30年前の、リマ市は、とにかく異様な臭いが立ち込めていた。
メイン通りの脇では、大道商人が軒を連ねて、店を開けていた。
洋服から、日用品、屋台の食堂まであった。油であげた魚、お菓子、なんでもあったが、臭いには辟易した。
公衆トイレがないので、みんなその辺りで用をたす。
雨が降らないので、臭いはいつまでも消えない。
そんな中心街に、東京銀行のリマ支店があった。
日経新聞の、ペルー新報社もあった。
公園はたくさんあったが、中を散歩することはできなかった。
犬の糞、人間のもの、区別はつかない。
治安は最悪で、スリ、強盗の類は、みる人みんながドロボーに見えた。
当時、首都リマは、こんな感じだった。
富裕層が生活する地区だけが、一種隔離されたように綺麗だった。
それでも臭いには垣根はないから、どこでも侵入してくる。
感心したのは、外は汚物やゴミがいっぱいだったが、家の中は、ピカピカに磨いてあることだった。
それは貧民層でも同じだった。
質問してみると、だれもが汚さや不潔さを嫌っていた。
今は昔か、もう悪臭はしないし、あの夥しい店もない。
道路は清掃員が、常に掃いてゴミは落ちていない。
公園や道路で用をたす人もいない。
リマは生まれ変わったように、美しい。
最新のホテルがあちこち立ち並び、
リマで一番の高層になるのウエスティンホテルも完成間じかだ。
ただ、ドロボーだけは、少なくならない。全体的に貧富の差が解消されなければ、当分はドロボー天国だ。
もう一つ、昔と大きく変わったところがある。
コーヒーが、美味しくなったことだ。どこで飲んでも美味しい。
ペルーにはチャンチャマイヨという高地で質のいいコーヒーができる。
ここの豆を豆のまま買って、挽いて飲めば、最高だ。