矢野(五味)晴美の感染症ワールド・ブログ

五味晴美の感染症ワールドのブログ版
医学生、研修医、医療従事者を中心に感染症診療と教育に関する情報還元をしています。

Southern Illinois Universityの訪問記 (1)

2011-09-21 13:38:44 | Southern Illinois Un
米国微生物学会ICAACも本日が最終日でした。私は最終日は移動日として、シカゴから車で約3時間半ぐらいのスプリングフィールドにやってきました。

久しぶりに米国で車を運転しましたが、なんとかできました。シカゴでInterstateという州をつなぐ大きな道路に乗るまでじ時間がかかりましたが、その後はなんとかスムーズに運転できました。なつかしいコーン畑がいっぱいで、ノスタルジックな気持ちにもなりました。

無事にホテルにチェックインし、Southern Illinois University (SIU)でお世話になっていたSecretaryの方に電話していつでも訪問してもいいと言われたので、さっそくフェローの方と私のふたりで訪問しました。

なつかしい面々と再会し、感激もひとしおでした。みんなお元気で感無量でした。

2代前のDirectorの先生もボランティアでカンファレンスに参加されていましたが、その先生とも再会してhugしたときには、米国のファミリーに再会したような気分でした。

文字通り"Professional Family"ともいえる暖かい雰囲気の職場でした。

残念でしたのは、一番お世話になり、いっぱい叱られもしましたが、一番ためになるフィードバックを頂き、鋭い臨床判断を肌で教えてくれた先代のDirectorがちょうど東海岸に移動したことでした。彼女はいまでも私の”Professional Mother”で、多少の無理もきいてくださる恩人、ロールモデル、そしてまた反面教師でもあった方のひとりです。

建物も病院もきれいなままで、6年半の歳月があっという間に過ぎ去ったことを実感しました。

到着後すぐに、トラベルクリニックと一般感染症クリニックを見学。医学部2年生2名が見学しており、フェロー1名と指導医の先生と、なじみ深いナースたちとのひとときでした。

患者の診察を見学しました。

この症例は非常に教育的で、クリニックで指導医の先生が医学部2年生(まだクラークシップは行っていない、基礎医学をPBLで学んでいる学生)にいろいろ質問していました。2年生とはいえ、実践的な教育を受けているので臨床的な知識もずいぶん持っているなあ、と感心しました。


Enterococcus のspeciesの違いについて、感受性のパターンの違いについて、腸球菌が起こす感染症について、さらには感染性心内膜炎について、などなど教育ポイントが満載の症例でしたので、彼らにとってもPBLでの勉強を補強するよい経験になったのではないかと思います。本当にimpressiveでした。

臨床判断の面では、Enterococcus faecalisの血流感染で、かつ人工弁の挿入された患者なので慎重な対応が必要です。6週間治療するか、4週間にするか、2週間で終了するか、これらの選択は、基本的には臨床判断が必要です。正解はなくケースバイケースの個別判断だと思います。

臨床現場で、患者の状態をよく観察し、話を聞き、そのうえで、Urosepsisと判断し、あえて人工弁の感染性心内膜炎とは診断せず、総合的な判断からその可能性はきわめて低く治療も2週間でよいと、入院時の担当指導医は判断したようです。

外来で確かにそれが妥当かどうかが求められる状況でした。結果的には臨床的にも安定しており、発熱もなく、調子もよい状態だったようです。

このような思慮がないまま短期間の治療をするのは望ましくないです。十分リスクも検討したうえでの臨床判断だと思います。


SIUのAntibiogramでは、昨年検出されたEnterococcus faeciumのうち、なんと9割近くがVREとのことでした。米国のVRE蔓延は非常事態ですね。

日本ではVREの蔓延がそれほど起こっていないので、米国の轍(てつ)は踏まない見識と実践が必要です。。

明日と明後日、クリニックやコンサルテーションの現場をチームについて見学したり、リサーチの相談をしたりする予定です。とても楽しみです。


またこちらのFamily medicineのレジデンシーに3名も日本人の方がいらっしゃるそうです。