恩師のご著書「真理を求める愚か者の独り言」より
第四章 「思い変え」こそ幸せの扉を開ける鍵
◆指をとられて自殺した方と腕をもがれて感謝した方◆
先の続き・・・
彼女にお話をさせていただきました。
「つらいのはよくわかります。私は両目が見えますから、
私にはあなたの悲しみがわからないとあなたは思うでしょう。
ただ、悲しい悲しいと毎日泣いて暮しているのも一つの現実です。
しかし、悲しい、悲しいと泣いていてもそれは何の役にも立たないはずです。
その女性はワイヤロープの製造工場に勤めていたのですが、
ワイヤの一本の針金の先の尖ったところが突き刺さって失明してしまったそうです。
全身の面積から考えても、よりによって目の瞳孔にワイヤの先が突き刺さるという
惨事はよほどわずかの確立で起きたとしか考えられず、たいへん不運だったとも言えます。
また、次のようにお話させていただきました。
「あなたは失われた片目に心をとらわれています。
しかし、もう十センチも長いのが飛んできて両目をピシッとやられていれば、
今どころではないはずです。
両方見えなくなります。
そうなれば、どんなに不自由かわからない。
そこで、残ったほうの目に心を向け換えなさい。
これからつらい時があれば、
こうして片目を助けてくださいまして有難うございますという気持ちで
感謝に心を向けて下さい」
賢い方だったのでしょう。
よく理解してくださり、それから一週間ほど過ぎて、
にこにこ笑って本当に幸せそうな女性になって訪ねていらっしゃいました。
わたしはおつきあいは多いのですけれど、一度お会いした方のお顔はよく覚えています。
あの時の腰はいかがですかとか、あの時こうおっしゃいましたね、
などと必ずお話ができます。
それなのに、その時ばかりは、どうしても相手が誰だったのかが思い出せず、
「初めてですか」とお聞きすると、恥ずかしそうに笑いながら、
「いや、このあいだまで泣いていましたから」とおっしゃるのです。
喜びに満たされて、お顔までまったくの別人になってしまっていたのでした。
~ 感謝・合掌 ~