日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

思い込み

2013-06-18 15:05:01 | アラカルト

新聞各社が、「ブラジルのデモ」を取り上げている。
その記事を読んで「アレ?」と、感じたコトがある。
それは「W杯に対する反対」という内容の記事だったからだ。

中日新聞: 「W杯反対デモに20万人 ブラジル」

ブラジルと言えば、過去のW杯出場・唯一「皆勤賞」という程の、サッカー王国。
いくら欧州のクラブチームが世界を制覇しても、国別となると圧倒的な強さを誇っているのが、ブラジルだ。
当然、ブラジルの人達も大のサッカー好き!だと思いきや・・・決してそうでもないようなのだ。

この記事をよく読むと判るのは、ブラジルの食品などを中心としたインフレによる高騰があり、W杯開催の為に使われる国費が、無駄遣いであると言う考えもある様だ。

確かにW杯を開催するに当たっては、FIFAの厳しい(?)様々な条件をのむ必要がある。
例えば、スタジアムなどに関しては、最低収容人数やスタジアムの設備などについても、厳しい条件が付けられている、と聞いている。
10年余り前の、日韓大会でも開催希望をしたが、FIFAからの開催スタジアムの条件の建設ができず、断念をした自治体もあった。
その様なニュースを聞いた時、「サッカーよりも野球ファンの多い日本では、仕方無い」と、ある意味当然の結論、という受け止め方をしていた。

しかし、同じようなコトがブラジルで起きるとは思っても見なかった。
それほど、「ブラジルのスポーツ=サッカー」というイメージが定着しており、ある程度サッカーのことであれば、国民からは暗黙の了解の様に、渋々ではあっても認められるのでは?と言う、思い込みのようなものがあった。
現実は、サッカーよりも(当たり前と言えば当たり前なのだが)日々の生活のほうが重要で、日々の生活を犠牲にしてまでサッカーに熱狂はできない、と言うコトだろう。

もう一つ感じたコトは、ここ数年盛んに言われてきた「BIRCs」にも勢いがなくなりつつある、と言うコトだ。
既に中国などは、経済成長と言う部分で陰りが見え始めた、と言われ始めている。
ブラジルもその例外では無い、と言うコトだろう。
実際、新たに投資先として挙げられるようになったのは、アフリカ諸国だ。

「思い込み」というコトは、様々な発想や想像の視野を狭めてしまう。
ところが、この「思い込み」というのは、経験や知識が豊富になればなるほど、無意識になってしまう。

ブラジルW杯は、サッカー王国の威信をかけ成功させる、と思う。
ただ、今回のようなデモが起きるコトを考えると、「ブラジル=サッカー」という程単純では無く、ブラジル国内にも、様々な社会的な考えがあるのだ・・・と気づかされた。



ボーダーレスを感じた週末

2013-06-16 06:31:21 | ライフスタイル

先日、地下鉄に乗ったとき「え!」と、一瞬目を疑うコトがあった。
地下鉄を利用した時間は、夕方5時少し前=帰宅ラッシュ少し前という時間帯だった。
私が乗った車両には、大学の授業を終えた学生が沢山乗っていた。
「最近の学生さんって・・・」と、服装などを何気なく見ていた時だった。
背の高い女の子?と思って見ていたら、何と男子学生。
その男子学生は、黒のスパッツに赤と黒のストライプのワンピース風のチュニック、と言う服装だったのだ。
だからと言って、女の子のようなメイクをしている訳ではない。
腕時計なども、ごつい感じのもの。
「女装」をしていると言うのでは無く、その様なファッションを楽しんでいる、と言う感じだった。

そんな彼のファッションを見てビックリしているのは、私のようなオバサンか偶然乗り合わせたサラリーマンくらい。
学生たちは、全く気にも留めていない。
オバサンである私にとって、「男性のスカート姿」というのは、スコットランドの「バグパイプ演奏」くらいしか思い浮かばず、「何故にそのファッション?」と、不思議で仕方が無かった。

昨日、久々に土曜の午後に美容室へ行った。
ここ数日、猛暑となった名古屋。
伸びきった髪の毛をカットしたくて、普段行かない時間帯に行ったのだ。
雨が降り始めた美容室は、若い女性とそのお母様と男の子くらい。
男性が美容室に行くようになって、随分経つ。
今では、当たり前のコトになり別段驚くようなコトでは無い。
私が驚いたのは、その後美容室にこられた中年男性が、「眉毛のカットお願いします」と、言ったからだ。

