経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

課金の方法を考え始めた途端サービスは利用者本位でなくなってしまう

2007-12-05 | 新聞・雑誌記事を読む
 本日の日経新聞の第二部にグーグル日本法人村上社長の講演録が掲載されています。グーグルが成功した3つの主要因として、
 ① サービスの無料提供
 ② 技術力の高さ
 ③ 広告モデル
を挙げています。特に興味深いのが①で、「課金の方法を考え始めた途端、サービスは利用者本位でなくなってしまう」とのことです(それを補うものとして③があるわけですが)。我々のような知財サービス業者にも考えさせられるテーマです。
 「利用者によりよいサービスを提供することによって、サービス提供者は他から得られる収入が多くなる」という事業構造(グーグルに限らず広告収入依存型のビジネスであれば同じ構造ですが)がグーグルの本質であるとすると、知財サービスにおいて同じ事業構造が成り立ち得るのか。あるとすれば、「クライアントの株式を保有し、よりよい知財サービスの提供によって企業価値を高めてキャピタルゲインを得る」というビジネスモデルでしょう。
 しかしながら、多くの場合知財サービスの提供者は投資のプロではありませんから、キャピタルゲインをあてにする事業モデルは現実性に欠けます。おまけに、上場会社であればインサイダー取引にも十分に留意する必要があります。
 そこで、前から思っているのは金融ビジネスと何とか融合する方法はないだろうか、ということです。
 VCが知財予算に紐付けてベンチャー企業に投資し、知財サービス業者はその予算からフィーを得て企業価値向上のためのサービスに努める。VCがめでたくキャピタルゲインを得られれば、次の案件でも同じ知財サービス業者を指名する。
 銀行(おそらく地域金融機関が適任)が知財予算に紐付けて中小企業に融資し、知財サービス業者はその予算からフィーを得て企業の競争力を保全するためのサービスに努める。銀行にとって債権保全策として有効でれば、次の案件でも同じ知財サービス業者を指名する。
 こうしたビジネスモデルを実現するためには、ベンチャーキャピタリストやバンカーに対して広く知財に関する基礎知識(特許法が~といったものではなく、特許はどういう場面で活きるものかetc.の知識)が求められます。といった問題意識から、できるだけ金融セクターに知財を伝える活動に取り組んでいきたいと思っています(年明け頃に金融向けの新著を上梓予定です)。とはいいながら、実は一番の問題は、我々知財サービス業者が企業価値の向上、競争力の保全といった課題に対して、ちゃんと実績をあげていくことなのですが・・・