経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

中小企業のための「ランチェスター知財戦略」?

2007-06-27 | 知財発想法
 中小企業の知財戦略について論じられることが多くなっています。「知的財産サロン」にも連載記事が掲載されていますが、本日の記事にもあるとおり、お金も人もしっかりかけてくる大企業に対して、リソース不足の中小企業はどうすればよいのか、という課題が常に大きな壁として立ちはだかります。この記事では、大企業を戒めるいささかキリスト教的な結論になっていますが、現実的な問題として、中小企業としては自ら主体的にとり得る方策を考えていかねばなりません。

 ちょっと逆説的になりますが、大企業に対抗できる知財戦略ということを追い求めると、結局のところリソースの問題からなかなかゴールに辿り着くことができないので、むしろ「知財戦略で勝つ」ということをあまり意識しすぎないという考え方もあるのではないでしょうか。最近「ランチェスター戦略」に関する本を読んでいて、やはりそうだなと思うのですが、中小企業の大企業に対する最も一般的な勝ちパターンは「一点突破戦略」です。大企業より優位に立つことを知財戦略に依存するのではなく、「一点突破」という事業戦略で優位性を築き、大企業にとって自分でやるよりも中小企業にやらせたほうが効率的(よって知的財産権を使って中小企業を潰しにいってもしょうがない)という状態を作り出すことができればベストなのではないでしょうか。特許などの知的財産権に関しては、そこで大企業に勝つというよりも、致命傷となるような穴を作らないように気をつけておくというイメージです。知財戦略も「一点突破」で勝てるのではないかという考え方もあるかもしれませんが、実際に知財の戦いで勝ち抜こうとすると、知財に固有の特許戦術・訴訟戦術やそれなりの費用や時間が必要になってくるため、分野を絞ったからといって大企業に伍していけるという性格のものでもないように思います。

 まだあまり考え方がまとまっていないし、ちゃんとした裏付けのある話でもないのですが、このテーマについては何らかの発想の転換が必要なのではないかと思います。

ランチェスター戦略「一点突破」の法則

日本実業出版社

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2 コメント

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Unknown (かつての知財部員)
2007-06-28 01:06:44
 別件でもコメントさせていただきましたが、このテーマ(一点突破戦略)も当然のことでしょう。そのような考え方がある、という意味で、特に驚くことでもないということです。中小企業が知財戦略で大企業に対抗できないのはリソースの問題ではありません。「リソースがあれば対抗できる」というのは誤った考え方です。現実は、大企業との取引関係などのウェイトの方が大きいのではないのでしょうか?優れた技術を持ち、それを知的財産権として確保した場合は中小企業であっても大企業に対抗することは十分可能です。その場合、大企業は知財で潰そうと思うことを諦めるのではなく、そもそも知財では対抗できないのです。「まず知財ありき」という考え方には大いに疑問を感じます。
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Unknown (土生)
2007-06-28 02:59:31
かつての知財部員さん、
こちらにもコメントありがとうございます。
少し話題がずれますが、最近、「知財で成功している中小企業」を紹介した書籍が発売されました。かつてベンチャーファイナンスに長く携わった関係で、ベンチャー企業の世界には詳しいほうだと思うのですが、知っている会社は1、2社程度しかありませんでした。また、新興市場や新聞紙面を賑わせている「元気な新興企業」とも、全くといっていいほど重なっていません。もちろん、マーケットが全てではないのですが、このあたりにも、一般の経済社会と知財から見た世界に存在するギャップを感じます。
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