最近の若い男の子は、「眉毛を整える」というコトは、当たり前のようになってきているが、それはあくまでも、若年層に限られている、と思い込んでいた。
「眉毛カット」をお願いした中年男性は、極々普通のサラリーマン風の男性。
だからこそ、「え!最近は『身だしなみ』として、眉毛を整える男性が増えてきているの?」と、驚いたのだった。

平和な日本にあって、ファッションのルールは「あって・ない」ようなもの。
特に学生であれば、その自由さは理解できる。
何より同世代の学生達は、そんな奇抜なファッションをしている男子学生のことなど、気にも留めていなかった。
驚き、チラチラ見ながら「何故?」と、訝しがっているのはいわゆるオバサン・オジサンくらい。
そのオジサンが「身だしなみ」の一環?として、美容院で「眉毛カット」をする・・・。
「ボーダーレス」ということを、実感した週末だった。


「ヒト遺伝子」は、特許となるのか?

2013-06-14 13:18:25 | ビジネス

先月、一般誌でも話題となった米国女優・A・ジョリーの「予防的乳房切除」。
現在、日本では臨床試験的な目的で予定している病院が2病院、検討している病院が複数ある様だ。
この「予防的乳房切除」というのは、「家族性乳がん・卵巣がん」の要因の一つとされる遺伝子BRCA1・2のタイプを持つ女性が、将来的に乳がんにならない様健康な状態で、乳房を切除する、と言う手術。

この「予防的乳房切除」の根拠となるのが、「遺伝子検査」。
現在日本では、この「遺伝子検査」を実施している企業は、1社のみ。
A・ジョリーが米国で受けた検査を実施している企業と提携をしている、企業でもある。
実は、この「遺伝子検査」について、米国の最高裁で「遺伝子を特許として認めるか・否か」という司法判断がされた。

朝日新聞: 「遺伝子の特許認めず バイオ産業戦略に影響 米最高裁」

「検査をして貰う遺伝子は、自分の遺伝子なのだから、当然検査をして貰う人に帰属すべきモノ。特許の対象となるのであれば、遺伝子そのものでは無く遺伝子検査の分析器やその技術的だと思われると思う。
しかし今回問題となったのは「個人から採取された遺伝子は。採取された個人のものなので、特許の対象にはならないが、検査の為に分離された遺伝子は特許として認められるべきだ、と言うのがその趣旨。
何とも「玉虫色」の内容なのだが、どうやら医療分野におけるバイオ産業への配慮がされた様だ。

記事としては単純に「バイオ産業」とされているのだが、この場合「ヒト」に限定された「バイオ関連=医薬品」と考えるべきだろう。
特に難病と言われる病気の場合、遺伝子レベルでの研究が盛んに行われており、それらの研究成果を基に医薬品が作られることが多いからだ。
もう一つは「iPS細胞」の様に、自分の皮膚細胞から他の臓器細胞を作るコトができる様になると、遺伝子レベルでの問題も発生してくる可能性があるだろう。

ただ一つ懸念するのは、「自分の遺伝子の管理」というのは、誰がするのか?と言う点だ。
病院や検査施設での取扱いには、検査後の破棄などを求める必要があるだろう。
何故なら「遺伝子」は、その人そのものだからだ。
日本では、まだまだその様な検討すらされていない状態での「遺伝子検査」。
バイオ産業の発展も大事だが、個人についても十分検討される必要があると思う。


父の日を前に・・・

2013-06-13 11:01:20 | アラカルト

昨日新聞を読んでいたら、目に飛び込んできたある写真。
父の日を前に、百貨店が特別に設置した「マネキン」の写真だった。

朝日新聞: 「薄毛・出っ腹・・・リアルすぎるマネキン 名古屋で父の日PR」

「中年のお父さんの休日」というイメージでのディスプレイと、このマネキンの何とも言えない雰囲気・・・確かに、中年のお父さんという感じがする。
顔を見ると「若い頃は。イケメンでモテたのでしょうね~」と言う感じだが、でっぷりとしたお腹は、現実感が溢れている。

