経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

中小企業の知財戦略

2007-03-22 | 知財発想法
 「知的財産の定義と知的財産戦略」の記事で、「知的財産」をどのように定義するかによって「知的財産戦略」の意味が異なってくる、ということを書きました。フジサンケイビジネスアイの「知的財産サロン」に「中小企業の戦略を考える」という連載を見つけたのですが、この記事では「知的財産権で独占権が保証された技術=知的財産」を前提としています。
 このような前提に立つと、「特許権で独占できる領域をどうやって押さえるか」が「知財戦略」となってくるので、この記事にあるように、

中小企業の場合、大企業等からの開発・製造依頼などを受注する形態が多い。

「大企業は発注した案件について技術や知財をすでに調べつくしており、中小企業が独自に知財を獲得する余地は少ない」

「自社の独自性が発揮できるニッチな技術分野の中のさらにニッチな所に、中小企業は独自の領域を探すことになる。当然、その領域には確たる顧客が見えていることが前提」

という筋道で「知財戦略」を考えることになってきます。

 これに対して、「知的財産権で保護できる対象となり得る技術=知的財産」と捉えるならば、

中小企業の場合、大企業等からの開発・製造依頼などを受注する形態が多い。

「大企業は内製せずにどうして当社に発注するのか?」=「当社ならではの優位性は何なのか?」

「当社の優位性が将来的に失われることはないのか?」「当社の優位性を保護する手段として特許権を取得する余地はないのか?」

という筋道で考えるのが「知財戦略」ということになります。

 どちらの考え方も、いろいろなところで「知財戦略」として説明されているので、その違いを認識しておかないと議論がちぐはぐになってしまいます。特に、中小企業経営者が混乱してしまっては困りますので、自社のやりたいことがどちらの考え方に沿ったものなのか(オリジナルの製品で新規事業を起こしたいのか、既存事業の地位を強化したいのか)を意識した上で「知財戦略」を考えることが必要と思います。