日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

「24時間戦えますか」は、もう古い?!

2016-10-15 21:13:36 | 徒然

最大手の広告代理店である、電通に労働基準監督署の立ち入り調査が入った。
中日新聞:過労死自殺、電通に立ち入り調査 労働局、長時間労働常態化か

既に、ニュースなどで報じられている内容なので、拙ブログで説明をする必要はないと思う。
そして、この事件の前にも電通は、過労死自殺で遺族から損害賠償を請求されている。
厚労省「こころの耳」:長時間労働の結果うつ病にかかり自殺したケースの裁判事例(電通事件)

厚労省のメンタルヘルスケアのサイトで、紹介されているということは、この事件が発覚した時の社会的衝撃度は、とても強かったのだと思う。
事件があったのは1991年で、バブル経済が崩壊し始めたころだ。
この事件が起きる少し前、巷では「24時間戦えますか」というキャッチコピーと共に、栄養ドリンク剤が売れていた時期でもあった。
まさに、当時は「長時間働いて、なんぼ」という社会的雰囲気がある中での事件でもあったのだ。
それだけではなく、「上司が残っているのに、部下が先に帰るのは気が引ける・・・(または、逆に部下が残っているのに上司は帰れない)」という、組織内における「縦関係」に縛られ、「なんとなく残業」が横行していた時代でもあった。
もちろん、自殺をするまでに追い込まれた方のように「本当の長時間勤務」が常態化していたのも事実だった。

それから、20年以上たっても様々な職場で「長時間労働の常態化」は、変わっていないような気がする。
もしかしたら、今のほうがもっと酷いのではないだろうか?

その背景には、「労働形態の変化」もあるだろう。
正社員の数を減らし、非正規雇用の社員を増やすコトで人件費を減らしてきた結果、職務上責任のある仕事は数少ない正社員に集中するようになる。
しかも「促成栽培」のように、新人であっても試用期間が終われば、それなりの責任を負わされるようになってしまっているのでは?
日本の企業の多くは、学生時代に学んだことを活かした職業に就くことはあまり無い。
むしろ、企業が社員を「その企業にあった人材に育てる」という、社会風土がある。
しかし、その古い社会風土を残したまま、人材を育てる前に使い捨てるような企業が企業規模に関係なく、増えてきている結果のような気がするのだ。

もう一つこの事件で注目したのは、自殺をした女性が配属されていた部署だ。
彼女が配属されていた部署は、WEB関係だった。
先日、電通はこのWEBの広告で不正請求をしていた、という事件が発覚したばかりだ。
Infoseek News:電通の広告料不正請求は今に始まったことではない
偶然かもしれないが、電通そのものがWEB広告という事業分野に、苦しんでいたのでは?
それはこれまでのような広告(=テレビや新聞・雑誌などの媒体での広告)とは、まったく違う新しい媒体であり、電通がこれまでの「常識」と思い込んでいた、「常識」が通じなくなってきている分野の広告でもあるからだ。

電通には「鬼十則」と呼ばれる、社訓(?)がある。
「鬼十則」そのものが、時代の変化から後れを取ってしまっているのでは?
今の社会が求めているのは「24時間戦う(=24時間働く)」ような社会ではないし、高齢化社会に向かっている日本には、土台無理な話なのだ。