このマネキンがリアルかどうかは別にして、実は百貨店や小売店に置かれているマネキンの多くには、顔が無かったり、顔の表情が判らない様にしてある。
1970年代には、日本人モデル・山口小代子さんの活躍で、日本だけでは無く米国などでも山口さん風のマネキンを多く見かけた。
それが1980年代にはいると、人種的な問題と顔があるコトで、洋服のイメージが固定化されてしまう、と言う懸念があり徐徐に顔のない、または顔の印象が薄いマネキンが主流になっていった。
マネキンと言えども、流行廃りがあるのである。

ところで今の30代のお父さんたちは、この様な体型の方は余りいらっしゃらないだろう。
この様な体型のお父さん年代というと、やはり40代後半以上というコトになると思う。
この年代のお父さんと言うコトを考えると、プレゼン購入を考えるのは中高校生以上のお子さんと奥様というコトになるのだろうか?
果たして、奥様はともかく中高校生のお子さん達が、父の日にプレゼントを用意してくれるのだろうか?
家族のイベントとなる「記念日」の中でも、「父の日」は前月にある「母の日」に比べ、意識度が低いような気がする。
「母の日」の翌月は「父の日」と判っていても、「6月第3週の日曜日」だと覚えているか?となるとどうなのだろう?
新聞の折り込みチラシなどで、「アァァァ~」と気づく人のほうが多いかも知れない。

それにしても、「父の日ギフト」の中心が、お酒・ゴルフ用品と言うのは・・・。
お酒もゴルフも関係のない、お父さんって案外多いのでは?
まして、若いお父さん達はもっと違う趣味や生活習慣がある様な気がするのだが・・・。


まず、男性から「ワーク・ライフ・バランス」

2013-06-11 18:09:04 | ライフスタイル

先日Yahooのトピックスに、「男性社員の『時短』の実態」という内容が、挙げられていた。
WEBR25: 「短時間勤務」企業の実態

安倍さんが打ち出した政策の第一弾「女性の活躍」の中に、「育児休暇3年」があった。
もちろん、この「育児休暇3年」を対象としているのは女性。
しかし、当の女性からは「育休3年」よりも保育所など、「育児と仕事の両立ができる環境の充実」を訴える声の方が大きいようだ。
子育て経験のない私でも、「育休3年」よりも「育児と仕事の両立」の方が、女性のキャリアという点や税収という点などから考えても、現実的だと思う。
経団連のお偉い方々や高齢の政治家さんたちは、そうは思っていないようだが。

一方随分前から、「ワーク・ライフ・バランス」というコトが言われている。
この「ワーク・ライフ・バランス」も、本来は男性にも関係のあるコトのようなのだが、どうも世間的には「男性は、仕事重視」という考えが根深いのか?プライベートを充実させようとする男性には、冷ややかな視線を送る雰囲気がある様に感じている。

その大きな理由として、「仕事をする=長時間働くコト」と言う、思い込みのようなモノがある様に思う。
「長時間働く=仕事をしている」というのは、案外効率が悪いと言う見方もある。
何でもかんでも「短時間で仕事をすれば良い」というわけでは無いが、やや「時間と仕事内容のアンバランス」という傾向があるのも事実だろう。
そう考えると、「ワーク・ライフ・バランス」を一番に考え無くてはならないのは、実は男性社員なのではないだろうか?

もう一つ考えなくてはならないのは、「介護」という視点だ。
育児と並んで介護は、女性の仕事と言う、意識を持っている男性は多いようだが(特に自民党のご高齢議員さんたちは)、現実は家族介護の為に職場を去る男性もいらっしゃる。
それだけでは無く、介護虐待の多くは、男性であると言うデータもある。
それまで会社=社会だった男性の場合、介護生活が始まると社会との接点もなくなる傾向が強い。

とすれば、社会との接点を保ちつつ介護をする為には、本当の意味での「ワーク・ライフ・バランス」が、必要だと言うコトになる。
「男性が、育児や介護をしやすい制度を作る」ことが、「女性の活用」にも結び付いてくると思うし、「ワーク・ライフ・バランス」という言葉とともに言われている、「ダイバーシティー」という意味でも、実現がしやすいと思う。


ニッチに特化すると、意外な市場が見えてくる?

