子供の時の話である。父と母が楽しそうに旅行の話をしていた。と思ったら、いつの間にかケンカになっていた。母が、四国の鍾乳洞を見てみたいと言って、父が、そんなもの見てもしようがない、と腹を立てたのがきっかけだった。なぜそのようなことでケンカになるのかはなぞだったが、「鍾乳洞などつまらない」という父の主張は一理ある、と今は思う。
まったく、鍾乳洞など、「只の穴」である。山口県秋芳洞の「百枚皿」は見ごたえがあるが、なにもないのに観光地にしている鍾乳洞など、たしかに行くだけ無駄なのだ。そこに怪人でも現われるというなら行く価値もあるかもしれないが。
だからヨロン島で
Aさん「今日やすみ? じゃあ鍾乳洞行ったらいいよ」
Bさん「うん。是非行くべきだ」
と勧められたときにも、僕は行く気はなかった。鍾乳洞なんてどこにだってあるし、あれはただ穴があるだけ。おもしろいものじゃない。
だが時間がぽっかり空いてみると、やることがない。AさんBさんの言葉をおもいだして行ってみることにした。ヨロン島の赤崎鍾乳洞だ。入園料は500円。
内容は予想どうり。期待していないので、がっかりもしない。まあ、こんなものだろう。
中に入ると前の客がガイドの爺さんの話を聞いている。僕がそこに行って1、2分でそのガイドの話は終わった。その客たちは奥へ移動した。ガイドの爺さんはそのまま。ん? あれ? オレには説明してくれないの? おい、じじい!
と、待っていると次の団体客がやってきた。若い女性4人連れだ。明るい。にぎやかに「写真を撮ろう!」と言っている。「あすいません、写真おねがいしまーす」 ガイドのじじいがにこやかに女性からカメラを受け取った。
僕はそれをつったって見ている。するとじじいは何をおもったか、僕に気づいて、「よし、君!」と言った。「は? オレ?」 僕が近づいていくと、じじいはカメラを差し出して「君に撮ってもらおう!」
オレ「えっ(なんで)?」
じじいは4人の女性の横に並び、僕はそれを写真に撮ったのであった。とっても嬉しそうに4人の若い女たちと一緒に写真に写るじじい。
写真を撮り終えたあと、じじいは元気に女たちにガイドを始めた。
「 … 」
僕はあほらしくて聞いておれず、奥へ行った。しかし「奥」といっても、ほとんど奥はなかったのだが。
それが僕のヨロン島鍾乳洞観光のすべてである。
あれは、なんだったのか? あのじじいのギャグなのか?
AさんBさんの場合はこうだ。
彼ら二人が行ったとき、客はほとんどいなかった。二人が鍾乳洞に入ると、突然、真っ暗になった。えっ、なに? と、二人は思った。
「停電!?」
数分して「やあ、すまんすまん」とじじい。ガイドのじじいが冗談で照明を消したらしい…。
…これもサービスのひとつなのか?
だったら僕へのアレも、あの怪老なりのサービスだったのか? まあ、ふつうに鍾乳洞見るだけよりはよかったかもな。今となってはな。
「ふざけたじじいだ」 AさんBさんはこの怪しいじじいを見に行けと僕に鍾乳洞をすすめたのだった。
まったく、鍾乳洞など、「只の穴」である。山口県秋芳洞の「百枚皿」は見ごたえがあるが、なにもないのに観光地にしている鍾乳洞など、たしかに行くだけ無駄なのだ。そこに怪人でも現われるというなら行く価値もあるかもしれないが。
だからヨロン島で
Aさん「今日やすみ? じゃあ鍾乳洞行ったらいいよ」
Bさん「うん。是非行くべきだ」
と勧められたときにも、僕は行く気はなかった。鍾乳洞なんてどこにだってあるし、あれはただ穴があるだけ。おもしろいものじゃない。
だが時間がぽっかり空いてみると、やることがない。AさんBさんの言葉をおもいだして行ってみることにした。ヨロン島の赤崎鍾乳洞だ。入園料は500円。
内容は予想どうり。期待していないので、がっかりもしない。まあ、こんなものだろう。
中に入ると前の客がガイドの爺さんの話を聞いている。僕がそこに行って1、2分でそのガイドの話は終わった。その客たちは奥へ移動した。ガイドの爺さんはそのまま。ん? あれ? オレには説明してくれないの? おい、じじい!
と、待っていると次の団体客がやってきた。若い女性4人連れだ。明るい。にぎやかに「写真を撮ろう!」と言っている。「あすいません、写真おねがいしまーす」 ガイドのじじいがにこやかに女性からカメラを受け取った。
僕はそれをつったって見ている。するとじじいは何をおもったか、僕に気づいて、「よし、君!」と言った。「は? オレ?」 僕が近づいていくと、じじいはカメラを差し出して「君に撮ってもらおう!」
オレ「えっ(なんで)?」
じじいは4人の女性の横に並び、僕はそれを写真に撮ったのであった。とっても嬉しそうに4人の若い女たちと一緒に写真に写るじじい。
写真を撮り終えたあと、じじいは元気に女たちにガイドを始めた。
「 … 」
僕はあほらしくて聞いておれず、奥へ行った。しかし「奥」といっても、ほとんど奥はなかったのだが。
それが僕のヨロン島鍾乳洞観光のすべてである。
あれは、なんだったのか? あのじじいのギャグなのか?
AさんBさんの場合はこうだ。
彼ら二人が行ったとき、客はほとんどいなかった。二人が鍾乳洞に入ると、突然、真っ暗になった。えっ、なに? と、二人は思った。
「停電!?」
数分して「やあ、すまんすまん」とじじい。ガイドのじじいが冗談で照明を消したらしい…。
…これもサービスのひとつなのか?
だったら僕へのアレも、あの怪老なりのサービスだったのか? まあ、ふつうに鍾乳洞見るだけよりはよかったかもな。今となってはな。
「ふざけたじじいだ」 AさんBさんはこの怪しいじじいを見に行けと僕に鍾乳洞をすすめたのだった。