2012年10月10日(水) 瞬間接着剤
最近、網戸の修理に、瞬間接着剤を使って、思わぬ成果が得られた。
ベランダやルーフバルコニーに出入りするガラス戸の外側についている網戸は、入居以来、長年利用しているが、特に、使用頻度が多い、ルーフバルコーの出入口の方は、劣化も早いようだ。
これまで、網戸の張り替えを近くの業者に頼んだり、ホームセンターで探し求めて、網戸の下についている台車を補強したりして来たのだが、かなりのガタが来ている。 夏場は、蚊や虫が入って来ない様に、網戸には神経を使うところだが、ガタガタする網戸の開閉に、イライラすることも多いこの頃である。
この際にと、先日、腹を決めて、ガタの原因を詳しく調べてみた。網戸の上部と下部には、網戸を上下のレールの高さに合わせて調節するための仕組みが付いているが、その内の、下部に不具合があることが分かった。
すなわち、網戸の下部にある2枚のアルミ板でできた数ミリ巾の溝に 台車付きサッシ枠を嵌め込む構造なのだが、嵌め込んだこのサッシ枠を網戸の両端で保持し、それを上下するための、部品の一方が、折れて仕舞っていたのである。 このため、台車付きサッシ枠の片端側が浮いた状態になり、台車が上手く滑らなくなっていたことが判明した。
上段 正常な部品とネジ 下段 二つに折れた部品と曲がったネジ
サッシ網戸用の部品(互換品も)を、ネットやホームセンターで物色したところ、台車については、各種売られているのだが、該当するような部品は見当たらなかった。
今回の様な部品は、その網戸固有のものだろうから、互換品もなく、手に入れるのは難しいようだ。常識的には、修理は出来ず、レールの規格に合う網戸を新調する(業者に頼む)のが普通なのだろう。
でも、幸か不幸か、二つに折れた部品や、調節用のネジも残っていたことから、いつもの悪い癖だが、折れた部分を接着する等、修理を試みた結果、何とか、問題が解決できたのである。 以下は、その奮戦記である。
段階1 折れた部品の修理
まず、折れた部品を、瞬間接着剤で付けて見ることとした。部品の材質は、金属ではなく、プラスチックである。
先日、近隣の100円ショップで、使えそうな瞬間接着剤を、手に入れた。自宅のテーブルの上で、何度か接着を試みたが、上手くいかなかった。そして、作業途中で、テーブルから立ち上がった拍子に、肝心のその部品が、忽然と、目の前から消え、行方不明になってしまったのである。
あちこち探したが見当たらず、狐につままれた様な心境で、作業は中断した。そして、次の日だろうか、干し上がって取り込んだ洗濯物を畳む段になって、行方不明で、探しに探した件の部品が、パジャマの袖に付いているのを、ワイフKが見つけたのである。
先の接着作業中に、この部品を、うっかりパジャマの袖にくっつけて仕舞ったようで、そのまま、それを、洗濯機で洗ってしまい、そのまま干したようなのだ。
信じられない出来事だったが、洗濯機の中でも取れなかったことで、いみじくも、この接着剤は布でも使え、その強力さ加減を実証する結果となったのである。
パジャマに貼り付いていた部品(下右) 上は、参考のために置いたもの
見つかった部品を、改めて、接着剤でくっつけて見たが、やはり、駄目だった。
この瞬間接着材の、用途や注意書きの欄を良く見ると、通常のプラスチック類は接着できないようで、ポリエチレン、ポリスチレン、軟質塩化ビニル、シリコン樹脂、フッ素樹脂、PET 等が挙げられている。例外的に、硬質プラスチックだけは、OKと表示されている。
軟質、硬質プラスチックの違いをネットで調べたが、熱に強いのが硬質、弱いのが軟質と言えるようで、硬質プラスチックは、食器等に使われているという。この区分は、余り正確な表現ではないと言われ、件の部品はどちらなのか、よくは分からないのだが、多分、硬質プラスチックではない、のだろう(火で熱してみる?)。化学関連は、どうも苦手である。
結局、この部品の材質を接着出来るようなものは、手近には無いのではと、部品自体の修理は諦めることとした。
段階2 薄板の下駄を履かせる
次の方法として、台車付きサッシ枠そのものを、網戸の底部にある、サッシ板の溝に接着する方法をやってみることとした。ただ、この方法では、高さの調節機能は、使えなくなるので工夫が必要だ。そのまま接着したのでは、網戸の高さが足らないので、両端近くに、下駄を履かせてみることとし、下駄の高さは、網戸とレールとの間隔から、3mm位とした。
瞬間接着剤の用途欄には、金属は接着OKとあり、アルミサッシ共々、オール金属なら問題ないだろうと、下駄として、先ず、薄手で溝より狭い幅の金属板を物色した。が、適当なものが手元では見つからず、仕方なく、金属板は諦めた。
次の手だが、接着出来るとは明記はしていないのだが、パジャマの布が付くなら、木材も大丈夫だろうと、木の板を下駄にしてみる事とした。取ってあった、蒲鉾用の板を、鋸で、3mm厚位に切り、試しに、台車付きサッシ枠の裏底に、一か所だけ、木の下駄として接着してみた。 暫く経過した後に触ってみたら、しっかり付いているではないか!