2013-06-10 11:06:15 | マーケティング

今やスマートフォン市場は、iPhoneのappleとサムソンが主流、日本企業は見る影もなく・・・と言う状況だろう。
日本企業が躍進するコトができた「ユーザー視点」、「改善・改良」を徹底すればするだけ、携帯電話市場からは後れを取ってしまう、そんな状況が続いている。
ところが、米国の市場で気を吐いているスマートフォンがある様だ。

毎日新聞:日本発・世界のヒット商品:アメリカの工事現場で活躍 京セラ「ガテン系」携帯

写真を見ると、多少の衝撃にも耐えられそうな丈夫さを感じさせる無骨なデザインだ。
中には「ブラックベリー」風のデザインや、「ガラケー」風のデザインもある様に見受けられる。
この2機種は、既に時代遅れの様に言われている機種だが、スマートなデザインだからどんな人にも使いやすいとは限らない。使う人や使う場所によって、そのデザインや機能も違う、と言う当たり前と言えば当たり前のコトに改めて気づかされる。

もちろん、この様な「ガッテン系」は携帯電話市場の中でも、「ニッチ」だ。
ニッチな市場だからこそ、一般的に求められる機能よりも耐久性や防水性を求められ、必要とは思えない「ヘルメットの上からでも聞き取れる」とか「トランシーバー機能」などの、特有な機能が付加されるのは当然のコトだろう。

しかしこの「ガッテン系スマートフォン」、ガッテンな場面からアウトドアファンなどのユーザーが増えていると言う。
当然だろう。
防水性だけでは無く、耐寒・耐熱など、通常の携帯電話が使えない状況でも使えるのだから。

「ガッテン系」と言う括りでは、アウトドアユーザーは見えてこないかも知れない。
機能という視点で見ると、開発当初とは違うユーザー(=市場)が見えてくる。
決してこの発想はマーケティングという視点では、特別なコトでは無いのだが、忘れがちな視点でもある。
そして、視点を変えると商品の定義も変わり、市場が拡がる。
そんな好例だと思う。

残念なことは、この「ガッテン系スマホ」は米国仕様で、日本では発売されていないと言う点だ。
・・・あれ?記事を読むと、この携帯を販売しているのは「スプリント社」。
現在SoftBankが、買収を検討している企業。
と言うことは、買収に成功したら日本でも発売されるかな?

お知らせ:月1回のスケジュールで開いている「マーケティング勉強会」
       今月は今週13日(木)19:00~21:00
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       詳細は、こちら FB以外からはブログ内のメールからお問い合わせ下さい。


「フクシマ事故」の汚染水処理のビジョンが見えない

2013-06-09 21:16:22 | アラカルト

「東京電力福島第一原子力発電所事故」による、放射能汚染水の処理はこれまでトラブル続きだった。
「汚染水が漏れ、海に流出していた」と言う報道は、過去何度聞いただろう。
その度に、福島県沿岸部だけではなく隣接県の漁業関係者は、困り果てていたのではないだろうか?
それは単に「漁に影響する」と言うだけではなく、「被害が拡大し続ける」という意味でも、漁業関係者にとっては、頭の痛い問題だったのではないだろうか。

その「放射能汚染水」が、地下貯水槽から地上貯水槽への移送が完了したようだ。
中日新聞:「第1原発、全汚染水の移送完了 総量2万4千トン」

ダダ漏れ状態が解消されたのは良かったと思うのだが、問題はこの汚染水の処理だと思う。
何故なら、廃炉のため冷却し続ける為にはそれなりの水が必要で、2万4千トンという汚染水が増えるコトがあっても、減る可能性は当面無いと思うからだ。
「汚染水を冷却のために使う」と言うコトは当然だが、汚染水からセシウムなどの放射性物質を取り除く、と言う作業も同時に行い、最終的には海などへ流す必要があるのではないだろうか?
何より、配水管などの劣化で再び漏れるようなコトが起きても、漏れた水が汚染水でなければ、安心だし、作業をする人の安全性も確保されるはずだ。

