矢野(五味)晴美の感染症ワールド・ブログ

五味晴美の感染症ワールドのブログ版
医学生、研修医、医療従事者を中心に感染症診療と教育に関する情報還元をしています。

米国では「1年目レジデントは当直してはいけない」規則になったそうです。

2011-09-18 08:10:01 | 医学教育
昨夜、シカゴでお世話になっていた日本人ご夫妻と久しぶりにお電話でお話しました。

米国に20年近くお住まいで、医師としてはたらいていらっしゃいます。

レジデント教育にもかかわっているそうですが、2011年7月から、米国ではACGMEという卒後臨床研修を規制する機関の規則で、なんと、1年目レジデントはon callをしてはいけないことになったそうです。

On callとは、日本の当直・宅直に当たります。24 hour callは米国ではかなり少なくなってきておりますが、さらに当直・宅直も1年目はやらないことになったそうで、驚きました。

週の勤務時間が80時間の上限があることはご存知の通りですがこれもトレーニングへの弊害が問題になっていました。

また勤務から次の勤務の開き時間も最低10時間あけるように、との規則も加わったそうです。


朝7時出勤したレジデントは、夜9時には帰宅しなければこの10時間ルールに抵触することになるそうです。


米国で私がレジデントのころは、朝6時30分ごろ出勤して、おおよそ6時ぐらいには帰宅できていました。

医療安全の目的だと思いますが、トレーニングの質が低下すれば、医師としてのスキルや判断自体が低下することが予想され、今後、どうなるのでしょうか~。

米国は、世界経済の影響で、失業者が増え、患者も減っているそうです。失業者は医療保険を持たないため、医療機関にもかかれず、結果として患者数が減り、病院経営が圧迫されているそうです。

日本はこのようなことにならないように、しっかりとした政策が必要ですね。国民皆保険のありがたさを身にしみて感じますね。国民保険にも入れない方が増えていますが、それでも医療がここまで不平等かつ経済原理でゆがんだ米国に比べるとまだまだ恵まれています。


学会場で、ふと気がつきましたが、やはり貧困、教育、健康状態は関連していると思います。学会場のファーストフードで働いている方の大半がはやりminorityの方です。
病的肥満の方が多いという印象も持ちました。世界の問題としてなんとかしたいですね。


世界全体が高齢化しており、複数の既往歴を持った非常に合併症の多い患者さんのケアは今後、必須の状況です。医学教育が核になっていることは疑いの余地がありません。








驚きの大きな変化がいくつかありました。

2011-09-18 08:01:28 | 米国微生物学会 ICAAC
毎年、ICAACは、Breakfast, Dinner のlectureが目白押しで、しかも質が非常に高いものも多いのでそれに参加して勉強して、夜出かけることなどなかったのですが、今年はわずか3つぐらいしかDinner lectureがないのです。

世界経済と投資家の意向でしょうか。抗菌薬の開発にお金をかけない風潮がここまで広がっているとは大きな驚きでした。昨年IDSAに行ったときはそれなりの数はあったと思います。

今年のICAACの傾向としては、内容がGram negativeの占める割合が非常に多い印象です。
いくつもセッションが組まれており、どこかで必ず聞けるように配慮していますね。

以前、IDATENでも講演していただいたDr. David L. Patersonのすばらしいreviewがいくつもあります。引っ張りだこの状態です。

スライドも見やすく、大変わかりやすいプレゼンテションでぜひお手本にしたいと思いました。

米国のプレゼンターは、多くの人が非常に早口です。自分もそのペースに慣れていますが、内容が十分に伝わりきらないなあという印象を持ちました。コンテンツは優れているのですが、早口でスライドがbusyですと、十分についていけないまま終わってしまう印象です。結果として、風のように去ってしまう(忘れる)ことになります。

そうした”風のように去ってしまう”プレゼンテーションとは対極にあると感じたのがDr. Patersonのすばらしいプレゼンテーションでした。内容も話すスピードもスライドも際立ってすばらしかったです。

ワクチンのセッションもありましたが、スイスからの先生のすばらしいインターアクティブセッションにみんな満足しました。

Key Note sessionは、全員参加のため12,000ぐらいの参加者を前にしたプレゼンテーションですが、トップバッターのUKからのGNR専門の先生のプレゼンテーションは、非常に聴衆をengageするのが上手で、まったくあきない30分でした。

世界が本当にかなりのスピードで動いていることを実感します。

変化に対応する力を今以上につける必要があることを感じました。

日頃、journalを読む時間が十分取れていないことを反省しました。世界の動きを速やかにキャッチするにはjournalは最低限、目を通すことが必要ですね。