、がっかりしています。(奮起して、医療従事者教育、学生教育、患者教育に取り組んでもいるわけですが)

日本の医療現場の最重要課題のひとつといえます。それは、重要な予防医学の標準的な診療がほとんど普及していないこと、患者教育の不十分さ、です。

若い20代の女性で、知的レベルや教育レベルに問題のない普通の学生が
東南アジアの国に視察研修旅行に行きました。当然、その地域は、マラリアの予防薬、各種予防接種(A・B型肝炎、破傷風・ジフテリア、MMR、腸チフスなど)を行って渡航するのが先進国では「常識」です。
ところが、この学生は、こういった知識はまったくなく、そのまま「素のまま」
渡航していました。なぜ、こういったことがあとを絶たないのでしょうか?
市民公開講座などを、もっともっと普及させる必要があります。
旅行会社も率先して、リスクを伝える必要があるでしょうね。

別の患者さんは、60代の女性で、複雑な既往歴が多数あり、心内膜炎のために、数年前にMitral valve(心臓弁のひとつ)の置換術を受けた方です。今回、診察にあたって質問したところ、「なにもせずにそのまま」歯科治療を受けた、と申告しました。「抗生物質を呑むようにいわれませんでしたか?」と聞いても、まったく
そのような教育は受けておらず。。。日本の医療現場では、いったい、なにを患者に話しているのか????と疑問に思わざるを得ません。

この患者さんは心臓弁以外にも、両側の脚に人工関節を挿入されている方でした。
このようなハイリスクの患者に、患者教育が徹底されていないのは、非常に深刻な問題です。しかも意識もはっきりしており、自分で理解できる程度の方だからです。

この方は、残念ながら、菌血症が判明し、上記の3つの重要な人工物はすべて感染
(少なくとも保菌)してしまった、ことも判明しました。このような患者さんにとっての大きな不利益になる前に、もっともっと患者教育が必要です。

患者教育の前に、学生、医師教育も必要です。
医学部で、もっと「実践的な臨床的な知識」を確実に教育するシステムが必要です。卒業してからでは、「遅すぎる!」というのが私の持論です。






新しいMedical School をつくりたい!

2008-09-20 23:38:39 | Weblog
8月末にヨーロッパの医学教育学会AMEE に参加してきました。今年は、プラハ、神聖ローマ帝国の首都であったすばらしく美しい街並みをもつ場所での学会でした。オーストリア航空(真っ赤の制服、緑色の座席、黄色の枕カバー)にはじめて乗り、ウイーン経由で現地入りしました。ウイーンでは、友人に会い、博物館のような街並みをここでも観光しました。

医学教育、ティーチングスキルを学びたい、との思いで2006年に参加したスエーデンでのセミナーがきっかけで多くの友人に出会いました。その友人らのおかげでAMEE ではパネリストや、ワークショップのインストラクターをさせいただく機会をいただきました。大変、貴重な機会で、よい経験と勉強になります。

私は、自分の本業として日本の医学教育をなんとかしたい、と思い、米国から帰国し、この3年半、力いっぱい仕事をしてきました。しかし、なかなか理想的な環境をつくることは短期間ではむずかしいのを実感しています。組織的にも、相対的にかなり恵まれているにもかかわらず、です。

米国でさえも、保守的な大学では新規的なことがなかなかできず、今年のはじめには、医学教育の方法で世界をリードしている友人は、新設医学部に異動する、という選択をしました。そういったAMEE の仲間などとの話から、私も、いっそのこと
新しい教育システムをもつメディカルスクールをつくりたい、との小さな思いが芽生えてきました。

実際、大学院レベルのメディカル・スクールをつくろう、といった声が複数の団体、グループから上がってきています。優れた臨床医の育成を目指す教育機関を
つくることが、私の人生のミッションのひとつでもあります。

既存の施設の小手先改革ではなく、大胆で、先進的で、革新的で、魅力的なメディカルスクールをつくりたいです。自分が理想とし譲ることができない!!と確信した、臨床推論とhistory and physical examination を最重視する教育プログラムを提供したい、と思います。

日本の教育力

2008-09-12 09:12:29 | Weblog
学生に講義する季節となりました。個人的には、「日本型、大人数講義形式」はあまり意味がないと思っています。

大学では、「ひとりtutorial」と学生に言っていますが、
「ケーススタディ形式」を取り入れて、基礎医学と臨床医学の橋渡し的なレクチャをしています。

日本の大学が、もっと、教育に力を入れる文化があれば、と思います。
OECDのデータでは、日本の「公的教育費」は、統計のある26カ国中、最下位との新聞報道がありました。

人口減少、英語情報からの鎖国状態、などを考慮すると、とても世界に太刀打ちできない感じがします。

矢野(五味)晴美の感染症ワールド・ブログサイトを移動しました。

2008-09-09 02:13:48 | Weblog
皆さん、こんにちは。
感染症診療に興味のある方へ、新しいサイトで、ブログ形式による
情報還元を再開いたします。

以前のサイトが、システムの脆弱性があり、移動しました。

これまでと同様に、有益な情報を、リアルタイムで還元します。。

ご期待くださいませ。