矢野(五味)晴美の感染症ワールド・ブログ

五味晴美の感染症ワールドのブログ版
医学生、研修医、医療従事者を中心に感染症診療と教育に関する情報還元をしています。

年末年始の診療

2008-12-25 20:53:13 | Weblog
あさってから年末年始のお休み体制に入る病院も多いかと思います。年末年始の急患への体制も、医師不足で大変な病院も多いと思います。

今年は、医師不足、救急車のたらいまわしの問題がメディアに大きく取り上げられた年です。なんとかこの問題を解決する方向に、すこしずつでも動いていければ、と願うばかりです。

助かるべき患者を、きちんと助けてあげられる、そのような診療体制を常備できる病院が増えることを願ってやみません。

そのためにも現場からの声を、適切な場所で、伝える方法や手段が必要であると痛感いたします。

抗菌薬の保険適用をいかに改善するか

2008-12-24 09:19:14 | Weblog
国内での抗菌薬の保険適用問題は、感染症診療および抗菌薬使用の適正化の面で、障壁のひとつになっていることは、有識者、現場医師の共通認識のひとつです。

今年、日本医師会からの呼びかけで、すでに承認されている薬の「適用外使用」に関しての要望の募集がありました。関連学会を通して申請、となっていましたので、日本感染症学会を通し、私は、Vancomycinの保険適用の拡大を要望することをお願いしておりました。

さきほど確認しましたところ、感染症学会からの要望はひとつも認められなかったとのことでした。

保険適用量の改善は、Piperacillin/tazobactamでやっと今年実りました。適用疾患についてはまだまだ不十分ではありますが、少なくとも「まっとうな」用量が使用できるようになった点は本当に朗報でした。

Levofloxacin, Meropenemも欧米と同様の用量が申請中・申請予定とのことですので、これらも大きな進歩と言えます。

そのなかで、Vancomycin の保険適用疾患が、MRSA, PRSP(これはブランド製品のみ承認)となっている日本の現状は、「世界的にみて、ありえない」ほど不十分です。
実際の現場では、グラム陽性球菌が血液培養から検出されているにもかかわらず、
効果が期待できないカルバペネムなどが使用されていたりしています。血液培養陽性というmedical emergencyに対応できないシステムになっています。すかさずVancomycinを投与すべき状況に対応できないのです。

「なぜ、不適切なことを闇雲に継続するのか」ということを、日本社会に問いたいです。

以前から、私個人でできることは最大限しながら、この問題を解決しようとしています。署名運動などをすべき時期なのかもしれません。

米国内科専門医の更新試験も合格しました!

2008-12-23 13:46:53 | Weblog
今年は、試験三昧でしたが、もっとも懸念していた米国内科専門医の更新試験も合格していました!試験の出来具合から、落ちたかもしれないな、と感じていたので、本当に安心しました。

前回も書きましたが、米国の教育システムはやはりすばらしい。生涯教育も妥協なく、容赦なく、年齢、経験、役職などには一切無関係に、全員一律に、更新義務はありますし、更新試験までの生涯教育教材の消化、更新試験があります。

マークシート方式の時代と比べ、コンピュータ式になってから出題数が減りました更新試験は、120分を3回、1回60問なので180問の試験です。

初回の専門医試験はマークシートでしたので、1回4時間で120問、これを2日間にわたり4回繰り返すため480問の試験でした。

いずれにしても、洗練され、内容の充実した試験問題、生涯教育教材を今後も勉強していきたいと思います。

もっとも残念なのは、日本では米国での最新医療はほとんど実践できないことです。患者の不利益はもちろんですが、医師として判断や知識を磨く機会が少ないのは非常に残念です。

私の理想は、日米を行ったり来たりしながら、グローバルに通用するスキルと能力を維持することかな、と改めて感じています。

米国感染症科専門医の更新試験に合格しました!