これはいける、と反対側にも木の下駄を接着し、固まるのを待って、両端の下駄は完成した。
この、下駄を履かせた、台車付きサッシ枠を、次に、網戸の下部のサッシ板の溝に嵌めて接着すべく、双方に接着剤を塗った後、サッシ枠を溝に嵌め込み、一昼夜経過させた。
そして昨日、終に、台車付きサッシ枠が、しっかり網戸の下部に接着しているのを確認できたのである。 下は、その写真である。
網戸下部を上から見た所(台車付きサッシ枠が、溝に嵌って、3mm程出ている)
逸る気持ちを押さえながら、その網戸を、ガラス戸の外の、元の定位置に戻したら、上下のレールとの間の高さも、丁度良く、台車も、ガタが無く見事に滑ったのである。これで、漸くにして完成である。
まことに、まことに、些細な出来事なのだが、当事者としては、終に目的を達成し問題が解決した、という、嬉しさを味わった。何日間に亘って諦めずに粘ったことで、網戸のイライラが解消できたことを、ワイフKも喜んでくれた次第である。
網戸を注文して新調すれば、簡単に済む話なのだが、Ⅰ万円以上は掛かるだろうか。それが、DIYでやったことで、手間代は掛からず、100円ショップで手に入れた、接着剤だけで済んだのである。しかも、この接着剤、小さな4個のチューブに分れている、使い切りタイプなので、コストは、たったの、25円である。
大きめのチューブ入りの瞬間接着剤は、一旦開口して空気に触れると、使い残して栓をしても、程なく硬化してしまい、残念な思いをしたことは、これまで何度もある。冷蔵庫に入れれば持つ、と言った情報もあるがーーー。
それが、今回使った接着剤は、4つに小分けしてあるので、使用量が少しで済む場合は、経済的で好都合であった。
接着剤について、ネットで調べて見た。今回使用品のメーカーではないが、ある著名なメーカのサイトによれば、広大なジャンルがあり
家庭用 工業用 建築用
に、大別できるようだ。この中の、家庭用としては、
多用途型 木工用 瞬間接着剤 エポキシ樹脂系 専用接着剤
ホビー・クラフト用 その他の特殊用途
に分けて、多様な商品が紹介されており、勿論、瞬間接着剤もある。(家庭用・工業用・建築用の接着剤|セメダイン)
たまたま手元にある、2種の瞬間接着剤の用途を調べて見ると、写真にあるように
・接着できるもの 金属 硬質プラスチック 陶磁器 合成ゴム
・接着できない/できる とあるが、実質、接着できるもの
皮革 木材 布
・接着できないもの ポリエチレン ポリプロピレン 軟質塩化ビニル フッ素樹脂 シリコン樹脂 ガラス メッキ面 PET
となるが、速乾性が売りである、瞬間接着剤の組成としては、α―シアノアクリレート樹脂というもののようだ。このことと、上述にある、ポリプロピレン 軟質塩化ビニル 等が苦手であることとの、化学的な関連は、自分には分らない。
今回使用品 以前使用品(硬化)
今回使用品の 上段 用途欄 下段 接着出来ないもの欄
一方、逆に、これらを接着できる接着剤が、工業用として、色々あるのは当然とも言えるが、家庭用瞬間接着剤としても、該当商品があるところが、何とも面白い。
“この世に、接着できない物は無い”、と言うのが、その道の関係者の、プライドであり自慢だろうか。
接着剤としては、接着強度や、硬化するまでの所要時間、接着面の耐久性、などが先ず問題となろう。所用時間については、通常の遅乾性接着剤がメインで、今回話題とした、速乾性の瞬間接着剤は、特殊なケースになるだろうか。
加えて、衝撃に対する強度や、建築用では、発生する化学物質の人体への安全性、なども問題となるようだ。
今回修理した網戸だが、当面は良好でも、今後使ってみて、開閉に伴って加わる衝撃・振動や、浸水に対する耐久性などに、以外に問題がある事が判明するかもしれない。
暫く、様子を見ることとしよう。