新人女性の過労自殺を受け、電通が午後10時に消灯した、というニュースがあった。
毎日新聞写真:電通:午後10時に全館消灯 過労自殺受け残業抑制策
毎日新聞のWEBサイトでは、動画も掲載されていて時報とともに次々と各フロアーの照明が消されているのが、よくわかる。
確かに、女性が恒常的長時間の勤務により過労状態であった、ということには間違いないと思うのだが、残業抑制策として「午後10時消灯」というのは、どこか違うような気がしている。
むしろ、根本的な解決策から目をそらしているのでは?という、気がするのだ。
というのは、彼女を自殺に追い込んだのは、恒常的長時間勤務による過労だけだったのか?という疑問が残るからだ。
一部報道では、上司からのセクハラやパワハラを受けていた、という指摘がある。
恒常的長時間勤務を強いて思考力が低下している時に、セクハラやパワハラを受ければ、誰だって精神的ダメージは感じている疲労感以上に大きく強いはずだ。
とすれば、恒常的長時間勤務よりも先に是正する必要があるのは、セクハラやパワハラが当たり前になっている、社風(=企業文化)を変えることではないだろうか?
「社風を変える」ということは簡単なことではないが、変えなくては社会から必要とされなくなってしまう、くらいの危機感を持つ必要があると思う。
もう一つは、クライアント側から「金曜日の夜に修正、月曜日納品」という、無理難題な要求があった、という話もある。
実際、広告代理店(と言っても私が経験したのは、下請けの孫請けくらいの規模だったが)に丸投げをして、納品寸前に「あ~~~、ここ変えて」と、平気で言ってくるクライアントがいたことも確かだ。
クライアント側も、「広告」の目的や意味やチェックなどを、仕事の進捗に合わせてシッカリ確認を必要がある、と考えている。
なぜなら、「広告を出す」ということは、クライアントとなる企業のイメージや商品を社会に訴えかけることだからだ。
広告代理店というのは、あくまでも「広告を出す黒子」でしかない。
「広告そのものを出したら、広告を出した企業に大きな責任が掛かってくる」というくらいの意識を、クライアント側は打ち合わせの時から持つ必要があると感じている。
クライアント側として仕事をしてきた経験から、「企業の広報や広告担当者は、代理店以上に社会の動きや変化に対して敏感でなくてはならない」と思っていたし、それが仕事だと考えてきた。
何よりも「仕事の内容を見直す」ことが、一番重要なのではないだろうか?
「その仕事、本当に必要ですか?他の人に任せたほうが良いのでは?」という、問いかけを本人だけではなく周囲も考える必要があるのではないだろうか?
バブルが崩壊し、日本の企業は「成果主義」という査定を個人に与えるようになってきた。
しかし、「個人でできる仕事」というのは限りがあり、結局のところ「チームで仕事をする」ほうが、成果が上がることのほうが多い。
「一人でなんでも抱え、能力オーバーになっても声を上げることができない職場」であれば、長時間労働を強いるだけではなく、限界を超えた精神的なダメージを恒常的に持ち続けることになる。
その部分を、見直さずに残業時間を減らすだけでは、過労自殺の問題解消にはならないと思うのだ。