2008-12-16 18:10:55 | Weblog
今日は、夕方に、Emailがきまして、米国内科専門医局American Board of Internal Medicineから、先日受験した感染症科専門医の更新試験の結果が出ているので、websiteにlog-in して結果が確認できる、との知らせがありました。

自分のもっとも好きな領域の感染症ではありますが、結構、結果を見るまでは緊張しました。今回の更新試験は「合格」していました!あまり勉強する時間もなかったので、心配はしていましたが、「合格」だったことで、今後も「いつでも、どこでも」米国内で診療できる基盤は維持できていることにほっと安心しています。

10年ごとに更新試験を受験することになりますので、まず、最初の10年目はクリアできたことになりました。私の場合、30歳、40歳、50歳、60歳、とずっと10の倍数の年齢で一般内科の更新期限が来るのでそれに合わせて感染症科も繰り上げ受験しています。一般内科、感染症科と同時受験は大変ですが、なんとか今年、ダブル受験を試みました。

正式な通知は、スコアとともに郵送されてくるそうですが、いち早く結果を知ることができるこのweb systemはやはり米国はすごい、とシステムのすごさを感心します。

これで、日米ともに、ようやく「感染症科専門医」の資格を今年取得・更新となりました。今後、こうした資格を生かした仕事を続けていきたいと思います。

後進の指導に全力を傾けたい気持ちでいっぱいです。

米国財団法人 野口医学研究所 設立25周年記念式典が開催されました

2008-12-13 12:19:15 | Weblog
昨日、米国臨床留学・臨床交流などをサポートし続けている米国財団法人 野口医学研究所 設立25周年記念式典がありました。

若手の学生、研修医の方で、臨床留学を希望している方にはぜひ、その存在を知っていただきたいので、ご紹介も兼ねて、ご報告します。

http://www.noguchi-net.com/


私は、約20年前の医学部3年生のときに、TV 朝日の「徹子の部屋」に創立者のおひとりのペンシルベニア大学教授の浅倉稔生(あさくらとしお)先生が出演されているのを見てから、この野口医学研究所とのかかわりが始まりました。

当時、浅倉先生が、TVで「このままでは日本の臨床は世界から取り残される」とお話されていたのが印象的でした。当時はまったくその意味が理解できてはいませんでした。

浅倉先生に「医学部3年生という米国臨床留学準備には最高のタイミングでよく連絡をくれました」などといわれたのをいまでもはっきり記憶しています。

インターネットの普及前の当時、野口医学研究所からの情報は、なによりも留学に必要なものばかりでした。

私自身は、野口プログラムではなく、その後、東京海上の西元慶治先生のNprogram (N プログラム)を通し、臨床研修で渡米しました。

http://www.tokio-mednet.co.jp/nprogram/


野口医学研究所は、そうそうたる方が関係者で、

前理事長の浅野先生
新しく理事長になったハワイ大学外科教授の町淳二先生、
トーマスジェファーソン大学の名誉医学部長のDr. Gonella
同上 教授の佐藤隆美先生、准教授の津田武先生、
ハワイ大学 副医学部長 日系のDr. Izutsu

らがお越しでした。

ご来賓では、民主党 鳩山議員、聖路加の日野原先生、自治医大の高久先生、黒川清先生(急遽ご欠席)、などでした。

野口英世を記念した、Hideyo Noguchi Africa Prize (小泉首相開始)の選考委員会委員長をおつとめの黒川清先生らのご活動のご報告もありました。

http://www.cao.go.jp/noguchisho/index-e.html

12月17日17時から 新宿の国立感染研にて、第1回受賞者のLondon School の研究者Dr. Brian Greenwood の講演があります

野口医学研究所のAlumniのメンバーでは、日本全国から米国臨床留学した多くの知人、友人が参加で、情報交換などの貴重な機会でした。

本日、明日と、医学教育者、および学生・研修医向けの留学希望者向けのセミナーも開催されています。

http://www.noguchi-net.com/seminar/20081213.html


Donation 寄付の文化

2008-12-09 09:44:31 | Weblog
私は約3年前から、母校のJohns Hopkins Bloomberg School of Public Healthに毎年、寄付をしています。日本の医学部の母校にも寄付の依頼は来るのですが、使用用途や社会貢献があまり目に見えないため、気が進んでいませんでした。

