中野京子の「花つむひとの部屋」

本と映画と音楽と。絵画の中の歴史と。

「運命の車輪の激しい回転」

2011年03月22日 | 
 この途轍もない大震災で、近親者や友人を心配して連日テレビばかり見ています。
誰もが多かれ少なかれ、そういう状態にあるのではないかと思います。

 そんななか、次第に被災者の声が直接聞こえてくるようになりましたが、皆さん一様に、自分は大丈夫だ、心配しないで、と、真っ先に相手を思いやる言葉を発するのに、胸がぎゅっとなってしまいます。

 戦国時代、フロイスと同時代人のイエズス会士ヴァリニャーノ(イタリア人)が、日本人とはどういう人間か、ということをローマへ報告しています。

「強大だった領主が自国を追放され、はなはだしい窮乏と貧困を耐え忍びながら、まるで何も失わなかったかのように平静な態度で安らかに暮らしているのをたびたび見かける」

「日本人は、心の中にある感情を抱いてもそれを外に表さず、怒りや憤りを抑えている。平然と立派な態度で運命を甘受する」

「不平不満を並べない。相手に不快の念を起こさせるようなことは言うべきでないと思っている」

「逆境にさいして大いなる勇気を示し、苦悩を胸にたたんでおく。そして人と接するときはいつも明るい表情をし、自分の苦労については一言も触れないか、あるいは何も感じないか、少しも気にしていないかのような態度をとる」

「貧困は日本人を罪悪や賤しさに駆り立てない」

「他の国民に見られるような、節度を越えた憎悪や貪欲をもたない」

「しかし運命の車輪がこの国ほど激しく回転するところを見たことはありません。いったい将来を誰が予見できるでしょうか?」

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~お知らせ~
1) 3月31日に予定していた高島屋セミナーでの講演は、会場側が安全を考慮して、今回は中止ということになりました。予約してくださっていた方々にお詫びいたします。またの機会にぜひ!

2)「オール讀物」4月号から新連載が始まりました。「絵画で読みとく聖書」です。第一回はミケランジェロ。


☆新刊『中野京子と読み解く 名画の謎 ギリシャ神話篇』(文藝春秋)

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目次

Chapter 1 ゼウスをめぐる物語
☆官能のダナエ(レンブラント『ダナエ』/クリムト『ダナエ』)
☆「英雄」誕生(ティントレット『天の川の起源』)
☆卵から生まれた双子(セスト(ダ・ヴィンチ模写)『レダと白鳥』)
☆みんな女のせい?(クーザン『エヴァ・プリマ・パンドラ』)

Chapter 2 ヴィーナスをめぐる物語
☆ヴィーナスのあっけらかん(ティントレット『ウルカヌスに見つかったヴィーナスとマルス』)
☆男のピグマリオン幻想(ジェローム『ピグマリオンとガラテア』)
☆合体欲求(スプランゲル『ヘルマプロディトスとサルマキス』)
☆女性アスリート(レーニ『アタランテとヒッポメネス』)
☆女の第六感(ルーベンス『ヴィーナスとアドニス』
☆春がいっぱい(ボッティチェリ『春(プリマヴェーラ)』)

Chapter 3 アポロンをめぐる物語
☆恋人を死なせて(ブロック『ヒュアキントスの死』/ティエポロ『ヒュアキントスの死』)
☆「時の翁」の伴奏で(プッサン『人生の踊り』)
☆親の心、子知らず(ルーベンス『パエトンの墜落』/伝ブリューゲル『イカロス墜落のある風景』)
☆冥界からの帰り道(コロー『冥界からエウリディケを連れ出すオルフェウス』/モロー『オルフェウス』)

Chapter 4 神々をめぐる物語
☆母の執念(レイトン『ペルセポネの帰還』)
☆勝ち目のない闘い(ベラスケス『織り女たち』)
☆乙女の怒り(ブーシェ『水浴のディアナ』)
☆我に溺れて花となる(カラヴァッジョ『ナルシス』)
☆紡いで、測って、ちょんぎる(ゴヤ『運命の女神たち』)
☆電撃的!(ティツィアーノ『バッカスとアリアドネ』)


☆「残酷な王と悲しみの王妃」(集英社) 2刷中。
 レンザブローで本書についてインタビューが載っています。お読みくださいね!⇒ http://renzaburo.jp/(「特設サイト」をクリックしてください)

残酷な王と悲しみの王妃

 
☆「『怖い絵』で人間を読む 」(NHK出版生活人新書) 7刷中。

「怖い絵」で人間を読む (生活人新書)

☆光文社新書「名画で読み解く ブルボン王朝12の物語」3刷中。

名画で読み解く ブルボン王朝 12の物語 (光文社新書 463) 


☆「名画で読み解く ハプスブルク家12の物語」(光文社新書)14刷中。

名画で読み解く ハプスブルク家12の物語 (光文社新書 366)

☆「怖い絵」16刷中。

怖い絵

☆「怖い絵2」、9刷中。

怖い絵2

☆「怖い絵3」 6刷中。

怖い絵3


☆「危険な世界史」(角川書店) 5刷中。
危険な世界史


「おとなのためのオペラ入門」(講談社+α文庫)
おとなのための「オペラ」入門 (講談社プラスアルファ文庫)

☆「恐怖と愛の映画102」(文春文庫)
 
 恐怖と愛の映画102 (文春文庫)

☆「歴史が語る 恋の嵐」(角川文庫)。「恋に死す」の文庫化版です。

歴史が語る 恋の嵐 (角川文庫)

コメント (2)
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