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原発事故 IAEA報告

2011年06月08日 17時29分02秒 | 日記
2011年6月8日(水) 原発事故 IAEA報告


 東日本大震災のその後の状況は、日に日に変化しており、原発事故のその後についても、同様である。当ブログで、原発事故を取り上げるのは久々だが、今回は、先日の、6月1日に、日本政府に対して提出された、IAEAの報告について触れて見たい。

 IAEAは、国連の機関である国際原子力機関(International Atomic Energy Agency)の略称で、主たる任務は、
   原子力の平和利用を促進させること
   原子力の軍事転用を防ぐこと  
であり、この所は、イランの核開発疑惑など、後者が、主な話題であった。この2009年12月以降は、日本人の、天野之弥氏が、5代目のIAEA事務局長に就任している。
IAEA旗

 福島第一原発事故発生後、間もなく、天野事務局長が来日したが、先だっての、5月23日から31日に亘って、12カ国、18人の専門家からなる、1AEAの正式な調査団が派遣され、短期間ながら、事故現場や、関係機関等への調査を行った。調査を終了するに当たって、日本政府に対し、報告書が提出された。原文は、英語しかないので、良く分からない点もあるが、NHKの解説記事等も参考にして、報告書の内容について、触れてみたい。

 先ず、震災が起こる前の備えについて、問題点はなかったかどうか、について述べている。
指摘の一つは、津波の危険性を過小評価(underestimate)していて、予期せぬ津波に対処できなかった、とある。国内では一般には、今回の様な大津波は、「想定外」であったと言われているのだが、客観的に見て、想定そのものに問題があった、と述べているのだ。結果論で物を言っているようで、主旨が、少し分からないのだがーー。
 福島第一原発は、1971年3月に稼働を始めた、東電第一号の原発で、震災直後の3月26日に、奇しくも、満40周年を迎えている、老舗だ。
 建設当時の設計上の想定では、ネットで調べた範囲では、6.5mの高さの津波までを想定していたようだ。今回の大地震で、原発周辺に到来した津波の、公式の高さは良く分からないが、東電の関係者が撮影したと言う公開された映像では、津波が防波堤にぶつかって、海面から、15mも上に上がる様子が伝えられた。津波の高さは、たぶん、設計値を越えていたと思われる。
地震と津波により、商用電源だけでなく、非常用の電源もすべて失われると言う、非常事態が起きたわけだが、津波によって、非常用電源用の燃料が、タンクごと攫われることは、想定外だったようだ。
 設計当時に得られる情報では、津波の高さは、6.5mで十分だったと思われるが、その後に起こった地震や津波のデータから、得られた知見に基づいて、見直しや、追加対策は行われて来たのだろうか。
 今回の経験から、15mもの津波にも耐えられる防波堤をつくることだけが、対策ではあるまい。非常用の電源系統は、波打ち際に近い同じ敷地内でなく、少し高い場所に、設置するなどは、そんなに難しい事でも、金のかかる対策でもないと思える。又、津波が来た場合の、建物の扉の防水対策等も、現状は、不十分だったとも言われている。
 巨大地震に関しては、1100年ほど前の、貞観地震があるようだが、これらは何処まで考慮に入れるべきだったろうか。特に自然相手では、100%の安全策はあり得ないのだから、何処で妥協するか、どう工夫するかが、問題である。

 また、緊急時用の対応マニュアルや手順が、照明や電力があることを前提につくられていることも問題、と指摘されている。
建屋内の中央制御室や、地下室で、全く照明が無く、懐中電灯と線量計を片手に、事故当初の作業に当たった作業員の大変さは、想像に難くない。

 一方、震災直後からの対応についての評価も述べられている。限られた人材や環境の下で、事故現場で採られた、原子炉への海水の注入や、ベント(ガス放出)作業の実施等の措置は、ほぼベストに近い方法であった、と述べている。住民の避難についても、良く組織化されていて、適切であるとの評価になっている。又、今後は、現場作業員や、周辺住民の健康影響についての、継続的な追跡調査が重要、とも指摘している。
 未経験の原子力災害の中で、次々と起こる予期できない事態に対して、関係者が、知恵を絞り、手探りで対応した、と言えるのだが、現時点では、大きな問題が無かったという評価になったのは、一安心である。

 ただ、日本の現在の関係組織は複雑で、責任の所在が曖昧であり、緊急時には、遅れを招く可能性がある、との懸念も指摘している。実際に、報道等の面でも
  政府(内閣官房・経済産業省・文部科学省)
  原子力安全・保安院
  東京電力(本社・現場)
  原子力安全委員会
等が、何処まで情報を公開・共有し、連携しているのかが、よく見えなかった。

 経産省の中に、
  原子力を推進する⇒資源エネルギー庁 
  原子力を規制する⇒原子力安全保安院
という、性格の異なる組織が同居している問題が、以前にも、IAEAによって指摘されているようだが、今回改めて、保安院の独立性について指摘を受け、待ったなしの事態になっている、と言えよう。

 この6月20日~24日に、IAEA本部があるオーストリアのウイーンで、閣僚級の国際会議が予定されている。出席する海江田経産大臣から、原発事故の全容の詳細や今後の見通し、そこから得られた教訓や知見、今後の日本のエネルギー政策等について、報告される予定だが、世界的な注目が集まっている、と言える。
 今回の日本での事故を契機に、ドイツやスイスなどのように、今後、原発を縮小、廃止しようという国もある。これまで、原発先進国の一つとして、自他ともに認めてきた日本である。この日本で起きた、今回の原発事故に関する国際会議は、今後の原子力利用での安全性向上や、再生可能エネルギーへの転換などで、大きなエポックになるだろうか。


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