と考えると、「汚染水の処理」という話が全く聞こえてこないコトに、近隣住民を感じ始めているのではないだろうか?
今回の「フクシマ事故」に関しては、東京電力はもちろん政府の考えも行き当たりばったりで、先がなかなか見えてこない。
事故当初は、前代未聞の大事故だったコトを考えれば、事故対応だけで手一杯というのは判る。
しかし、2年が経過した今、既に次ぎのステップとして「収束ビジョン」のような発表がされても良いのではないだろうか?
民間だけでは無く大学なども「放射能汚染水除去」の為の研究や器具の開発などをしているようだが、何とも「除去へのアクション」が発表されていない為に、せっかくの技術が宝の持ち腐れ状態になっているのでは?と、懸念してしまう。

GW中、安倍さんは「原発のトップセールス」に躍起になっていらっしゃったようだが、もし万が一のコトを考えれば、「フクシマ事故」を教訓とした「対応策とその為の技術」もセットとして、売り込む必要があったのでは?
その為にも、「汚染水処理の作業計画」となるビジョンの発表が必要だと思うのだ。



「アベノミクス」は、大企業に優しく、中小・個人には厳しく?

2013-06-07 15:43:28 | アラカルト

「アベノミクス」で話題の一つとなった政策として、「働く人の流動化」があった。
その「流動化」をしやすくする為?に、「限定正社員」という「正社員」とは言うものの、契約社員でもないような、それでいて「企業にとって、雇用調整がしやすそうな正社員」が提案された。

その様な提案がされた理由の一つに「企業のグローバル化を推し進める為には、海外では一般的な雇用の流動化によって、柔軟な企業組織を作る」というようなコトが挙げられていた様に思う。
この解釈は、あくまでも私なりの解釈なので、本当のトコロは違うのかも知れないのだが、世間的には「世界では一般的・世界標準」とか「グローバル化」と言われると、何となく「それなら仕方無いな~」という、雰囲気になりやすい。
本当に、海外特に米国ではこの様な「雇用の流動化」のための「限定正社員」が存在しているのか?と言うと、どうやら違うようだ。
Newsweekのコラム&ブログに↓のような内容が、掲載されていた。
プリンストン発新潮流アメリカ: 「限定正社員」構想の議論、欧米では一般的だというのは大ウソ

冷泉彰彦さんのブログを拝読すると、上級管理職や研究職の雇用の流動化は一般的で、決して今回の「アベノミクス」で提案されているような「限定正社員」ではないようなのだ。
そう考えると、この「限定正社員」の制度を強く求めている、経団連などの意向に沿った「限定正社員」という日本独自のモノと言うコトになる。

そして、欧米では「雇用の流動化」の一つの研究職者にとって、「流動し難くなる」ニュースが、今日の朝日新聞に掲載されている。
朝日新聞: 「社員の発明、会社に特許権 知財戦略案に帰属先変更方針」

青色LEDの量産化による特許を巡って、特許権の帰属が問題になったのは、10年近く前だったと思う(「青色LED」の発明は、名古屋大学(研究当時)の赤教授によるもの。この問題となった中村教授と日亜との裁判は「量産化の特許」に関するモノだった)。
この裁判が発端となり、様々な研究者・技術者が自分が勤めている企業に対して、発明の対価の支払いを求める訴訟がいくつも起きた。
企業によっては、億を超す支払いを命じられたケースもあり、企業側としては「特許権の帰属は企業にしたい」と経団連などが強く主張していた。

これが受け入れられると、研究者や技術者は「成果目標」として、特許などの申請件数を企業から強く求められるコトになるのではないだろうか?
しかも「経費節減」の名のもと「研究費」などは抑えられた状態で、成果だけを求められる可能性もある。
研究者の流動化どころか、疲弊し、日本の強みとなる事業分野も弱まってしまうのでは?と、懸念するのだ。

そう考えると、「アベノミクス」は経団連に属する大企業には優しく、中小企業や個人には厳しい政策の様に思えてくる。
安倍さんは、「10年後には年収150万円アップを目標」と言っていたが、本当に150万円アップさせる為には、経団連の希望を叶えるばかりでは無理だと思う。


「アベノミクス」効果は?

