経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

公開セミナーのお知らせ

2007-10-08 | お知らせ
 今月31日に日本IT特許組合の主催の公開セミナー
「ITベンチャー、経営者のための知財戦略」~ここがポイント、ITベンチャーの知財戦略~
が開催されます。メインスピーカーには、「奉行シリーズ」のOBC・和田社長が登壇されます。上場後も成長を続けるベンチャー企業のトップが知財についてどのようなスタンスで取り組んできておられるのか、「知財実務家」でも「知財評論家」でもない本物のビジネスパーソンの貴重なお話を伺える機会で、私も大いに楽しみにしております。
 おしまいのほうで、「知財屋」である私からは、IT(ソフトウエア)ベンチャーの知財戦略(主として特許)についてお話をさせていただく予定です。
 ソフトウエアビジネスで特許戦略といっても、特許をとって実際にどのように役に立つのか、実感としてピンとこないという方が多いのではないかと思います。教科書的な「独占権」という考え方にとらわれず、ソフトウエアビジネスに特許が必要なのか、特許が使えるとすればどういう考え方が有効なのかについての考え方をお話させていただきたいと思います。

バラマキ政策のイノベーション

2007-10-07 | 新聞・雑誌記事を読む
 先週末の日経金融の「複眼独眼」というコラムに、「2つのバラマキ政策」という記事が掲載されていました。先の参院選で民主党が掲げた農家へのバラマキ政策案を「政策イノベーション」と評しており、何が一体イノベーションなんだろう、と思ったのですが、要するに次のような話です。

 これまでの自民党の地方振興策は、公共事業という建設事業者へのバラマキを通じた間接的なものであった。よって、鉄やコンクリートが無駄に使われて、森林や田園を破壊してしまう。これに対して、農家への直接バラマキ政策は、無駄も自然破壊も生まない。その部分が「イノベーション」であり、自民党はまだその意味に気付いていないのではないか。福祉行政も同様で、福祉事業者にバラまくから官と事業者の癒着が生じ、福祉事業者を肥大化させてしまう。これも同様に、福祉を受ける人に直接バラまけば、不祥事も削減できるのではないか。

 なるほど、政策的に何かを振興・助成したい場合には、中間事業者に対して間接的に助成を行うのではなく、振興・助成の対象である当事者に直接バラまくのが無駄がなく、不正の温床にもなりにくいということですね。知財に対する政策助成はまだまだ規模の小さいものであり、個人的には経済的なオプションである知的財産権の取得に政策支援は馴染まないとは思いますが、政策的に支援が必要な場合には、事業者への直接支援が望ましいということかもしれません(知財について間接支援というのはそもそも考えにくいかもしれませんが)。 

知財から企業を見るか・企業の中の知財を見るか

2007-10-04 | 新聞・雑誌記事を読む
 商工中金が知財に着目した融資に力を入れているようです。本日の日経金融新聞によると、横浜市、堺市と提携した低利融資制度を開始したとのこと。前者は横浜市の「横浜価値組企業」認定(特許権等から認定するとのことですが、今の社会のトレンドの中で「カチグミ」はちょっとセンスが?と思いますが・・・)上位ランク企業を対象に、後者は堺市が事業性の優位性を評価したした企業を対象に、低利融資を行うとのことです。
 この記事から詳細はわかりませんが、たしかにこれまで金融機関の融資では「知財」というものを殆ど見てこなかったので、これに注目しようという傾向は大いに歓迎すべきことだと思うのですが、
 知財から企業を見るか(インサイド・アウト)
 企業の中の知財を見るか(アウトサイド・イン)
いずれのスタンスでアプローチするかということも重要なのではないかと思います。知財は企業を構成する一要素であり、どんなに優れた知財があっても、その他の部分に大きな懸念があれば融資債務の確実な償還という目的に対して懸念が生じるわけですから、当然ながら原則は「アウトサイド・イン」(=企業の優位性が知的財産権によってどのように保護されているか)ということになると思います。

投融資実務の決め手「知的財産」の分析手法
土生 哲也
中央経済社

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仕事をたくさん出して欲しい。そういう知財人には縁のなさそうな新会社です。

2007-10-01 | その他
 ベンチャー企業の知財業務を支援する際には、
知財業務のポイントはクレヨンでつける。
として、その企業が伸びていく強みをできるだけシンプルに把握し、その強みを強化するような知財業務を進めていくべき、ということを以前の記事に書きました。

 ベンチャー企業とは対極にありますが、本日からスタートした日本郵政グループのキャッチコピー(正確にはコーポレートスローガンですが)が、なかなか強烈で目を惹きます。
 「お金をたくさんもうけたい。そういう人には縁のない銀行です。」
 「むずかしい保険は、未完成な保険だと思う。」
 要するに、シンプルな金融商品のみをヒューマンタッチで扱うのがコア・コンピタンスということなので、知財屋の出る幕はあまりなさそうなビジネスモデルのようですね。NTT、JRは見事に変貌を遂げましたが、さて、このビジネスコンセプトの将来や如何。