ところが、帰国後、Hopkinsが全世界向けの教育プロジェクトとして開始した、Webcast で、感染症科の毎週のカンファレンスを流しているのを知って以来、毎年寄付しています。

教育サイト:Johns Hopkins Center for Clinical Global Health Education
http://www.ccghe.jhmi.edu/CCG/index.asp



大学として、特にリソースの少ない発展途上国などでHIVを中心とする感染症の診療にあたる医師などに向け、お金のかからない教育サービスの一貫として行っているもののようです。当然米国内の一般医や感染症科医向けとしても、質の高いディスカッションが好評で最近では、生涯教育時間の登録も無料で提供されるようになりました。

こうした大きな社会貢献に対し、やはり卒業生として誇りに思いますし、在学当時に学び触れることができた、すばらしい教官たちの高い志を常に思い出し、一歩でも彼らの世界への貢献に近い仕事がしたい、と思っています。

日本では、寄付の文化があまりないので、残念ですが、大学運営の大きな資金として卒業生・同窓生からの寄付は大きいようです。

母校の革新的なプロジェクトを期間誌などで垣間見ては、学術・教育機関としての大学のあり方を学ばせていただいています。

自治医大 卒業直前・抗菌薬はじめの一歩セミナー開催

2008-12-03 13:06:16 | Weblog
2005年に赴任してから4年間、卒業前の6年生の希望者を対象に、卒業前抗菌薬はじめの一歩セミナーを行ってきました。毎年、学年の半数ほどが自主的に参加しています。2-3日間の連続集中セミナーですが、学生らは幹事学生のアレンジのもと、真剣に参加しています。卒業試験や最後の判定試験など試験の嵐の予定をくぐっての参加となっているようです。

2005年に開催した時、特に明確な動機はなかったそうですが、「友人に誘われて」参加した学生で、卒業後、故郷の病院で院内感染対策などにもかかわる大活躍をする人材が生まれたりしています。その地域の同窓生にも声をかけ、昨年と今年、病院内セミナーも開催しました。先日ご紹介した青森県立中央病院の研修医の方々です。

今年の卒業生は、日本に帰国して、初めて講義を担当した学年でもありますが、日米の学生のスタンスの違いに多いに戸惑い、驚いた経験のある年でもありました。
(日本では受身学習が中心のため)

ところが、今回、自主的にみずから選んで参加したセミナーのため、参加者の目の色が大きく違っていました。時間の関係で、主にレクチャ形式になりましたが、ケースを含めながら、ベータラクタム系とバンコマイシンの基本を最低限、理解してもらうことを目標にしていました。

質問などもかなり具体的なものがあり、3年間のうちの知識の発展度がうかがえる状況でした。日本語での感染症診療の参考書も増えましたので、学生たちもそれぞれになんらかの参考書を自分なりに購入して学習しているようでした。

今回のセミナーは2時間半ずつで2日間でしたので、短時間にも多くの情報を提供する形になりましたが、学生たちが卒業後、全国の都道府県に戻り、その地域で、少しでも「感染症の基本的な診療」を身につけ、実践してくれることを願ってやみません。

2005年の卒業生のように、リーダーシップを取れる人材が生まれることも楽しみのひとつです。

共著の一般向け医療書を出版しました。

2008-12-02 09:43:07 | Weblog
日本の医療改革、医学教育改革に関する本です。

このたび、野口医学研究所・ハワイ大学外科教授の町淳二先生らとご一緒に、共著で、一般医療書を出版いたしました。

一般向けの本ですが、日本でのメディカルスクール構想も提言されており、
ご興味がございましたら、ぜひ、ご一読ください。

金原出版 「美しい日本の医療 グローバルな視点からの再生」編著 町淳二、津田武、浅野嘉久 2800円

です。

著者は、青木眞先生、藤谷茂樹先生、金城紀与史先生、徳田安春先生、近藤正晃ジェームズ先生、佐野潔先生、柏木哲夫先生、ジョゼフ・ゴネラ先生(トーマスジェファーソン大学)、加我君孝先生(東京大学) ほか、錚々たるメンバーです。興味深いチャプターも多いので、ご参考までご紹介させていただきました。