2013-06-06 18:34:48 | アラカルト

安倍さんが掲げる「成長戦略・3本の矢」、総てが発表された。
第一弾となった、「女性」というキーワードでは、既に転けたような気がする。
特に、「育休3年」と「女性手帳の製作・配布」は、多くの女性から批難の対象となった政策という気がする。
その後「女性手帳」は中止となったが、安倍さんというか政府自体が「女性の活躍」というのは「出産・育児、家事、介護+仕事も男性並に」というビジョンの様にしか思えない政策という気がしている。
何より、女性の活躍のためには、日本企業そのものが大きく変わらなくては、難しいのでは?
少なくとも経団連に名を連ねる企業の役員さんの1/4程度が、子育てを経験した女性が占める様にならない限り、無理だと思っている。

そして、第二弾の「世界で勝つ!」という成長戦略。
インフラ輸出に関しては、GW中(だったと思うのだが)に安倍さん自らトップセールスと言うコトで、経済界の皆様を引き連れての、海外遠征をされてた。
その効果だろう、トルコでは原発の建設などが決まった(と記憶している)。
しかし、トルコという国は地震が多い国だったと思うだが・・・そのような国に原発をインフラ輸出として、輸出して良いのだろうか?
「第二のフクシマ事故」を起こさない、と言う約束はできないと思ったのだが、その後「原発再稼働」の発言を聞くと、何となく納得できた。
問題は、そこに「トルコ国民の気持ち」などに配慮した「インフラ輸出」だったのか?と言う点だと思う。
確かにトルコは親日国として有名だ。
むしろ親日国だからこそ、もっと配慮すべきインフラ輸出だったのでは?

そして昨日、第三弾として「民間活力の爆発」という発表があった。
発表直後から株価が急落したのは、この政策に対して市場が「がっかりした」というコトなのだろう。
「法人減税が、発表されなかった」というコトも要因のようだが、今法人減税をしても減税分が給与に反映されたり、設備投資に回ると言う可能性は薄いのではないだろうか?
何より「民間活力」は、民間の中心である企業が主体的に考えることであって、政府ができるのは「規制緩和」くらいなのではないだろうか?
その「規制緩和」も様々なしがらみがあって、選挙での大票田となる分野の規制緩和というのは、なかなか進むモノではないと思う。
小泉政権時代に行った「規制緩和」で、タクシー業界などは逆に過当競争となり、業界全体からみれば、決して「規制緩和をして良かった」という結果にはなってはいないのでは?

いずれにしても、「絵に描いた餅」で終わらない為には、何をすべきか?と言う具体的方策が大切、と言うコトを株価の急落が言っていると言う気がする。


何故、日本では無かったのだろう

2013-06-04 15:33:46 | CMウォッチ

今日の朝日新聞に、トヨタが広告を出している。
それも、真ん中両面+一面という、相当大掛かりな広告だ。
広告のタイトルは「TOYOTOWN」
サイトも今日の21時に本格的に動き出すようだ。
TOYOTOWN(注意:音声あり)

予告CMだけでは無く、今日掲載された広告でもアメリカの郊外の住宅地をイメージするような、ロケ地が使われている。
日本の様に、マンションが林立しその間を埋める様に、似た様な戸建て住宅が並んでいる、そんな光景とは全く違う、雰囲気を漂わせている。

確かに、とても綺麗な住宅地風景だと思う。
そして、トヨタのハイブリッド車が日本だけでは無く、アメリカでも人気と言うコトも知っている。
広告を見ると、人の暮らしとハイブリッド車が共存できる環境の、一つのモデルという気がしない訳でも無い。
そして、お金も時間も掛けた広告だと思う。

ただ、個人的な感想を言わせてもらえば「何故ロケ地が日本では無かったのか?」というコトだ。
例えば、東日本大震災に見舞われながらも、悠久の美しい自然が残って場所はあるはずだ。
そんな所に、さりげなくハイブリッド車が静かに走る・・・と言う光景は、アメリカの整った住宅地とはまた違った、共感性があるのではないだろうか?
むしろ、自然と共存しながら復興しつつある、東北の姿を丁寧に映し出した方が、トヨタが展開をしている「Re BORN FUN TO DRIVE, Again.」(注意:音声あり)との関連性もあり、トータルとして訴えるモノがあったのではないだろうか?
何より、その広告を通して、トヨタが思い描く「(日本の企業としての)今と未来のモータリゼーション」を世界に発信できたのでは?

そう考えると、綺麗に整えられた住宅地風景の広告が、とても人工的な美しさのような気がしてくるのだ。
せっかくのハイブリッド車の広告でありCMなのだから、人工的な美しさよりも自然の美しさの中に佇む方が、訴求性があったような気がする。